3 木原愛理の回顧録②
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私は目覚めると、「んんんっ」と大きく伸びをした。
「なんかよく寝た気がする…」
いつもの日課だから、と思いスマホの画面を開いてライブ配信アプリを押した。
どうせ変わってないと思うけど、今日の順位の確認…
「え、えええ!?」
ベットにうずめていた身体がまるで漫画のような俊敏な動きでガバッと起き上がった。
「うそでしょうそでしょうそでしょ!?」
開いた画面を何度も見返した。
一度スマホを再起動させたくらい、何度も、何度も…
「ランキング1位…如月モカ…」
信じられなかった。
すごい…コメントもたくさんきてる…!
見たことがないコメントの数と「かわいい!」「良い配信だった!」などポジティブな感想がずらりと並んでいた。
「すごい…!すごい…!ようやく…努力が実ったのかも…!
よし…!これからも頑張るぞ!」
その日は学校を休んだ。身体が興奮して学校どころではなかったのである。
学校を休んで、ライブ配信をしていた。
何時間も何時間も…
絶え間なく、このアプリの画面を開いては「1位」というランキング部分ばかり見ていた。
次の日___
「すごい!また1位だ…!また…!」
心から嬉しかった。
コメントにはネガティブな言葉など1つもなかった。
一夜にして人生が好転した、と思った。
「うれしいっ…!認められている…!」
何度も何度もスマホ画面を見ては、にんまりとほほ笑んだ。
「今日もライブ配信をしたいけど…さすがに今日は学校行かないとかな…、お母さんにも仮病ばれそうだし…。」
昨日は仮病で学校を休めたけど、お母さんからは「本当に熱あるの?元気そうだけど?」と言われてしまったので、今日は学校に行こうと思った。
ライブ配信のおかげで、もしかしたらクラスのみんなは私と友達になりたいって集まって来ちゃうかも!なんてお気楽なことをを考えながら、登校中は本当に足取りが軽かった。
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しかし____
私のこのウキウキとした感情は全て黒く塗りつぶされることになった
「ぜったい不正だよね…!だって、ずっと最下位なのにいきなり1位になるわけないじゃん…!」
「学校も休んで配信とかやばすぎぃ」
「あいつ、前々から思ってたけどやっぱ頭おかしいよな!」
「昨日の配信ちらっと見たけど、めっちゃきもかったー!」
学校に着くと、私がいつも耳にしていた陰口は変わらず続いていた。
なんで____
なんでなんで。
私…、こんなに…こんなに
こんなにすごいのに…、1位になれたのに
誰も私のこと見向きもしない…っ
どうして…っ
全然これじゃあっ…
これじゃあ意味がないよ…っ