1 疑問
「それでは、、え~と、なんてお呼びしたらいいですか?」
「…あいりです。愛理と呼んでください。」
「ありがとうございます。それではこちらのラウンジでくつろぎながらお待ちください。
ラウンジにある食べ物や飲み物はフリーで何度でもお召し上がりいただけます。
食べすぎは睡眠に影響をもたらしますのでご注意ですよ。」
彼女はにこっと微笑みながらそう言った。
ラウンジはこれまた独特な香りがする広い海のような、空間だった。
柔らかそうなソファーや椅子が並んでおり、スリープルームと同じく
青を基調とした空間だった。
そして、いくつかのキラキラしたドリンクやクッキーなどが置かれていた。
ちらっと見ると「よく眠れる星屑入りハーブティー」とか「ムーン風味のクッキー」など「なんだこれ?」と思うようなものばかりだった。
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「さぁ、愛理さんがラウンジで待ってもらっている間に我々は夢の実の作成をしていきましょう!
レッツクッキングです!」
「え…俺達って受付だけじゃないの?」
「はぁ?何を言っているのですか!このお店に来店されるお客様に関わること全てをご担当頂きます!
そんな受付担当な訳ないでしょ…。さぁ、さっそく夢の実を作りますので…。と、いってもですね、そんな難しいことじゃないんですけどね。今回の夢ってそんな難しいことではないですし。」
「でもさ…あの…これって…なんていうんだろう。こういうのって叶えていいのかな…。」
三隅紘は遠慮がちに、だけどしっかりと思っていたことを口にした。
「なにがです?どういうことですか?叶えちゃいけない夢とかあります?」
「いや…なんか、努力せずに夢叶えちゃっていいのかなって…、頑張って夢を叶えることに意味があるのかなって…。」
「んん~と。そういうのはよくわからないです。正直言って。愛理さんの叶えたい夢がそれなら、別に叶えてあげてもいいかな~って思うのです。というか考えないです。
雑念は捨てて、必要な材料を混ぜて焼くだけです。」
そういうタサンは少し冷徹な顔をしていた。
「…私にはよくわかりません。人間の気持ちはいつも不可思議です。でも…。」
「でも…?」
俺はうつむいたタサンの後の言葉を聞きたくて、思わず聞き返した。
「でも、だからこそ私は夢師を人間から選んでるんです!私のお店に訪れるのは10割が人間です!人間の願いを聞き出し、寄り添うということが出来るのも人間の方が得意だと考えます。
ですので、今回のケースは私が進めて見本を魅せますが…、何か気になることがあれば
口出し頂いても構わないですよっ。」
そういうと彼女はにこっと笑った。
俺には、タサンはもう少しなにか言いたいのだろうかと思わんばかりの含み笑いをしていると感じた。