4 労働開始
「で、でもさ…ここで夢を買ったことは記憶に残らないんだろ?それで寿命が縮まるなんて…。」
「ふふふっ。そうよね。気になるよね___
まぁこみいった話はそろそろ終わりにして、まずは服を着替えようか!」
支配人はそう言うと、目の前には3つの制服のような青いスーツが並んでいた。
スリープルームと呼ばれるプラネタリウムのような空間と色味はとてもマッチしていた。
これは支配人の魔法で浮いているのだと悟った。
「よぉ~し!素敵な制服でしょ?みんなでお揃いの服を着て、お客様を迎えましょ!」
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俺たちは案内された更衣室で制服に着替え、「ロッカーには好きなものを置いていいからね!」など言われ、「着替え終わったらエントランスに集合!」と言われ、あれよあれよと命令され、抵抗することもなく物事が進んだ。
今起きていることが一体なんなのか、夢であってくれ…いや、夢なんだが…。などと思いつつ、着替え終わったものからエントランスに向かった。
「ふむふむ。似合うね!じゃあ、まずは挨拶の練習からしてみようか~!
いらっしゃいませ~!夢工房へようこそ~!あなたの叶えたい夢はなんですか~?
いぇす!復唱お願いします!もちろん元気よく笑顔でね!」
「は、はぁ…!?」
呆気にとられ、俺たちは口をぽかんとさせた。
「ちょっと君たち!飲みこみが悪いんじゃない!?
歴代の弟子たちはもっと…まぁいいや。とにかく、元気よく明るくたのしそ~~にお客様を迎えることが大事なんだからね!!」
「ぃや…、い、いらっしゃいませ…。」
俺たちは小さな声で仕方なくつぶやいた。
「えぇ声が小さいよぉ!そんなんじゃ聞こえないわ!もっと大きな声で___」
その時だった____
カランカラン
玄関が開くと同時に、鐘の音が鳴った。それはとても綺麗な鐘の音だった。
すると、そこには可愛らしい__というのが相応しいであろう女性が立っていた。
パジャマだった。薄ピンク色のふわふわのパジャマを着ていた。
寝ている間に訪れる夢工房というところは、みんなパジャマで訪れるものだろうか。
「あの…すみません。ここは夢工房ですか…?」
「いらっしゃいませ!お客様、ここは夢工房でお間違いありませんよ。
私は支配人のタサン。あなたの叶えたい夢は何でしょうか?」
タサンはさっきまでの様子と違い、えらく落ち着いた雰囲気でこの女性の言葉に答えた。
「よ、よかったわ。間違えずにこれたみたいね。
私は…、私はどうしても叶えたい夢があるの。
それは…。」
彼女は下を向いて、小さくつぶやいた。
歯切れが悪く、はっきりとしない物言いで彼女は言った。
「私…ライブ配信で1位になりたいの。あ、アイドルになるために…。」
下を向いていた彼女は、最後まで言い終わるとまっすぐに前を向いた。
「ぉ~それはまた熱く素敵な夢ですね。承知いたしました。
その願い、しかた受け取りましたよ。
それでは、夢の実を作成しますので、こちらのラウンジでしばしお待ちください。」
不敵な笑みを浮かべたタサンは、目の奥が光っていた。