3 君たちは同僚です
「じゃあ…とりあえず自己紹介でもしてみる?
これから一緒に働く同期!同僚ってわけだし!」
「俺は…三隅紘です。17です。よろしくお願いします。」
一番真面目そうで背の高い男はこう名乗った。声が低めで、頭が良さそうな感じがした。
「僕はシュン。」
シュンと名乗ったのは背が小さめの男。彼はシュンと名乗るだけで、年齢も苗字も名乗らなかった。
どこか異国感ある綺麗な顔立ちをしているから、日本人じゃないのかも…など考えた。
「俺は隼人…春日井隼人…。16…。よ、よろしく。」
しぶしぶと3人は簡単に自己紹介をした。
「じゃあ、早速夢工房を案内するね!」
言われるがままについていき、この地下空間から移動した。
移動したと言っても彼女の特別な力で瞬間移動をしただけだった。
「わぁっ…!?す、すごい…!」
目の前の光景に思わず声が漏れてしまった。
そこはとてもとても広いプラネタリウムのような空間だった。
天井は高く、無数の星がきらめき、薄暗かった。
どこか落ち着くような甘い匂いがした。
そしてなにより…、
老若男女問わず、多くの人がこの空間で眠りについていた。
1人1つ用意された、雲の形をやわらかそうなベットに人々が横たわり眠りについていた。
「な、なんだこれ…?」
「ふふふ。ここはね、スリープルーム。夢工房自慢の場所さ。
私たちが作った夢の実を食べて、見たい夢を見ることができるの。どんな夢だって、夢の実を食べれば見たい夢が見れる。素敵でしょ?」
「でも、なんのために…?だって、いかにいい夢を見たって、所詮はそれは夢。
現実では何も変わらない…。」
紘という男はそう呟いた。
「ん~。まぁ、実はここで見る夢は少し特殊でね。正夢って言葉は聞いたことあるかな?
そう。私たちは正夢を売っているの。君たちも目覚めた時に夢で見たことが現実で実際に起こったことってあるでしょ?些細なことだったとしても。
そんなふうにここで見る夢に関しては、正夢となり現実に反映されるの___」
彼女は誇らしげに言うと、息をふぅ~と吸って再び話し出した。
「実は、特別な魔法でこの夢工房に訪れたということは記憶に残らないんだ。無意識に、正夢を見ることができる。強い願いを持った人々は毎日この夢工房に訪れているよ…悲しいくらいにね。くくくっ。
いやぁ~昔は本当にいろんなお客さんが訪れたんだよ。例えば、歴史で有名な___」
「そうだったとしても…っ!こ、これは何の得があって…?支配人さんにとって何の意味が…?」
紘はタサンが話終わる前にすかさず口を挟んだ。
「イミ?意味…意味なんてないよ。私の仕事は家業なの。
お客さんからはお金も貰ってないし、非営利団体だよ!なんちって!
あ…でもぉ、1つだけ頂いているものはあるかな!まぁ、夢の大小にもよるんだけどね。」
「な、なに…?」
彼女はニコリと笑って答えた。
「それはね…、現実世界での寿命…、与えられている生の時間を夢の大小に合わせてもらっているよ。」
「…っ!!」
俺たち3人はそれを聞いたとき、急に背筋が凍るような何かを感じて黙ってしまった。
「そんなに驚くことかな?だってさ、ここで夢を見ることで、現実世界で何かが叶ったり…少なからずプラスの影響をもたらすわけじゃない?
だから、お客様も少しくらい寿命が縮んだってかまわない!という感じで夢を買っていくんだ。
もしかしたら、先人で大きな栄光を掴んだ人に短命が多いのは、ここで夢を買ったからかもしれないね…くくくっ。」