2 ご挨拶
それはいつも通り、保健室で睡眠を取っていた俺に訪れた___
ふと眠りから覚めた。
「ぬぅあ…夢か…?」
目を開けるとここはいつもの保健室ではないことに気づいた。
真っ暗闇で、地下室のような空間だった。地面は土みたいだった。
制服が汚れる…そう思って立ち上がろとした。
しかし、これはまだ夢の中だから…寝れば保健室にたどり着くのか?
そう思って再び眠りにつこうとした。
「あーーーー!寝ちゃダメ!」
「はxっつ!?」
急に耳元で叫ばれたものだから、思わずびっくりして情けない声とともに飛び起きた。
「なっなんだ…!!だ、だれだ…!」
俺の耳元で叫んだ張本人は、まるで昔作ったお菓子の城のような、はたまた昔少し好きだったサーカスのピエロのような、カラフルなワンピースを身に付けた、不思議な格好をした少女だった。
俺よりも小さくて、妙に高い声が耳を痛くさせた。アニメ声というやつだろうか。
全体的に子供っぽいのに、顔つきはどこか大人っぽくて鼻筋の通った綺麗な顔をしていた。
「随分と…変な夢だな…。なんだお前…。」
「ノンノン!ぜったい寝ちゃだめ!今から面白いことを教えてあげるんだから!
あとね、2人待ってる!もうすぐ着くんだ!ワクワク!」
「は、はぁ?」
なんだこれ、早くいつもの保健室で目覚めたい…。
そろそろお腹も空いたし…。
これはあれだな、変な格好をした少女に絡まれる夢だな…。
「ぬぅあ!?!?」
ぼーっとしていた俺の隣に、突如として同い年くらいの2人の少年が現れた。
まるで違う世界から瞬間移動させられたかのように、突如として現れた。
当の本人たちもびっくりして言葉を失っていた。
「ふぅ、や~と3人揃った!良かった!
瞬間移動させるのって結構疲れるなぁ~まぁ、それはいいとして…。
それでは、はじめまして!私はサーミ夢工房の支配人をしているタサンです!
君たち3人は夢工房の夢師に選ばれたのです!
3人で協力して多くの人の夢を叶えてあげてくださいね!」
「は、はぁ…!?」
目の前の少女に言われた言葉に、思わず3人は声をそろえて反応した。
「君たちは選ばれたんです!夢師に選ばれるなんて、とっても幸運ですね!
ではでは、早速夢工房の案内をしてあげましょう~!」
彼女は嬉しそうに、ニコニコとしながら話した。
「これ…、夢…?変な夢だな…。」
隣にいた背の低い少年は小さくそう呟いた。
俺も変な夢だな…と思いながら、彼女を眺めたいた。
最近変な漫画でも読んだかな…。影響されているのか…。
「むぅ。変な夢だなんてひどいです!
皆さんは寝ているところで、ここは確かに夢の空間ではありますけど…ちゃんと生活ができますよ!
夢師の給料はえ~と…、ちなみに週休2日制で…」
「な、なにを言ってるんだ…!?」
真面目そうな少年は本当になんなんだという顔でタサンと名乗る少女に言った。
「だってぇ、生活に関わることだし、知りたくないですか!?こういう情報って大事ですよ!」
「ちょっ、どういうことだよ!もう、目覚めたいんだけど…。」
「はぁ、君たちこそ何を言っているのですか!君たちはもうこの夢から目覚めることは当分ありません。だって、夢師に選ばれてしまったんですから。君たちの身体は寝たきりです。
でも安心してください。当時の自分と同じ時空、姿で目覚められる可能性もあります。」
「お、おい…!は…!?寝たきりって…!?可能性もあるってどういうことだよ!?」
「ん~と、運が悪いと…この夢で過ごした時間が加算されてしまい、元いた時空と同じところに戻れない可能性もあります。目覚めたらおじいちゃんだったりして~なんちゃって!」
彼女はてへっみたいな顔をして、とんでもないことを言い放った。
「な、なんで僕たちが選ばれたんですか…」
隣にいた背の低い少年は、小さくつぶやいた。
「良い質問だね!ん~それは暇そうだったからかなぁ、だって君たち同世代の人と比べた時に睡眠時間がやけに長いんだもん!夢の中にいる時間が長ければ長いほど、私たちとのタッチポイントも多くなるから、捕まえやすかったんだよね!」
彼女の回答が本当なのか嘘なのかは分からないが、保健室登校で睡眠時間が長い俺は思い当たるふしはあった。確かに、他の人に比べたら睡眠時間は長いだろう…。
他の2人も思い当たる節があるのか、むっと黙り込んでいた。
「1人で仕事をこなさなきゃいけないわけじゃない!3人で協力して、夢師として多くの人の夢を叶えるんだ。課されたミッションがクリアされれば、元の世界に戻れる。ね!問題ないでしょ?
それに____
君たちにとっても夢は夢で、夢のような時間を過ごせることは間違いないよ。
現実よりも夢の方が楽しくなっちゃうかも!?
さぁ、それでは頑張りましょう_____」