1 夢は突然に
「君たち3人は!この夢工房の夢師に選ばれました!
さぁ、ぜひ3人で協力して多くの方の夢を叶えてあげてくださいね!」
明るく、声高らかに告げられた言葉に、
俺はまったくついていけず返答できなかった。
俺と同じ状況にいる他2人も、ポカンと口を開け同じようなリアクションをしていた。
目の前にいる少女なのか、大人なのか、わからない。とにかく今まで会ったことのない不思議な雰囲気を醸し出している小さな女の人だった。
横一列に並ぶ3人は恐らく同い年くらいの年齢で、みんな男だった。
1人目は背が高くて、文武両道そうな見た目。真面目そうで、クラスの学級委員長という感じがした。かけているメガネがよく似合っていた。
2人目はどちらかというと身長は少し低めで、愛くるしい大きな瞳が印象的だった。身体の線は細く、いまにも折れそうで心配になるほどだ。長めの髪も相まって、「女の子みたい」だった。
かくゆう俺は___この3人のなかで1番普通、そして廃人感があるかもしれない。1番役に立たなそうな面構えをしていると自負した。
「それでは!!夢工房での楽しい夢のひと時を楽しんで!!」
そう告げた少女は嬉しそうな顔で俺たちを見ていた。
唖然茫然。何だこの状況_____
それは、今から10時間前に遡る_____
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俺、「春日井隼人」はいわゆる不登校で、最近はいわゆる保健室登校というものに昇格した。
いつも通り保健室に入ると、「あら、また来たのね。」と40代くらいのおばちゃん先生に微笑みかけられ、「まぁ今日も保健室に来れただけましか。」など思いながら、定位置のベットに横たわった。
ベットに横たわると、変わらぬ毛布の匂いに包まれて少し安心する。
学校に来たとて、俺はこの保健室で寝るだけ。
たまに課せられた課題をすることもあるが、基本は寝ているだけ。
そんなこんなで卒業も危ういのだが、長らく不登校…そして保健室登校をしている俺にとって
、もう教室に戻ることなど到底無理だと悟っていた。
「時間が解決する。隼人くんもきっと教室に行きたくなる。」誰かがそんな言葉を俺に投げかけていた時もあった気がしたが…まぁどうでもいいやと思って今日もまた眠りについた。
あまりにもいつもと変わらない日常で、何も予兆なんてなかったから、
まさかこんなことが起きるなんて思いもしなかったんだ。