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D-Day 作戦開始日  作者: ピラー軍曹
2/2

火事

戦闘が起きる1年前の8月28日。

私は宮城県に所在する霞目駐屯地の東北方面航空隊に所属していた。

「佐々木飛竜3等陸曹は当直勤務に関する件!異常なく申し送り下番します!」

 私はその日当直を下番したてで、少々だるかった記憶がある。

この部隊はOH-6が全機退役し、残るヘリはUH-1Jそしてエンジンの不具合が見つかり飛行停止中のOH-1であった。

他にも青森にAH-1S、よくコブラと呼ばれる攻撃ヘリが何機かあった。

普段の業務は航空機の整備をしつつ、訓練やテストフライトでヘリに同乗し、ドアガンナーやホイスト救助などの任務も遂行した。

そしてこの時期になると検閲と言って少々大きな訓練がある。

学生などで言う期末テストの様なもので、しっかりと行動が出来ているか、そんな確認をされる。

正直なところ辛いなぁと思いつつ、バラキュー(偽装網)や炊事セットなどを淡々と準備していた。

そんな時ふと声をかけられた。

「佐々木3曹!西島2曹が大型裏に付けたんであとバラキュー付けるのと資材積み込みで準備OKっす!」

 彼は伊藤士長、まだまだ入りたてだが非常に元気で活発な隊員だ。

 「あと陸曹試験の勉強付き合ってくださいね!まだ分隊教練見てもらってないんで自信ないんですよぉ…」

 そんなに元気良くて何故自信がないのかわからなかったが、彼が陸曹を目指すのはいい事だ。

 私は「わかった。課業後でもいいか?」と言うと嬉しそうに「はい!」と返事をした。

 そして彼と大型トラック(3トン半)に資材積み込みと偽装網の取り付けを済ませ、他の隊員達とジュージャン(飲み物を賭けたジャンケン)をし見事に惨敗した。

数が多いほど被害が大きい。

 今日はあんまりついてねぇなと思いつつも渋々財布を取り出しジュースを奢った…

 午後からは地元の中学生が見学に来ると言うこともあり、格納庫内のUH-1Jの準備に取り掛かった。

 

 突如放送が鳴り響く

 

 「蔵王方面で山火事発生。詳細不明。映伝離陸準備」


 山火事だ。

 映伝とはいわゆる、テレビ中継みたいなもので、機体から映像を伝達する機体である。

 空中から状況を確認した後、消火バケットを装備したヘリで消火にあたる。

 幸いな事に既に機体の準備には伊藤士長含めた整備班が取り掛かっており、そこから10分後にはエンジン始動が完了した。

 急遽見学は中止となったため、私は消火バケットを機体に積み込み搭乗割を確認し、機体の準備にかかる。

 報告では既に山形の第6飛行隊も消火作業を行なっているとの事だったが、向こうは機動師団所属の為、九州に何機か演習で向かってしまっているとの事。

 私たち航空隊にも消火作業の命令が下された。

 私も同乗し消化へ向かう。

 その他隊員でタンクローリー等車両部隊を構成し現地へと向かった。

 現地に到着するとかなりの範囲に火が広がっており、消防の航空隊などが既に消化に当たっていた。

 私たちも近隣のグラウンドに着陸後バケットを装着し消化に当たった。

 そこから約4時間後、ついには木更津のヘリ団まで要請される騒ぎとなった。

 最終的に火が消えるまで2日を要したが幸いな事に怪我人や死者は出なかった。

 その間嬉しい再会があった。

 ヘリ団のCH-47Jの機上整備員である石井1曹との再会だ。

 彼は私がまだUHの整備課程で霞ヶ浦にいた時、同じく機上整備員としての資格を得る為同じ駐屯地に所属しており、地元も同じと言う事で非常に仲良くなった先輩である。

 私が声を掛けると嬉しそうに返事をしてくれた。

 「おっ!佐々木じゃん!久しぶり!山火事じゃなかったら飲みにでも行きたいなぁ!」

 私も嬉しくなり、

 「早く消して飲みに行きましょう!」と冗談混じりで返答した。

 ただ慌ただしい中でもありその会話を交えた後会うことはできなかった。

 

 山火事から1週間後ある噂を耳にした。

 

「山に火をつけたのは自衛官らしいぞ」

 

 そんな噂だ。

 正直噂好きの組織でもあるから気にも留めなかったが、今思えば気にするべきだと思った。

 過去に戻れるなら彼に話をすべきだと…

 

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