第97話 2人の戦い
「今はルリータの為だ。お前を殺してやるよ」
真耶はそう言って戦いの手を止めることは無かった。そして、真耶の中から凄まじい程の殺気が溢れだしてくる。アテナはその殺気を感じとって冷や汗をかいた。
「っ!?これが……殺すことへの執着なのか……?」
アテナは思わずそう呟く。そして、剣を握りしめて構えると、真耶と向き合い見つめ合う。
真耶はそんなアテナを見てニヤリと笑うと再び駆けだした。そして、プラネットエトワールが振り下ろされる。アテナはそれを剣で防いだ。
そして、そこからまた壮絶な戦いが始まる。真耶はアテナを蹴り飛ばしフィールドを満遍なく使用して戦い始める。
超高速で移動しながら繰り出される連撃をアテナは何事もなく防いで反撃を繰り出す。2人はそうして超高速の戦いを続けた。
一撃一撃が重たくアテナはその重たさに動揺を見せる。しかし、直ぐに冷静さを取り戻し攻撃をする。
真耶もアテナの速さに多少動揺するも、その速さなら対応可能だと思い気にもとめなかった。
「さっきまでは本気を出してなかったのか?」
「そういうことだね。本気を出す相手かどうか迷ってたんだけど、やっぱり本気で潰した方が良いみたいだって分かったから」
真耶はそう言って剣を振り下ろす。しかし、アテナはそれを防ぐ。たとえ真耶が右に移動して攻撃しても、左に移動して攻撃しても、全方向から攻撃してもアテナは防ぐ。
しかし真耶は攻撃をする。防がれることが分かっていながら攻撃する。
アテナは目にも止まらぬ速さで動く真耶に多少の動揺を見せるが、落ち着いてよく見ると対策は出来る。攻撃が当たる瞬間にそれさえ弾いてしまえば攻撃は当たらないのだ。
2人はそうして攻撃をし、防ぐをずっと繰り返す。普通の人ならその繰り出される攻撃は避けたり防いだり出来ないだろうが、2人は難なくそれをこなす。
気がつけば空はすっかり暗くなっていた。闇夜に星が舞い、星空は2人を照らしていた。浮かび上がった月は2つの刃を照らし光らせる。
2人はそんな夜空で戦い続けるため、夜空には流れ星のように煌めく軌跡が芸術を作っていた。
「……」
2人はそんなみとれてしまうような軌跡を見ても、全く心を安らげることは無い。ここで気を抜けば一瞬で殺されるからだ。たった一瞬でも隙を見せれば、待っているのは死だ。気を抜いた先に未来など無い。
2人はそんな緊張感が溢れる空間で無限に攻撃し続けた。2人が同時に攻撃を繰り出すため、ほとんど同じ力で剣が交わる。その度に火花が散る。
手数で行けば真耶の方が多いし速いため、アテナのイージスの盾さえなければ圧倒的に真耶の方が強いだろう。しかし、アテナはイージスの盾を持っているため、真耶はその盾で防がれることを前提に攻撃の手数を増やす必要がある。それはもう、人のなせる技では無い。ましてや、片腕しかなく魔法も使えず生きて動いていることがおかしいほどのダメージを負った真耶にそれは不可能だった。
たとえ、ある特殊な方法で構築した古代の魔力の左腕があったとしても、それでもこのアテナのイージスの盾を攻略することは難しいだろう。
真耶はそんなギリキリの戦いを続けていた。そして、それはアテナも同じ。どれだけ攻撃しても真耶に攻撃が通らない。多少傷ついても何故か真耶は再生する。そのため中々決定打が決まらない。
真耶はどうやってかは分からないが、アテナの魔法の力が付与された剣での攻撃さえも防いだのだった。
「っ!?貴様!一体どこからその力が出てくるのだ!?」
「それを教えるわけないだろ!」
アテナの問いかけに真耶はそう言って攻撃をする。そして、どんどん場所を移動して行った。
「……!いつの間にこんなところに!?」
「言ったろ?フィールドは、でかく使おうってな」
真耶はそう言って驚き動揺するアテナの胸に剣を突き刺そうとした。しかし、ギリギリ体を動かされ鎧に当たるだけだった。
「っ!?貴様!変態!私の胸が見たいのか!?」
「あ!?見せたいんなら見せろや!」
「見せたくないわよ!」
2人はそんな訳の分からないことを言い出した。しかし、直ぐに気を取り直して剣を交わらせる。だが、その時真耶はあることに気がついた。それは、アテナの剣が少し赤黒くなっていること。
「っ!?まだそんか力があるのかよ!」
真耶はそういった。そして、この数秒後にその場に赤黒い光線が下ろされる。それは、瞬く間にしてその場のものを石へと変えてしまった。
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