第93話 ルリータの死獄纏
「フッ……アハハハハハハ!何だ!?ふざけてるのか!?小娘が……さっさと死ねよ!”サンシャインスマッシュ”」
アポロンは目の前に魔法陣を作り出すとそれを殴りつける。すると、その魔法陣から超高温の気弾が放たれた。
その攻撃は当たったら一溜りもないだろう。だが、当たればの話。当たらなければなんの問題でもない。
ルリータはそう思ってその場から動くことをしなかった。そして、気弾が直撃する。
「……呆気なかったな。所詮は雑魚。ゴミはゴミ箱に入れなくてはならないんだよ」
「それは同感ね」
「っ!?」
アポロンは慌てて振り返る。すると、そこには誰もいなかった。声が確実に聞こえたのにいなかった。
アポロンは警戒しながら後ろを見渡して前を向く。すると、目の前にルリータがいた。
「っ!?何故だ!?さっき確実に殺したはずだろ!」
「あんなので死ぬわけないでしょ。それより、全方向注意よ。”グラビティ・Lv7”」
ルリータがそう唱えると、アポロンの周りに強力な重力が発生する。その重力はアポロンを押し潰そうとする。しかし、アポロンはその重力に耐えニヤリと笑うとルリータに攻撃する。
「”プロテクト・Lv12”」
しかし、ルリータは目の前に防御結界を張り防いだ。アポロンは結界に拒まれた自分の腕を見て顔を歪める。
「っ!?ガキが!舐めるなよ!”バーニングオーラ”」
アポロンは重力魔法をかき消すために自身の魔力を爆発的に増やす。そして、ルリータの重力魔法をかき消した。さらに、そのままそのオーラでルリータを襲う。
ルリータはそれを見てその場から後ろに下がる。そうすることで攻撃を避けた。
「まぁ、この程度で勝てるとは思ってないわ。”半魚人の鉤爪”」
その瞬間ルリータの杖から半魚人が現れる。それは、凄まじい勢いでアポロンを襲う。アポロンはそれを空に飛んで避ける。
「馬鹿ね!”ウインドイーグル””フレアドライブ””グランドパルチザン”」
ルリータは空に上がったアポロンに連続で魔法を放ち畳み掛ける。アポロンは慌てて避けようとするが、ルリータは避ける暇を与えない。
アポロンは避けきれずにその攻撃を食らってしまった。そのせいで体は硬直し動けなくなる。
その瞬間、ルリータはさらに魔法を発動させた。
「”ネオグラビティ・Lv10”」
その魔法はアポロンの周りに黒い星を散らばらせ発生させた。そして、その黒い星はとてつもなく強力な重力を発生する。
その散らばった星々にそれぞれ引き寄せられたアポロンは全力で拒むがそこから抜け出すことが出来ない。そのせいでアポロンは体を完全に固定される。
「真耶様の仇よ。それじゃあね。”ダークネビュラ・Lv∞”」
ルリータは魔法を唱える。すると、アポロンを中心として半径数十メートルに魔力が満ち溢れ始めた。そして、たった一瞬で大爆発した。
「っ!?」
その爆発の威力は凄まじく、空を壊す。その爆発で発生した爆風は大地を崩す。ルリータはその爆発を見ながら恐怖に満ちた笑みを浮かべた。
それから少しして煙や魔力の残り香は消え始め、アポロンの姿が見えてくる。しかし、そこにはアポロンの姿はなかった。
だが、それもそのはず。今の攻撃で耐えれるはずがないのだから。真耶によって強化されたアーティファクトの杖だからこそ出せる最大の威力でアポロンを爆破させた。
ルリータはそう思ってニヤリと笑うと真耶の元まで駆け寄る。そして、その体に手を触れた。だが、その体は冷たく魔力も無くなっている。
「……真耶様……死んじゃいやですよ……」
ルリータは涙を目にうかべながらそう言う。そして、魔力を体に注ぎ込もうとした時、突如胸に痛みを感じた。見ると、胸に矢が刺さっている。それを認知した瞬間、絶望的な痛みを感じた。
「っ!?あ、あ、あ、あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ルリータはその痛みに耐えきれず悲痛な叫びをあげる。そして、苦しくなる胸を抑えながら何とか矢を抜こうとした。しかし、抜けない。それどころか誰かが後ろに立ったのが分かる。
「だ……れ……!?」
「残念だったな。お前の一撃では俺は倒せなかった。自分を過信しすぎたな?馬鹿め」
アポロンはそう言ってルリータを蹴飛ばす。その時たまたま胸から矢が外れた。そのおかげで痛みは一時的に無くなる。しかし、その後に蹴られた痛みで全身が埋め尽くされる。
百メートル近く蹴り飛ばされたルリータは壁にぶつかり止まった。
「がハッ……!」
壁にぶつかったことで灰の中の空気が全て外に吐き出される。
「……はぁ……!……はぁ……!」
ルリータは苦しそうに呼吸をする。そして、必死に立ち上がろうとするが、体に全く力が入らない。
「……!力が……!」
「どうした?もう終わりか?」
「っ!?」
ルリータはその声を聞いて慌てて顔を上げる。すると、アポロンが自分の目の前に立ち見下ろしているのが分かった。
「あ……やだ……」
ルリータは目を見開き絶望した表情で、自然と口からその言葉を漏らした。その数秒後に顔を全力で蹴られた。
ルリータは縦に何回転もし、かつ地面を何度もバウンドしながら飛ばされる。そして、地面をうつ伏せの状態で擦りながら止まった。
「う……あ……」
ルリータは激痛でそれ以外の感覚を失ってしまった顔を上げた。ルリータの顔は鼻血が出て真っ赤になっている。両目には涙が浮かんでおり、限界状態なのがすぐに分かる。
アポロンはそんなルリータの前に歩いて来て立ち止まった。
「まだ死ぬなよ。それでは俺が楽しめない」
アポロンはそう言って楽しそうに笑った。その顔を見たルリータは一瞬で恐怖に包まれる。しかし、直ぐに歯を食いしばり意識を失わないようにすると、杖を握る手に力を込めると全力で魔法を唱える。
「”カースドファイア・Lv9”」
ルリータは黒い炎を放つ。その炎はアポロンを容赦なく襲うがアポロンは動じない。逆に魔法を放たれてしまう。
「”サンシャインバード”」
ルリータを無数の黄色い炎の鳥が襲う。
「っ!?”プロテクトマジック・Lv12”」
ルリータは咄嗟に自分を結界で包み込み鳥から自分を守る。しかし、その鳥は容赦なくルリータを襲った。だが、ルリータの結界の方が強かったようでなんら問題はなかった。
「まだそんな力が……面白い!もっと足掻け!そして命乞いをしろ!生にしがみつくお前の顔が見たい!」
アポロンはそう言って笑う。ルリータは泣きながら杖を握りしめる。そして、軋み痛む体を必死に動かしてその場から逃げ出した。
「逃げるか……ハハッ!お前はそうやって生にしがみつくのだな!なら、その顔を絶望で埋めつくしてやるよ!」
アポロンは逃げ出したルリータを追いかける。そして、追いつきそうになった時、ルリータは魔法を使って宙に浮くと、さっきより早いスピードで逃げ出した。
「っ!?まだそんな力があったのか!面白い!面白いぞ!」
アポロンはそう言ってさらに笑い出す。そして、アポロンも全身に太陽の力を溜め込み空に浮かぶと、逃げるルリータを追いかける。こうして第3ラウンドが始まった。
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