第92話 ルリータVSアポロン
(っ!?雰囲気が変わった!?それに、この魔力……これまで隠してたのか!?神界でも中位には入れる量だ。まさか、こんな小娘にこれだけの魔力があるとはな……)
「面白い!少し遊んでやろうじゃないか!」
アポロンはそう言ってさっきより速く移動する。その速さは先程真耶と戦っていた時と何ら変わりない。
さっきまでのルリータなら反応出来ずにやられているのだろうが、今のルリータはどこか違う。どこからか帽子を取りだし深く被ると、杖を構え集中する。
しかし、アポロンはそんなことはお構い無しに距離を詰めた。アポロンは一瞬でルリータの間合いに入り込む。そして、ルリータにその拳を振るう。
「”ライトニングインファイト”」
その時、アポロンの動きがさらに速くなる。そのせいで全く姿を捉えられない。
しかし、ルリータは全く動揺することなくその場から動かなかった。そして、何やら只者では無い雰囲気を漂わせると、体をゆらゆらと動かし始める。
「っ!?」
アポロンはそんなことはお構い無しに攻撃した。しかし、ルリータは容易く攻撃を躱してしまう。それからアポロンは何度も攻撃するが、やはり全て躱してしまう。アポロンはそのルリータの異常な急成長に頭が追いつかなかった。
しかし、アポロンはルリータの動きを見てあることに気がつく。それは、真耶に動きが似ていると言うこと。
型や足取り、呼吸法は少し違うが、ほとんどの部分が真耶の酷似している。それに気が付き直ぐに戦い方を変えた。
「はっ!人の真似で勝てるとでも!?」
アポロンはそう言ってルリータに殴り掛かる。しかし、ルリータは全く動じることなく杖を地面にドンッと突いた。すると、ルリータの杖から衝撃波のようなものが放たれる。それは、ルリータに向かってきていたアポロンを跳ね返し、吹き飛ばしてしまった。
「っ!?」
アポロンは少し離れた場所まで飛ばされるが、空中で体制を整え着地する。そして、直ぐに追撃がないかを確認しルリータを見た。
「あなた、さっき真似して勝てるか聞いてたわね?この様子だと余裕で勝てそうだわ」
「っ!?言うじゃねぇか……!なら、てめぇが間違ってることを証明してやるよ!」
そう言ってルリータに近づくため地面を強く押し走り出そうとした。しかし、その時初めて自分の足が砂によって固められていることに気がつく。そのせいで一瞬動きが止まってしまった。
「っ!?」
「バカね。足元注意よ。”ライトニングスピア”」
ルリータは一瞬動かなくなるアポロンに向かって光の槍を放った。アポロンはその槍を見て慌てて砂を蹴散らしジャンプし槍を避けた。しかし、ルリータの追撃は続く。
「まだよ。”ウォータークロー”」
アポロンが逃げた先にルリータは攻撃した。水の爪が容赦なく襲いかかる。しかしアポロンはそれを難なく躱す。
「”ウィンドカッター””ライトニングスピア””フレイムソード”」
それから連続で魔法を放つ。そのどれもがアポロンの逃げた先に向けて放たれていた。アポロンはまるで自分の未来が読まれているような気分になりながらその攻撃を躱していく。
最初は容易く躱せていた攻撃も、数が増えればそうはいかない。途中から必死に躱すようになった。
「チッ……!クソッ……!」
アポロンは何発か攻撃をくらいながらほとんどの攻撃を避けきった。そして、屋根の上に着地する。しかし、当然そこにもルリータのトラップはある。範囲内に侵入すると爆発するというトラップだった。アポロンはそのトラップを受けかなりのダメージを負った。
「……」
「クソが!チマチマチマチマ……弱虫が足掻くな!」
「そういう割にはかなり焦ってるわね。そもそも、さっきから使ってる魔法全部初級魔法よ。あなた、初級魔法にここまでやられてるのよ。恥ずかしいと思わないの?」
「っ!?言ってくれるな小娘。貴様こそ素手で戦ってる者に対して魔法とは……卑怯とは思わんのか?」
「別に構わないわ。戦いが出来ないほど負傷していた真耶様に何もハンデを付けずに戦ったあなただって卑怯でしょ?そもそも、これは戦いよ。卑怯な手を使ってでも貴方を殺すのは普通でしょ?」
ルリータは恐怖に満ちた笑みを浮かべながらそう言う。その笑みを見たアポロンは一瞬奥歯を強く噛み締めると、さっきより楽しそうに笑いながら言った。
「面白い!なら、俺も本気を出してやるよ。”我が意志に応えし者よ”」
アポロンがそう言うと突如空から弓と矢が降ってきた。
「……”シャインアローズ”だ。これで貴様を殺す」
アポロンはそう言ってその弓と矢を構える。ルリータはそれを見てさっきと同じように構えた。しかし、そんな努力も無意味に終わる。
たった一瞬だけアポロンが動いたと思うと、ルリータの肩には金色の矢が刺さっていた。
「っ!?」
「フッ、お前の負けだな。これに対応出来ないんじゃあお前は俺に勝てない」
「アハハ!何言ってんの?今の攻撃は心臓を狙ったんでしょ?それを逸らされてるのにそんなに強気でいられるなんてバカみたいだわ」
ルリータはそう言って高笑いする。アポロンはそんかルリータを見て目を細めた。
「小娘が……どうしても死にたいようだな。なら、全力で殺してやるよ」
そう言って全身に魔力を溜め始める。そして、その魔力は瞬く間にアポロンの全身に回ると服を形成していく。
「初めからこうすればよかったよ。貴様はとことん俺を怒らせるのが得意なようだからな。これはゴッドノウズ……神のみぞ知る技だ。”神格化”」
アポロンがそう唱えた瞬間、アポロンの体が黄色い光に包まれる。そして、その体はとてつもない魔力に包まれた。
「っ!?」
「これで、俺はお前を本気で殺せる。さて、死んでもらおうか」
アポロンはそう言ってルリータに向かって歩き出した。そして、3歩歩いたところで突如アポロンの姿が消える。
そして、ルリータの体にいくつもの光の矢が刺さった。
「っ!?」
ルリータは突如体を襲う痛みに驚き片膝を着く。
「何……!?これ……!?体が痺れて……!」
「馬鹿なヤツだ。それは麻痺効果を与える矢。俺の神器にはそれぞれの矢に効果を付与できる。詰みだ」
アポロンはそう言ってその拳をパキパキと音を鳴らす。
「……あなたも……相当馬鹿なようね。言ったでしょ?私だって魔王軍幹部なの。だから、これで終わると思わないで」
ルリータはそう言って立ち上がる。しかし、アポロンはルリータがなにかする前に決着をつけようとした。
だが、アポロンは決めきれなかった。殴りかかろうとした時、突如強い衝撃波を感じる。そして、アポロンは少し離れた場所まで飛ばされる。
「何だ!?」
「……あなたが本気を出すなら私も本気を出すわ。死ぬのはあなたよ。”死獄纏”」
その時、その場はどす黒い不穏な空気に包まれた。そして、なんとも言えない程の恐怖に包まれる。
アポロンはそんな空気を感じ取りニヤリと笑った。そして、ルリータの姿を見る。ルリータは黒いオーラに包まれていた。その黒いオーラは全てルリータに吸い込まれていき安定する。そして、その中から可愛いうさぎのコスチュームを見に包んだルリータが現れた。
「じゃあ、あなたは絶殺ね」
ルリータはそう言って決めポーズを決めた。
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