第85話 永遠の闇
その姿はまるで闇の龍だった。全身から黒いオーラが漂い、殺気は常人では考えられないほどのものだった。恐らく普通の人がここにいれば、2秒も保てばいい方だろう。それくらいの殺気だった。
真耶はそんな姿でゴーレムを見つめた。その手には地獄の剣が握られている。さらに、背中には羽が生え何度も羽ばたかせる。
「お前は俺を怒らせた。この意味がわからないほど馬鹿ではないだろう?終わりの時だ」
真耶はそう言って羅刹之獄を地面に埋めていく。そして、その上からリーゾニアスで突き刺した。すると、リーゾニアスに黒いオーラがまとわりついていく。
「お前に1つ言っておく。機械であるお前は分からないだろうが、誰かのために戦う者は強くなる。だがな、苦しみを乗り越えた者はその何倍も強くなれるんだ。人の苦しみを分からない機械語ときには理解不能だと思うんだがね」
真耶はそう言って剣を構えた。そして、その黒いオーラをどんどん広げていく。すると、真耶達がいた部屋はおどろおどろしい雰囲気に包まれた。
「この剣の名は『古代先進武器・理滅王剣リーゾニアス・獄』。永遠の暗闇に囚われろ」
真耶はそう言ってリーゾニアスすらも地面に埋めてしまう。その刹那、ゴーレムの体に無数の剣が突き刺さった。そして、ゴーレムは身動きが取れなくなる。
「これで終わりだ。”理滅・不治の呪い”」
その瞬間、ゴーレムの体は黒い闇に覆われ始めた。そして、真耶はニヤリと笑う。
「死を持って全てを断罪する。かっこいいだろ?」
そしてゴーレムは闇の中へと落ちていった。永遠ににもない世界へと落ちていった。死ぬことも、生きることも許されない。ただそこにあるだけ。情報は増やされ続けかつ、消され続ける。意識を保つことが出来ない。いや、許されない。行動全てが裁かれ続けるそんな空間にゴーレムは落とされた。
そして、真耶はその闇を回収した。ゴーレムを二度と出られない牢獄のような場所に閉じ込め死獄纏を解除した。
「っ!?」
たった少しの時間だったとは言え死獄纏を使ってしまったせいか、魔力回路への負担は相当大きかった。それに、今回はクロエの正の力を負の力へと反転させた。そのせいでクロエにもかなり負担がかかっている。
だが、幸運だったことにピクシーズコンパスを持っていたおかげで魔力消費を抑えられた。と言っても、ほんの少しだけなのだが。
「クハハ!……当分魔法は使えないな」
真耶はそう言ってルリータの元まで歩く。そして、ルリータをゆっくりとお姫様抱っこで持ち上げ、今度は冒険者の元まで歩いた。
「良かったな。ルリータのおかげで助かって。ルリータに感謝しろ」
「……ありがとう……」
「……ごめんにゃさい」
「助かった……済まない……」
「俺達のせいで彼女に怪我をさせてしまった。本当に申し訳ない。お詫びをさせてくれ」
冒険者達は次々にそう言ってくる。すると、真耶は少しだけ怒りの表情を見せる。しかし、その気持ちを必死に抑えながら言った。
「だったら、このアーティファクトを俺にくれ。それと、ギルドで俺が逃げろと言ったら全員を連れて必ず逃げろ。……俺はもう誰も巻き込みたくねぇんだよ……」
真耶はそう言って返答も聞かずにギルドへの帰路に着いた。そして、ゆっくりとその足を前へ進め始めた。
冒険者達はそんな真耶の背中を見て心が苦しくなった。しかし、何も言わない。多分、今ここで何かを言えば、全てが裏目に出るだろうから。冒険者達は静かに真耶を見送った。
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