第83話 再生する守護者
そして今、真耶は目の前のゴーレムを見て笑う。そのゴーレムは目の前にいる真耶を敵対するのかと思いきや、未だに女性を敵対視する。
真耶は女性の手に持ってあるアーティファクトを見た。そして、それを取ろうとする。しかし、女性はそれを離さない。
「わ、渡さない……わ……」
「死にたくなければ渡せ」
「嫌……だ……」
「ほぉ、なら死ぬか?それとも、俺にデコイのかかったお前をかばいながらゴーレムを倒せというのか?面白い。良いだろう。力の差と言うものを教えてやる」
真耶はそう言ってゴーレムを見た。やはり、ゴーレムは女性を狙っている。しかし、真耶はそんなゴーレムの心臓部分に狙いを定める。そして、左手に雷を発生させ一瞬で距離を詰め貫く。
「所詮はゴーレム。土で出来たものは雷に弱い……はずなんだがな」
真耶は心臓を貫かれても動こうとするゴーレムを見て言葉を失う。そして、それと同時にあることに気づく。なんと、ゴーレムが再生しているのだ。貫いた場所がどんどん再生している。かなり余裕のあった穴は今では腕を完全に締め付け抜けなくなってしまった。
「チッ……!」
真耶は左手が完全に抜けなくなったのを見て少し考えると、躊躇なく左腕を切り離した。そして、血が吹き出る左腕で振りかぶると今度はゴーレムの顔に向かって殴りつける。
さらに、今回は左腕の再生の力を加える。そうすることで通常の何倍もの力を得ることが出来る。
そして、その一撃をもろに食らったゴーレムは少しよろける。
「グォォォ……」
ゴーレムから音が鳴った。どうやらゴーレムの声らしい。このゴーレムは喋るようだ。真耶はそんなゴーレムを見ながら今度は右手に雷を発生させる。そして、その雷でゴーレムの顔を貫いた。
ドゴォ!という音と共にゴーレムの破片が散らばる。そして、それと一緒に真耶の右腕も散らばった。
なんと、ゴーレムに攻撃した真耶の右腕はゴーレムの硬さに負けてしまい弾け飛んでしまったのだ。
「っ!?」
真耶は咄嗟に体をひねりゴーレムを蹴る。そして、その数秒後にゴーレムの攻撃がっきまで真耶がいた場所に来る。あと数秒遅ければ真耶は殺られていた。
「まさか……ここまでとは思っていなかったな」
真耶はそう言って後ろを見た。後ろには全員いる。
「チッ、最悪の場合も考えなければならないな。クロエにも負担がかかるが、もう一度天神纏を使う可能性がある」
真耶はそう言いながら周りを確認する。そして、今真耶がいる部屋が思いのほか広いことを確認した。そして、右腕を再生させる。その時、両腕にシューターを装着した。
「やるしかないな」
真耶はそう言って右に飛ぶ。そして、至る所に悲しみの糸を張り巡らしていく。そうすることで攻撃の布石にしようとしたのだ。
そうして真耶はどんどん自分のフィールドを作っていく。しかし、その途中であることに気がつく。なんと、ゴーレムが真耶の方向を向いているのだ。
「っ!?矛先が変わった!?まずいな」
真耶はそう言ってゴーレムに近づくのを止める。少し離れたところで魔法を発動しようとした。しかし、なんとゴーレムはたった一瞬で真耶との距離を詰める。そして、攻撃してきた。
真耶はギリギリでその攻撃を躱す。そして、直ぐに魔法を放つ。
「”プラズマブラスト”」
手のひらから放たれたプラズマの光線はゴーレムの体を貫いた。しかし、ゴーレムは止まるところを知らない。再生しながら近づいてくる。
「クソ野郎!さっさとアーティファクトを渡さないからだ!」
真耶はそう言って張り巡らされた糸に魔法を放つ。その魔法はクロエの紫色の炎を出す魔法だ。真耶はその紫色の炎で糸を燃やす。
そして、唯一燃えてないがその糸と繋がっている糸を握りしめた。真耶はゴーレムを引きつけるとその糸を一気に引く。すると、張り巡らされた糸がゴーレムをバラバラに切り裂いた。
しかし、真耶は直ぐにその場から離れる。そして、目の前の光景を見て言葉を失った。なんと、ゴーレムが復元しているのだ。バラバラだったのにきちんと元の場所に戻りくっついている。
「これでもダメか……」
真耶はそう言ってゴーレムを見る。考えてみれば、このゴーレムには魔力回路が無い。なんせ、これだけ切断されれば魔力回路は切り裂かれるからだ。
もしくは、魔力回路に残った魔力だけで再生しているかだが、さすがに無いだろう。だとしたら、考えられるのはこのゴーレムの体に記憶魔法がかけられているということくらいだ。その他で考えると、古代の魔力で再生しているということ。
「……神眼で見ても何も魔法はかかっていない。情報が流れ込んできてないだけなのかもしれないが、流石に無いだろう。だとすると、記憶魔法はかかっていないか」
真耶はそう言う。そして、ゴーレムを見て素早く思考をめぐらせる。すると、いくつか策ができるが、そのどれもが危険を伴う。
しかし、躊躇している暇は無い。今は、危険だろうがなんだろうがやるしかない時なのだ。
真耶はそう頭の中で考えて右手を前に突き出した。そして、大量の魔力を溜める。結局今回真耶が選んだ策は、全力でゴリ押しすると言うもの……ではなく、もっと倒せる可能性があるもの。
しかし、それを使う前にいくつか準備しておかなければならない。
「……殺す。”獄炎樹”」
真耶がそう唱えると、地面から燃え盛る紫色の炎を纏った樹木が生えてきた。それは瞬く間にゴーレムに絡みつきゴーレムを燃やしてしまう。しかし、あまり有効打にはなってないようだ。
だが、真耶はこれで終わらなかった。直ぐに違う性質の魔力を溜めて放つ。
「”燃やし尽くせ。宿命の業火”」
その瞬間、ゴーレムを中心として半径3mの範囲に炎が発生する。その炎は一瞬でゴーレムを包み込み檻のように閉じ込める。
そして、その炎の檻の中では想像を絶するほどの獄炎が発生した。その炎はゴーレムの体を溶かしていく。
真耶はその炎を見ながら目を瞑り、さっきまでとは比べ物にならないくらい集中した。そして、どす黒く暗い魔力を溜め始める。
「……」
少しして炎は弱まった。そして、1度弱まってしまった炎はさらに弱まっていく。どんどん弱まっていき遂には消えてしまう。その中から現れたゴーレムは体の半分が溶かされていたが、やはり再生していた。
「嘘!?あんなにすごい魔法だったのに!?」
その戦いの様子を見ていたルリータはゴーレムの異常な強さに思わずそう言ってしまった。一瞬ゴーレムがルリータの方向を見たが、敵対はされなかった。
「炎が消えた……まだ生きてるか。予想通りだ」
真耶は目を瞑りながらそう言う。そして、魔力を溜めたまま片足を地面に2回トントンと叩かせる。すると、地面に八卦の印が現れた。その印は前にロキと戦った時よりも大きく精密だ。
ゴーレムはそんな印に全く気づかず印の上に足を踏み入れる。その瞬間真耶は目を開いた。そして、地面からどす黒く暗い魔力を帯び、この世では見たこともないほどの禍々しいオーラを纏った剣が地面から現れた。
読んで頂きありがとうございます。