表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブオタクの異世界戦記Re  作者: 五三竜
83/195

第82話 めんどくさい男

 眼帯の奥から見えてる世界はなんなのだろうか?そんなことを考える時がある。普通の人なら、『何も見えない』や『暗闇』と答えるだろう。


 でも、真耶は違った。真耶は眼帯の奥から見える世界を『永遠の世界』だと言った。しかし、誰もそれを理解しないだろう。いや、理解できないと言ったところだ。


 だから真耶はそれを言うかどうかずっと迷っていた。しかし、真耶はそれを言った。


 ……ゴーレムが現れる10分前……


 真耶は木の上から冒険者達を見ていた。実は、あの時逃げたような振りをして木の上に登ったのだ。そして、そこから冒険者達を観察する。


 冒険者達が中に入ると真耶はゆっくりと眠りについた。ルリータはそんな真耶を見て少し戸惑う。


「ま、真耶様?こんなところで寝てたら危ないですよ」


 そう言って真耶を起こそうとする。しかし、突如真耶の中から手が出てきてそれを止めた。


「っ!?」


「ダメよ。今は真耶を寝かしてあげて」


「っ!?く、クロエ様!?」


 ルリータは出てきた人をそう言って慌てて跪く。


「そんなにかしこまらなくて良いよ。そんなことよりさ、今は真耶を寝かしてあげてくれないかな?今の真耶は私達が思ってるより疲れてるの」


「ど、どういうことですか?」


「えっとね、真耶は秘密にしてたけど、実は真耶の中にある魔力回路はほとんど焼き付いてて魔法もろくに使えないの。だから、本当はこうしてずっと寝かせておきたいのだけどね、なんでか真耶ってショートスリーパーなのよ。1時間で絶対に目覚めるの」


「は、はぁ……で、ですが、真耶様の魔力回路は無事だと言う調査結果が出てますよ。前に1度だけ真耶様が魔王城に入った時にこっそり真耶様を検査したのです。すると、基本的に状態異常はありませんでしたよ」


「あ〜あれね。あれはね、私が中心だったからよ。体の主導権を私が握ってたから検査されるのも私の状態なの。だから、真耶本人の魔力回路はボロボロだし、そもそもこの体自体が魔法で作りだした分身みたいなものだからボロボロなのよね。今は私が体の中に入っているから、この体を構成する魔力や素材が無くなることはないんだけど……」


 クロエはそう言って頭を抱える。ルリータはその話を中々理解できなかったのだが、なんとなく状況などは理解出来る。


 しかし、そう言われてもルリータにはどうしようもないのだ。何故かクロエはルリータになにか期待する目を向けるのだが、そんな目を向けられてもどうしようもない。


「あ、あの、どうしてそんな目を向けるのですか?」


「うふふ。予言するわ。あなた、多分だけど1つやらかすわ。でもこれは避けられない事実よ。だからね、もしその失敗で真耶が落ち込んでしまったら、謝ったらダメよ。全力で真耶に自分が強いことをアピールしなさい。キツくても、怖くても、辛くても、どんなことがあっても強いことをアピールしなさい。龍神の予言よ」


 クロエはニヤニヤと笑いながらルリータにそう言う。すると、ルリータは少し戸惑いながら敬意を見せ頷く。クロエはそれを見て頷くと最後に一言言い残して言った。


「何があっても真耶のことを嫌いになったらダメよ。彼の心は体以上にボロボロだから。あ、あと真耶にソフトクリームを食べてって言って。私が食べたいから」


 クロエはそう言って体の中に入っていく。何故か最後のソフトクリームのくだりはとてつもなく早口だったけど、ちゃんと真耶に伝えようと心に誓った。


 そして、そう誓った5秒後くらいに真耶は目覚めた。


「……クロエが何か言ったか?」


「ふぇ!?ど、どうしてそのようなことを聞くのですか!?」


「俺の意識が奥底に封じ込められたからな。何故かクロエの分身みたいな人に無理やり寝かされた」


「そ、そうだったのですね……」


 ルリータは頭の上に『・・・』が浮かんでそうな顔で真耶を見た。そして、その後何かを誤魔化すようにあははと笑う。


「ま、なんでも良いけどさ、クロエが最後に何か言ってなかったか?なんか無性にソフトクリームが食べたい」


「え?えぇと……作って食べたらどうですか?」


「待て、それは出来ない。ただソフトクリームが食べたいと言うだけでは情報が不足している。恐らくこの食べたいというのはクロエの欲なのだろうが、ソフトクリームと言ってもなんの味か分からない。バニラか?抹茶か?琵琶か?そこまで詳しく指定して欲しかったな」


「え、えぇ……」


 ルリータは困ってそう答える。そして、ついうっかりこう言ってしまった。


「な、なんでもいいんじゃないですか?」


「なんでも?ダメに決まってるだろ。作ったものがクロエの嫌いな味かもしれないだろ。それに、例えばの話だが、俺がジュースが飲みたいと言ったとしよう。その時ルリータはなんの味を買ってくる?」


 真耶のその問いかけにルリータは困って答えられない。


「分かった。じゃあ選択肢を作ろう。『オレンジ』『りんご』『みかん』だ。なんだと思う?」


「え、えと……み、みかん?」


 ルリータは当てずっぽうでそう答えた。すると、真耶は言う。


「不正解。正解はぶどうだ」


「選択肢にないじゃないですか!」


「俺は1度も選択肢から選べとは言ってない。ただ、答えやすいように選択肢を作っただけだ。それに、今のでわかっただろ?味を指定しなければどんな味が来るのか分からないんだ。もしかしたらスライム味かもしれないぞ。これで分かるだろ?どんな時に置いても情報が足りないことはペラペラペラペラペラペラ…………」


 突然真耶の長話が始まる。ルリータはそんな真耶についていけずに困惑する。しかし、止めようとしても止まりそうにない真耶の話を聞いて頭が痛くなる。


「ペラペラペラペラペラペラ…………おい、聞いてるのか?」


「ふぇ!?」


 思わずルリータはそう叫んだ。突如真耶にそう言われてぼーっとしていた頭が冴えてくる。


「へ?え?あ、えと、き、聞いてました!」


「そうか、じゃあぶどうジュースの良さをここで言ってくれ。3つだ」


「え?えと……酸っぱいところとか、甘いところとか、紫なところとか……?」


 ルリータはしどろもどろ出そう答える。だが、そうとしか答えられない。なんせ、何も話を聞いてなかったからだ。


 真耶はルリータの話を聞いて言う。


「不正解。そもそも、俺はぶどうジュースの良さなど話してはいない。お前、俺の話を1つも聞いてなかったな?子供の時に、『人の話はちゃんと聞きましょう』って習わなかったのか?もし習ってるならそれと同時に悪いことをしたらお尻ペンペンだってことも習ってるだろ?」


 真耶はそんなことを言う。その刹那、ルリータの背中に悪寒が走る。そして、お尻を抑えながら膝立ちとなり、手を使わない土下座のようなものをする。


「ほぉ、手が凄まじくヒリヒリするが良いか?お尻で受ける方が痛くないぞ」


 真耶はそんなことを言う。しかし、その時に突如新しい何者かが現れた気配と魔力を感知して動きを止める。そして、2人はほぼ同時に遺跡の中を見た。


「今のって……!?」


「やはり現れたか……気配は感じてたのだがな。トリガーはアーティファクトを取ったことか」


「どういう事ですか?」


「守護者だよ。アーティファクトを盗む者を排除するゴーレムがここには存在する」


「えぇ!?じゃ、じゃあ早く助けないと……!」


「待て。闇雲に突っ込んでも勝てる相手では無い。自分が有利に戦闘を行えるくらいに情報を持っていなければ勝てる相手も勝てなくなる」


 真耶はそう言ってルリータを制止すると神眼でその中を覗き見る。すると、冒険者達がボコボコにされているのが見えた。


「……」


「い、行かないと!し、死んじゃいますよ!」


「……待て。魔法が来る」


 その刹那、遺跡の中から水が溢れてきた。どうやら魔法を使ったらしい。


「っ!?嘘!?超級魔法!?」


「知ってるのか?」


「はい。あれは超級魔法ですので……」


「そうか、なら、あれはお前から見てどうだ?強いか?」


「かなりの強さだと思います。あの強さでしたら上級魔物は確実に殺られますね」


 ルリータはかなり深刻な顔つきでそう言った。どうやら本当に今の魔法は凄いらしい。


 真耶はその魔法を見て少し考えた。そして、ルリータに言う。


「あの威力ではダメだな。行くぞ」


「えぇ!?あ、はい!」


 真耶は木の上から降りると遺跡の入口の前に立つ。すると、猫耳忍者が飛んできた。真耶はそれを腕で受け止める。


「にゃにゃ!?あ、ありがとにゃ……」


「礼はいらん。それより、やはり守護者が出てきたみたいだな」


「にゃにゃ!?知ってたにゃ!?」


「当たり前だ。アーティファクトに関してはかなり調べたからな。とりあえずお前とは後で話したいことがある」


「な、なんにゃ?」


「今はそれどころじゃないだろ?」


「そ、そうにゃ」


 猫耳忍者はそう言って立ち上がろうとする。しかし、真耶が担いでいるため身動きが取れない。じたばたしていると真耶も怒ったのかお尻を力いっぱい叩いた。


「ふにゃあぁぁぁ!」


 バチィィィン!と言う悲痛な音が響き渡る。さらに、猫耳忍者の来ている服は露出度が高いせいでお尻の部分の布面積も少ない。だから、叩かれると手のひらが全てお尻に当たり痛みが増す。


 猫耳忍者はたった1発で涙目で動かなくなった。そして、真耶はそんな猫耳忍者を担いで移籍の中へと入った。

読んで頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ