第81話 防人のゴーレム
真耶を襲った冒険者達は何も知らずに奥へと進んでいく。と言っても、この遺跡はかなり短かった。入口の階段を降りてすぐに通路のようなものがあり、そこを抜けると祭壇の間のようなところについた。
冒険者達はその祭壇の間に来て、直ぐに上を向いた。すると、その目線の先になにかあることに気がつく。その何かというのは、予想通りアーティファクトだった。
冒険者達はそのアーティファクトを見て目を輝かせる。そして、全員楽しそうに笑う。
「結構簡単に見つかったな。この遺跡も、長いのかと思いきや短かったし」
「そうですね。やはりあの男について行って正解でしたわ。1人だけ他とは違う動きをしてましたからね」
「でも、襲った時に反撃されないか怖かったにゃ。もし、あそこでやり合ってたらどうなったんだろ?」
「4人居たから大丈夫だろ?それに、直ぐに逃げるような腰抜けは強くはねぇんだよ」
冒険者はそれぞれそんなことを言ってアーティファクトに近づいていく。そして、祭壇をのぼりアーティファクトが置いてある台の前に立った。
「これを持って帰ったら私達英雄よ!」
「賞金ガッポガッポ貰えるな!」
冒険者達はそう言ってはしゃぎながらそのアーティファクトに手を伸ばす。
「でも、あの男も本当に馬鹿ですね。逃げるなんて。うふふ」
「ホントそうだにゃ〜」
リーダー的な存在の人がアーティファクトを取ろうとした時後ろで女性2人がそんなことを言って笑った。
「おいおい、雰囲気壊すなよ。それに、来なかったことをありがたく思おうぜ。こんなところで戦いたくなかったからな」
「そうね」
そう言って冒険者のリーダー的存在の人は、アーティファクトを手に取った。その瞬間、その空間に警報が鳴り響いた。
「っ!?何!?」
「マズイぞ!今すぐ退避するんだ!」
冒険者達はそう言って慌てて来た道をもどる。しかし、祭壇の間を抜けてすぐの一本道に謎のゴーレムのようなモンスターがいて逃げられなかった。
「待って!何あれ!?」
「ゴーレムのようだ!すぐに壊す!」
冒険者の1人がそう言って盾を取り出すと、そのままゴーレムに突進する。そして、凄まじい勢いで突進したことで、その場に爆音と砂煙が上がった。
その刹那、突如がたいの大きい男が吹き飛ばされる。冒険者達がいた方向に吹き飛ばされ壁に背中を強く打つ。
「グハッ……!」
男は力なくそんな声を上げて動かなくなってしまった。
「っ!?ゲイム!大丈夫か!?」
「グ……!い、生きている……!」
「だ、大丈夫にゃ!?今すぐ回復するにゃ!」
猫耳忍者はそう言って回復魔法をかける。
「済まない……ミィム……」
「全然良いにゃ!それより、あのゴーレムをどうやって倒すかを考える方が先にゃ!」
そう言って冒険者達は全員ゴーレムのいる方向を見る。どうやらゴーレムはずっと攻撃してくる訳では無いらしい。
もしかすると、攻撃される範囲の中に入ってないからなのかもしれないが、それでも攻撃はしてこない。
「ちょうどいいですね。アーティファクトの力を試しましょう」
「魔法を使うのか!?」
「えぇ。この遺跡もかなり頑丈そうですし、超級魔法で行きましょう。所詮はゴーレム。土で出来たものは水に弱いのですよ」
真耶に魔法を放った女性はそう言って杖を構える。その手にはアーティファクトが握られていた。
このアーティファクトの名前は精霊達の羅針盤。魔力を増大させ、通常の魔法を何倍にも強化するアーティファクトだ。だが、それは表の能力。裏の能力はまた別だ。
女性はその表の能力しか知らない。だが、それでもかなりの効果はある。女性は自信満々で詠唱を始める。
「”我が体に満ちる魔力よ、今ここに精霊の加護とともに我が魂を導き給え。超級魔法・水精霊の逆鱗”」
その瞬間、女性の周りに大量の魔力が溢れ出した。そして、巨大な魔法陣が展開され、その中から大量の水が出てくる。その水は瞬く間にゴーレムを包み込んだ。
そして、水はまるで渦潮のように竜巻を作る。そのままゴーレムはその竜巻に吸い込まれていき溶かされていく。
そこで魔法は終わった。ゴーレムは完全に溶かされてしまい、活動を停止する。女性はそれを見て不敵な笑みを浮かべた。
「やりましたわ」
「凄いな。いつもの何倍もの威力が出てるぞ」
「えぇ。しかも、これでもまだ魔力に余りがあるのですよ。このアーティファクトは本当に凄いわ」
そう言って笑う。しかし、猫耳忍者だけは笑わなかった。というより笑えなかった。なんせ、まだゴーレムが動いていたから。まるで、っきまでの攻撃はなかったかのように動いているのだ。
「後ろ!」
そう声を上げ逃げようとする。しかし、全く間に合わない。そのまま攻撃を受けてしまう。
「「「きゃあ!」」」
「クソッ!」
「グハッ!」
その場にいた全員はゴーレムの一撃で全員吹き飛ばされ壁に背中を強く打つ。さらに、女性は攻撃したからか、追撃をされてしまう。
「グフッ……!」
腹を殴られ嘔吐する。しかし、ゆっくり嘔吐させてくれる暇などない。その後顔を何度も殴られボコボコにされた挙句、両足を折られてさらに殴り飛ばされる。
女性はその痛みに声が出なくなってしまった。
「あ……あ……たす……けて……」
女性はそう言って逃げようとする。しかし、ゴーレムは容赦なく追い詰めてくる。
「ま、待つにゃ!私が相手にゃ!」
猫耳忍者はそう言ってクナイを構え戦う姿勢を見せる。しかし、攻撃が通ることは無い。たった一撃で武器は壊れる。そして、ゴーレムの一撃で猫耳忍者は入口付近まで吹き飛ばされた。
女性はその時死を覚悟する。仲間はみ皆やられてしまった。たとえどれだけ攻撃しても、勝てないだろう。女性が死を覚悟した時、どこからともなく足音が響いた。
「あーあ、思った通りだ。もっと慎重に行かないからこうなる」
そんなことを言ってくる。その声は男の声だった。その男は猫耳忍者を担ぎあげ呆れた目をして女性を見ている。
「人を襲うなんて悪いことをしたらこんなふうに自分に帰ってくるんだよ」
真耶はそう言って猫耳忍者のお尻を力強く叩いた。
「ふにゃあぁぁ!は、反省してますにゃぁ!!!許してにゃあぁぁ!!!」
猫耳忍者はそう言って泣き叫ぶ。真耶はそんな猫耳忍者を担いだままゴーレムを見つめる。こんな状況でもゴーレムは女性を殺そうとしていた。
「”吹っ飛べ”」
真耶は左目に対極眼を浮かべそう唱えた。すると、ゴーレムが吹き飛ばされる。その間に真耶は冒険者を全員救出した。
「ルリータ、回復を頼む」
真耶はそう言って冒険者を全員ルリータがいる方向に投げる。
「了解です!」
ルリータはそう言って敬礼する。そして、回復魔法をかけ始めた。真耶はそれを横目に眼帯をつけ直してゴーレムを見た。
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