第80話 クエスト開始
「さて、クエストまであと1時間か……案外時間が無いものなんだな」
真耶はそう言ってギルドにある椅子に座った。そして、周りを見渡す。すると、ルリータとはぐれてしまったことに気がついた。
「あれ?」
真耶は少しだけ疑問に思う。そして、周りを確認すると広域探知魔法を発動する。すると、真耶を中心として半径200メートル近くの存在を探知する事ができるようになった。
「……いた」
真耶はそう言って振り返った。すると、少しだけ泣きそうな顔のルリータがいた。
「どこ行ってた?」
「……」
ルリータは真耶の問いに答えない。何故か、暗い顔をして泣きそうに震えている。真耶はそんな様子のルリータを見て少しだけ何かを察した。そして、察したことを悟られないように何も言わずにルリータを見つめる。
「……」
「ま、いきなりどこか行くのはやめろ。そこだけ気をつけてくれ」
「分かり……ました……」
ルリータは真耶の言葉を聞いてそう答える。真耶はルリータにそう言うと、それ以上何も言うことは無かった。そして、シューターを両腕につけ、眼帯を1度外す。
そして、眼帯に誰にも見えないように少し細工をして、両目に目薬を打つと眼帯をつけ直した。
そして、立ち上がるとルリータの後ろに立ち両肩に手を乗せる。そして、少しだけ魔力を流す。
「ど、どうしたのですか?」
「……いや、なんでもないよ。ルリータ、お前に1つ言っておく。今回の命令は『いのちだいじに』だ。『ガンガン攻めろ』じゃないから気をつけろよ」
真耶はそう言ってニヤニヤと笑う。そして、バレないように後ろをちらっと見て不敵な笑みを浮かべた。
それから時間が経って遂にクエストが開始される。クエスト開始の合図はギルドの中であり、合図がなった瞬間に冒険者達が外へ出ていく。
真耶はそんな様子を見て笑っていた。ルリータも少し楽しそうに笑う。そして、少しずつ前までのルリータが戻ってきた。
「フッ、アーティファクトは闇雲に探しても見つかるわけないのにな。ルリータ。広域探知魔法を使ってみてくれ」
真耶がそう言うと、ルリータは頷いて魔法を発動する。それは、広域探知魔法だ。発動した瞬間にその場の人の気配や魔力などのほとんどの情報を頭に流し込むこと後出来る。
しかし、アーティファクトらしきものは見つからない。
「アーティファクトは無いですね」
「だろうな。まだここは街の中だから」
「もぅ!からかわないでくださいよ!」
「いや、からかってないよ。ルリータは今の探知魔法で俺のアーティファクトが反応したか?」
「え?い、いえ、何も反応しませんでした」
「そういうことだ。アーティファクトは普通の探知魔法では反応しない。古代の遺物さえも反応しなかったのだからな。ちなみに俺は今古代の遺物をいくつか持っているが、そのどれもが反応しなかったはずだ」
真耶はそう言った。すると、ルリータはこくりと頷く。そして、真耶に問いかける。
「なんで遺物を持ってるのですか?」
「前にデュオラの街に行った時にいくつか持っていた。なにかに使えないかと思ってな。そもそも、お前の杖を作った時に使ったアーティファクトの剣があっただろ?あれはデュオラの街に行って見つけたものだ。デュオラの街には遺物やアーティファクトが多い。俺はそこでいくつか持ってきたのだよ」
「そうだったのですね。でも、それが何かあるのですか?」
「まぁ、遺物は特に関係ないさ。でも、遺物は神眼で分かる」
真耶はそう言って目を黄色く光らせた。その目に映っていたのは神眼だった。
真耶はその目を浮かべると辺りを見渡して歩き始める。それは、街の外なのだが、皆が言った方向とは別の場所。真耶はそっちに向けて歩き始める。
その後ろから冒険者が着いてくるのが分かった。どうやら漁夫の利を得ようとしている。真耶が見つけたところで襲って手に入れようとでも思っているのだろう。
真耶はそれがわかっていたが、特に気にすることも無くそのまま進んだ。道中、魔物が大量にいたが、全員真耶の殺気にやられて襲ってこない。
「……そろそろだ」
真耶がそう言うと、遺跡のような物を発見した。しかし、その遺跡は皆知っている場所だ。そして、ペンドラゴンではそこには何も無いと有名でもある。だから、別名見せかけ遺跡だ。
しかし、真耶はその遺跡に来た。そして、その遺跡の真ん中に立つと、魔法陣を展開し始める。
「っ!?真耶様!?」
「ルリータは危ないから離れておきなさい」
真耶はそう言ってその魔法陣を完成させる。そして、魔力を注ぎ込んだ瞬間遺跡にかかる魔法が発動して扉が現れた。それは、地下に進む扉だった。
「それじゃあ、行こうか」
真耶がそう言って進もうとした時、突如後ろからクナイが飛んでくる。
「っ!?」
真耶はそれを難なく躱してクナイをキャッチすると、飛んできた方向に向かって投げ返した。さらに、地面に落ちている石を使い手裏剣を作り出しそれも投げる。
しかし、どうやらその全ては弾かれたようで、無傷の女性が出てきた。格好はまるで忍者のようだ。しかし、猫耳が着いている。どうやら猫耳忍者のようだ。
「おい、何故俺に向かって攻撃をする?」
「何故って、邪魔だからにゃ〜。ね、皆」
猫耳忍者がそう言った瞬間、背後から巨大な火の玉が飛んできた。どうやら仲間がいて仲間が後ろから魔法を放ったらしい。
「私が……」
「やめろルリータ。反撃はしなくていい」
真耶はそう言ってルリータを担ぐとその場から退散する。それも、凄まじい速さで。
「あら、逃げたのね。臆病な人達。それじゃあ行きましょ」
魔法を放った女性はそう言って扉の前に来る。そして、扉を開けようとした。しかし、開かない。
「待て、俺が開けよう」
そう言ってがたいの大きいいかにもブロッカーですって感じの男がその扉を押した。すると、少し硬いが開く。そして、開くともう1人の男が言った。
「気をつけろよ。何があるか分からない」
そう言って前に出る。どうやらリーダーだったらしい。真耶はその様子を気配を消して近くから見ていた。
「行くか……愚かな奴らだ」
真耶はその様子を見ながらそう呟いた。
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