第76話 ユグドラシルの力
真耶が持っている剣からは不思議な力を感じた。それとほぼ同時にロキはミストルティンを構えて魔法陣をいくつか作りだす。そして、真耶に向けて言った。
「先手必勝ですね。”ユグドラショット”」
その刹那、魔法陣からエネルギー弾が放たれた。そのエネルギー弾は迷うことなく真耶を襲う。
「”星剣・星雲破壊”」
真耶はそう言ってリーゾニアスを振るう。そして、エネルギー弾を破壊した。真耶はそのままロキの元まで一気に距離を詰める。そして、何度も攻撃をする。
しかし、ロキはすぐにレーヴァテインを召喚してその攻撃を防いだ。
「遅いな」
真耶はそう言って首元を狙った。しかし、それすらも防がれてしまう。2人の力が均衡になり、全く動かなくなった。
「本当にそうですね。あなたは遅い」
「ハハッ、そう思うだろ？俺もそう思う」
真耶はそう言って押し切りロキのレーヴァテインを地面とリーゾニアスで押さえ込んだ。そして、そうして固定した状態で足を上げロキの首元を蹴る。そのせいでロキは少し遠くに飛ばされる。
真耶はそんなロキを見ながら自分もロキが飛ばされた方へと走り出した。そして、ロキが起き上がったと同時に真耶は攻撃をする。剣を構えてロキの首を切り落とそうと剣を振る。すると、ロキはその刃に気が付き慌てて体をのけぞらせた。そして、スレスレのところを真耶の剣が通り抜ける。
そして、2人は急ブレーキをかけて砂埃を上げながら止まる。その後には引きずった跡と大量の砂煙が残っていた。
ロキは止まるなりすぐに飛び上がり、ミストルティンを召喚し神器を召喚する。その神器の形は円形で魔法陣ににていた。しかし、真ん中には穴が空いていて、ドーナツのような形でもある。
「”ブリーシンガメン・フレアブレイド”」
ロキがそう唱えた瞬間、その魔法陣のようなものからいくつもの炎の斬撃が飛ばされる。真耶はそれを見てすぐにリーゾニアスを構えた。
「炎には……炎だよな！”真紅・炎神”」
真耶はそう言って剣に炎を纏わせると、目にも止まらぬ速さで剣を振った。すると、一瞬で互いの斬撃がぶつかり合い凄まじい衝撃波が発生した。
「っ!?」
2つの炎はぶつかった時に弾け飛び、空中に炎のオーロラが発生する。そして、そのオーロラは段々と広がっていき、龍のようになった。
荒れ狂う龍は空を焼き払いながら真耶とロキの周りを囲んでいく。ロキはその空間に足をつけた。そして、2人は炎の塀に囲まれた空間で向かい合う。
「……炎のフィールドですか……面白い。少々本気を出しますか……」
ロキはそう言ってユグドラシルの根を生やす。そして、その根の中にレーヴァテインを刺し込んだ。すると、ユグドラシルの根が燃え始めた。
「ユグドラシルの根はどんなに燃やそうとも燃えることは無い無限の根なのですよ。だからこそ、ユグドラシルは無限の時を生きるのです。さぁ、戦いましょうかね」
ロキはそう言ってミストルティンを構えた。そして、一瞬で初めて見る神器を召喚すると、真耶に攻撃をする。
その武器は鞭のようなものだった。鞭のようにしなり先端には鋭い棘が付いている。ロキはその棘の部分で刺し貫こうとしてきた。
「っ!?見たことないな。なんだそれ？」
「へぇ、見たことないんですね。確かにこれはレアなヤツですけどね。『グレイプニル』『グレイプニール』どちらで呼んでもらっても構いません。これは、鞭のようにしなり、鋼のように強い紐です。紐ですが、こういう戦い方もあるのですよ！」
そう言ってグレイプニルで真耶の体を巻取ろうとした。真耶は咄嗟にジャンプをして上に逃げる。しかし、ロキはすぐにグレイプニルを真耶に向けて飛ばした。
「チッ……」
真耶は瞬時に悲しみの糸をシューターにセットする。そして、すぐに糸を出した。その糸は少し離れた地面に着くと、強い力で真耶の体を引く。そうして真耶は脱出する。
「紐の使い方は分からねぇが、糸の使い方なら分かるぜ」
真耶はそう言ってリーゾニアスを構えると地面に擦り付けながら走る。すると、ちょっとして突然リーゾニアスに火が点る。
「っ!?」
ロキはその火を見て少し驚く。真耶はその火を見てニヤリと笑う。2人ともそれぞれの反応を見せながら片方は守りのもう片方は攻撃の体勢を取った。
そして、真耶の持っている燃え盛る剣が振り下ろされる。その灼熱の炎を纏った刃はロキを容赦なく襲った。
「っ!?」
ロキはその攻撃を1度は避ける。しかし、すぐに真耶が次の攻撃をしてきてその攻撃は当たってしまう。幸いにもその攻撃はただの蹴りだったため、あまり傷を負うことが無かった。
「決める……！」
真耶はそう言って飛び上がり、怯んだロキに向かって剣を振り下ろした。その燃え盛る火炎を纏った刃はロキの首元に向かって一直線に降りていく。
しかし、真耶はあることに気がつく。それは、ロキが飛ばされた方へとがミストルティンを構えているということ。そして、そのミストルティンが自分に向けられているということ。
「っ!?」
その刹那、炎に包まれたユグドラシルの根が真耶を襲った。ギリギリで剣で防ぐことが出来た真耶だったが、その根の強さに圧倒され近づけなくなる。
「まだ、終わりませんよ。”ブリーシンガメン・プラズマドライブ”」
ロキがそう唱えた時、ブリーシンガメンの中から青い炎の光線が放たれた。
「っ!?プラズマか……！」
真耶はそのプラズマの光線を右に避けようとした。しかし、両サイドにユグドラシルの根が生やされ逃げ道を失う。真耶はそんな状況になってすぐに思考を巡らした。そして、目の前のプラズマの光線を見る。
「やるしかないな。”星剣・惑星破壊”」
真耶はそう言ってプラズマの光線を切り裂いた。すると、プラズマの光線がパラパラと崩れ落ち始める。そして、それは文字通り破壊された。
「っ!?なっ!?まさかあれを!?」
「……意外と行けたな。じゃあ、次はお前だな」
真耶はそう言って剣を構えた。ロキはそんな真耶を見て1度俯くと楽しそうに笑いながら真耶の顔を見た。そして、ミストルティンを真耶に向ける。
2人の間に沈黙が流れた。そして、その沈黙も一瞬で壊される。ロキは自分の背後に巨大なユグドラシルの根を生やした。その根にはなんと花が咲いており、その花は真耶を向いている。
さらに、真耶は途中で気がついたのだが、真耶の周りにもユグドラシルの根が生やされていた。しかもそれにも花が咲いている。真耶はそれを見て嫌な予感がした。
「ユグドラシルから放たれるエネルギーは尽きることが無い。そして、そのエネルギーは人を殺すには十分すぎるのですよ」
ロキはそう言ってミストルティンを振り下ろす。すると、花から高エネルギーの光線が放たれた。その光線は容赦なく真耶を襲う。真耶はそれを見て苦悶の表情を浮かべた。ロキはそんな真耶を見てニヤリと笑った。
読んで頂きありがとうございます。
