第74話 ロキとの戦い
「なぜわかったのです?動きも何もかもを模倣したのに」
ロキはシュテルの姿をやめていつも通りの姿になると、攻撃をしながらそう聞いてきた。
「まぁ、だいたい3つだな。確かにお前はシュテルの動きを完全に模倣してたよ。ステータスも魔力の質も、何もかもを。癖まで完璧に模倣していた。ただ、違和感は3つあったよ。まず、シュテル以上に攻撃のキレが鋭いとか、攻撃した後に両足を揃えて立つお前の癖が出てたとかね。あと1つは、シュテルは剣聖であり王国戦士長でもある。だから、そこまで暇じゃない。そもそも、王国戦士長が1人でこんなところに来るわけないだろ」
「なるほど、そんな理由でバレたわけですか……まぁいいでしょう。あなたにはバレるとわかってましたからね」
ロキはそんなことを言いながらプラネットエトワールを振る。しかし、真耶には当たらない。たとえどれだけ速い連撃を繰り出そうとも全てを躱す。
「ですが、不思議ですね。あなたの話を聞いていると、この剣は兄弟剣で見分けがつかないと言った様子です。しかし、あなたは分かった。製作者でも使用者でもないのに。なぜです?」
「簡単な話だ。シュテルンツェルトとプラネットエトワールには大きな違いが1つだけある。他は全く同じだが、その1つだけな」
「違い?果たして、それはなんでしょう?」
「それは、シュテルンツェルトは星の加護を得られてプラネットエトワールは惑星の加護を得られるということだ」
真耶はそう言ってロキの攻撃を途中で受け止め反撃をする。右斜め下に振り下ろしてきた攻撃は左腕で受け止め受け流しながら右手で殴る。しかし、ロキはそれを避けると流れるように回転しながら横に振り払ってきた。真耶はその動作を見て上か下かどちらに逃げるか考えた後、タイミングよく体を反らせ避けた。
そして、そこからバク転のように足を上げロキを蹴る。ロキはその攻撃も分かっていたかのように剣で受け止めた。しかし、多少の衝撃があったのか少し飛ばされる。
「……星の加護と惑星の加護ですか。特に違いがあるとは思えませんね」
「まぁ、普通はそう思うんだがな、決定的な違いがある。まず、星の加護は自分が今いる惑星では無い惑星から力を受けることが出来る。そして、惑星の加護は今いる惑星から力を受けることが出来る。だから、星の加護は周りの宇宙エネルギーや星エネルギー、大気エネルギーなどの周りのエネルギーを使うのに対し、惑星の加護は地脈のエネルギーを使うんだ。今お前は気づいてないだろうが、無意識的に地脈を取り込んでいる」
「……なるほど。だから魔力を消費する感じがしなかったのですね。迂闊でした。もう少し疑問に思うべきでしたね」
ロキはそう言って剣を構える。そして、赤い右目を光らせて真耶の顔を見ると、瞬間的に移動して真耶の前に現れた。
しかし、どれだけ速くても真耶に攻撃が当たることは無い。全方向からの攻撃を真耶は華麗な動きで避けていく。
「真耶さん、あなたは私の正体を見破った。ですが、今この状況で有利なのは私です。私は地脈のエネルギーを使える。魔力は無限なのですよ」
「言うね。でも、お前地脈を使う敵と戦ったことないだろ?」
「どういうことです?」
「地脈を使う敵にはそれなりの戦い方がある。あまり知られてないし、現実的ではないがな。基本的に地脈を操ることが出来るのは龍神族だ。だが、地脈に干渉するなら神は出来る。だが、操るのは神でさえできない。そして、地脈を無意識で使う者は地脈のエネルギーのオンオフを切り替えられない。だから、こうするのが1番なんだよ」
真耶はそう言って両手に黒い魔力を溜め地面に手を着いた。
「”魔毒瘴”」
その刹那、地面に毒気の強い魔力が流された。ロキはそのことに気がつき慌てて剣を手放す。
「まずい……!」
真耶はその剣に目をやると、地面に流した魔毒を瞬時に浄化させその剣を取った。そして、流れるような動きでロキに向かって襲いかかる。
「……っ!”呪木殺”」
ロキは慌ててミストルティンを召喚すると、真耶の足元に樹木の種をうえつける。そして、その樹木は一瞬で育ち真耶を覆い隠した。
「”星剣・星雲破壊”」
しかし、真耶はその樹木を破壊すると無傷の状態で現れた。そして、ロキの間合いに入り込む。
「クッ……!”来い……レーヴァテイン”」
ロキはそう言って燃え盛る剣を召喚した。そして、真耶の攻撃を迎え撃つ。
「神器・レーヴァテインか。その剣にまとい着く炎はその力を失う時まで消えることがない。灼熱の神剣だ」
「よくご存知で。私のコレクションの1つですよ」
ロキはそう言って真耶の剣を受け流す。そして、すぐに反撃をした。しかし、真耶はその攻撃を避ける。縦に切り上げるような攻撃は真耶は左に少し体を動かし避けた。
そして、両者は直ぐに離れ距離をとる。そして、向かい合って剣を構えあった。
「その剣は気に入ってたのですがね。あなたは強いから取られてしまいましたか。ですが、別に構いません。あなたにあげましょう」
「……」
「ですが、私の勝利は渡せませんね。”私はロキ。全ての神器を扱う『遊び人』です”」
その刹那、真耶の周りに無数の魔法陣が現れる。その魔法陣は全方位に現れており、逃げ場は無い。
「その中からは私のコレクションである神器が出てきます。それはあなたの体が無くなるまで襲います。私の勝ちです」
「……」
「助けを読んでも来ませんよ。ここに人は来ない。そして、あなたのお連れが眠っているのも確認済みです。関わらせたくなかったから寝かしつけたのでしょう?」
「……」
「最後になにかいいのこすことは?」
ロキはそう言ってミストルティンを構える。そんなロキに真耶は言った。
「なぜルリータを狙わなかった?」
「彼女ですか?あぁそれなら、別に狙っても良かったのですがね、あなたを本気にさせると私とて無事では済まされないからですよ。まぁ、あの小さく白い肌を持つ体を、鞭で叩いて赤く染めあげたいとも思いましたがね。あなたも分かるでしょう?お尻を手で叩いて紅くした後に鞭で叩いて更に紅くさせる楽しみが」
ロキは楽しそうにそんなことを言ってくる。
「確かに、あの小さい面積でもスナップを聞かすことで手で叩くより10倍以上の痛みを与えられ、くっきりと真っ赤な跡を付けられる楽しみは分かるよ。俺もルリータにそんなことしたいなって思ってたからね。でもね、それをしていいのは俺だけだ。そして、それを初めてする時の楽しみを味わうのは俺だ。……あと仲間に手を出させる訳には行かない」
真耶はロキにそう言う。何故か最後の一言が小さかったがそれは気にしないでおこう。とりあえず真耶はロキの意見に対してかなり同意したが少し反対した。
「……今度、あなたと一緒に私の部下を三日三晩痛めつけたいですね」
「そうだな」
「まぁ、それも叶わないんですけどね。さぁ、遊び続けようか」
ロキはそう言ってミストルティンを真耶に向け振り下ろす。すると、魔法陣の中から大量の神器が現れた。その種類は恐らく全種類あるだろう。しかも、それが連続して放たれる。
真耶はその攻撃を見てニヤリと笑った。
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