第68話 クエストの受注期限
真耶は会議を終えてから1度事実に戻った。因みに、この部屋はたまたま空いていた部屋をサタンに言って借りたものだ。真耶はその部屋に入って直ぐに武器の確認をする。
今回持っていく武器は、『理滅王剣リーゾニアス』『悲しみの糸』の2つだ。真耶はこの2つの武器を手に取り出かけようとした。しかし、少し立ち止まってもう1つのアーティファクトを見る。
それは、虹色鉱石と呼ばれるどんな形やどんな素材にも変形する鉱石だ。この鉱石はこっそり真耶が持っていたものだ。
真耶は物理変化で素材を変えることが出来るから使わなかった。だから、余っていたのだ。
真耶はその鉱石を見て少し考えると、その鉱石を持ち物入れの中に入れ、落ちていた石を手に取った。
「うん。やっぱり魔法で作り替えた方がいいな」
真耶はそう言って物理変化を駆使してある道具を作っていく。その道具とは、悲しみの糸を収納し、好きな時に伸ばし瞬時に収縮させることが出来る機械。
要するに、ちょっとどこかで見たことがあるパクリみたいな道具だ。
真耶はその機械を慣れた手つきでサクサク作っていく。魔法で石を鉄に変え、小石を鉄の釘に帰る。ドライバーなどの工具も作りだし組み立てていく。そして、1つ作り追えるともう1つ作り始める。
その時、突如ドアがノックされた。そして、外から声が聞こえてくる。
「真耶様、行きましょう」
「ん?あぁ、すまんな。ちょっと待ってくれ」
「分かりました。では、少し今回の任務の情報を整理したいので中に入ってもよろしいですか?」
「良いよ」
真耶がそう言うと、ルリータが中に入ってきた。その手には書類のような物が握られている。
「……?真耶様、何を作ってらっしゃるのですか?」
「これか?これはちょっとした武器だよ。この中に魔晶石が入っててな、そこに魔力を貯めることが出来るんだよ。そして、その魔力を使って悲しみの糸を飛ばすことが出来るって物さ」
「凄いですね!」
ルリータはその機械を目をキラキラさせながら見つめる。真耶はそんなルリータを見て心がほっこりした。
「あ、そうでした。今回の任務なんですが、どうやらアーティファクトの発見が緊急任務となってるらしいです。私達はその任務に参加しアーティファクトを入手しようかと思います」
「なるほどな。だとしたら、ほかの冒険者の邪魔も入るわけか。さすがに冒険者を殺す訳には行かないな。極力殺しは無しで行くぞ」
「分かりました」
ルリータはそう言って真耶に頭を下げる。真耶はそんなルリータを見て立ち上がるとルリータに近づいた。
そして、完成したシューターを2つ手に取り手首に装着する。さらに、眼帯を目に付け直すと、ドアの前まで行ってルリータに言った。
「よし、行くぞ」
「はい」
2人は仲良く目的地へと向かい始めた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━それから2時間が経過して、2人は大体半分くらいの距離を進んだだろう。
本当は魔界からで70キロ近くの距離があったのだが、真耶はいつもより少し速く走り目的地に向かっていた。そのため2時間でここまで来れたのだ。
そもそも、こんなに急いで走る必要は本当はなかった。だが、ルリータが時間を確認しておらず、そのせいで急がなければ行けなくなったのだ。
まず、会議が終わったのが昼の4時。そして、魔王城を出たのが4時半。ここまでは良い。今回受けようと思っている任務の受注期限が8時までだ。だから、残り1時間半で向かわなければ任務失敗となる。
真耶は時間を見てさらに速さをあげる。残り35キロだが、この速さなら問題ないだろう。ルリータの時間の確認ミスだからルリータが泣きながら謝っているが、お仕置はまたあとだ。とにかく今は進もう。
そんな思いで真耶は走った。そのおかげもあってか、残り35キロを1時間で走ることが出来た。そして、ギルドに受注期限から30分前に到着する。
真耶はギルドの前に来ると呼吸を整えて中に入った。中に入るとそこは想像の5倍以上凄い建物だった。さすがはこの世界一のギルドと言ったところだろう。
中は4階建てとなっておりそれぞれに武器屋や防具屋、飲食店などがある。真耶はそんな店には目もくれず受付へと向かった。
「ようこそ。アクアリアムの街のギルドへ。本日はどんな御用ですか?」
受付のお姉さんがそう聞いてきた。そんな受付のお姉さんに真耶は言う。
「すみません。緊急クエストがあるって聞いて来たんですけど、まだ受注出来ますか?」
「えっと……アーティファクト収集クエストですね。はい。まだ受注出来ますよ。受注するのであれば、ステータスプレートとギルドカードをお見せ下さい」
「あ、はい」
真耶はそう言って自分のステータスプレートとギルドカード、そして存在しないはずのルリータのステータスプレートとギルドカードを見せた。
受付のお姉さんはその2人分のものを見て何も疑問を持つことがない。そして、少し確認だけして返してきた。
「はい。これで受注完了です」
受付のお姉さんはそう言った。
「ありがとう」
真耶はそう言ってルリータと2人で一旦宿を探すことにした。そして、そのためにギルドを出る。すると、下の方に宿が見えた。
「あそこに向かうか」
真耶はそう言ってそこに向かう。そもそも、下にあると聞いて普通の人は疑問に思うだろう。なぜ下にあるのかと言うと、ギルドが上にあるからだ。
そもそも、この街は水の都市だ。そして、ギルドは山の上に作られている。なぜなら、その山の水が神聖な水と言われているから。
ギルドが山の上に作られているからか、その目の前には巨大な湖があった。しかし、いかに巨大な湖と言えど、滝のようになっているし、ギルドの目の前にある湖は1番下の湖になっている。その他は階段のようになっており、いくつかの滝ができるような構造となっている。
真耶はそんな湖を見ながら2段下にある宿に向けて歩き出した。ルリータはその後ろを着いてくる。
2人は何も会話をすることなく宿に向かった。そして、宿に着くと直ぐに部屋を借りる。どうやら世界最大の水の都市と言うだけあって宿も大きい。まだ部屋が空いていたらしい。
真耶は部屋に入ると少しして外に出ようとした。その時ルリータが聞いてくる。
「どこへ向かうのですか?」
「どこって……ご飯食べないの?」
「あ、食べたいです」
「じゃあ、とりあえずギルドで食おうぜ」
真耶はそういうと宿を出てギルドに向かった。
2人はギルドに着くと直ぐに飲食店へと向かう。そして、飲食店に入って空いていた席に座った。
席に着くと、店員さんが話しかけてくる。
「ご注文は?」
「唐揚げ定食2人前で頼む」
「かしこまりました」
真耶の言葉に店員はそう言って奥の厨房へと入って行った。真耶はそれを見届けてルリータに話す。
「お前、絶対今俺に対して疑問があるだろ?」
「はい。沢山あります。まず、私のステータスプレートとギルドカードはどこから出てきたのですか?私、あんなもの作った覚えないですし、作ったら直ぐに捕まえられて拷問ですよ」
「フッ、そういうだろうと思ってな、速攻で作った。とりあえず、設定では魔法使いということにしてある。そして、俺はお前の魔法修行の師匠でお前が弟子だ。そういう細かい設定も大事だからな」
「わ、分かりました……」
ルリータは真耶のその謎のこだわりに頭が真っ白になりながらもそう答えることが出来た。そして、そんなことを言っていると真耶が食事を終える。
「あぁ、ゆっくり食って良いよ。あと、この街の見学とかは明日やろう。たしか、緊急クエストの日にちが明後日だ。それまでに武器や情報を揃えるぞ」
真耶がそう言うと、ルリータは強く頷く。そして、料理を食べ終えて宿に戻り風呂に入り歯を磨いて就寝した。こうして真耶とルリータの一日目が終わった。
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