第66話 仲間の優しさ
真耶は魔界の魔王城はと戻るとすぐに会議室へと呼ばれる。真耶は何も言わずに会議室へと向かった。
真耶が会議室の前に立って扉に手を触れると、何もしてないのに自然と中で何をしているのかが分かる。
これも、記憶が戻ったせいだ。どうやら昔の真耶には共感能力や記憶読心能力があったらしい。その能力が発動するせいで勝手に何をしたのかが分かる。
いや、勝手に発動したわけじゃない。なんせ、これは制御ができるからだ。昔見た漫画では、超能力を制御出来ないと言っている人がいた。
しかし、真耶はそれほど弱くない。万能ではないにしろオンオフの切り替えはできる。だから、わざと発動させて何をしたのか、そして何を言ったのかを見たのだ。
すると、ここで行われたこと、喋ったことが映像として脳の中に流れ込んでくる。
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「ま、真耶って死神かなにかなの?」
「恐怖ですね。あれほどの実力を持った人が敵になっていたと思うと、心臓がいくつあっても足りません」
「それに、彼って結構訳ありみたいだしね」
十二死星がそんなことを言い合っている。サタンはその言葉を聞いて少し暗い顔をした。
「……」
「サタン様は何をお考えなのですか?」
サンドドラゴンがそんなことを聞く。すると、サタンは少し考え喋りだした。
「……お前らにいつまで置くことがある。これはあのお方が言っていたことなんだがな、あのお方は『本物は真耶』と言っていた」
「「「っ!?」」」
「まさかそれって……!」
「そんなことあるの!?」
「いや、ありえないことは無い。あのお方がそう言っているのだ。恐らく真耶自身も今までは知らなかったのだろう。あのお方の説明によれば、『魔法を使ったことがある』としか覚えてなかったらしいからな。だから、ずっともう1つの人格の方を本体と思って来たのだ。だが、本当はそうじゃなかった。それが今やっと分かったよ」
サタンはそう言って皆を見る。すると、十二死星は全員驚き言葉を失った。そして、全員モニター映る真耶の姿を見る。
「……それで結局さ、真耶は敵なの?」
「それが一番問題ですね。もし敵なのであれば戦わざるを得ません」
「だが、あんなやつを倒せるのか?言っちゃ悪いが、軽くサタン様の実力を超えてんだろ」
「そうだな。だから、恐らく普通に戦っても勝ち目はないだろう」
「じゃあもし敵対した時は私達は死ぬだけってことですか!?」
十二死星はその言葉を聞いた瞬間顔をひきつらせて青ざめさせる。しかし、サタンは言った。
「……いや、大丈夫だ。敵対はしない。我はアイツを信じているからな。逆に、我は真耶が心を壊されたり、落ち込んだりしてないかの方が心配だ。あのお方が、『私達のせいであの子に悲しい思いをさせちゃった。多分気づいているんだろうけど、それでも悲しい思いをさせちゃったから……だから、これから会う人が皆優しい人なら良いのにな』と言っていた。多分アイツは寂しがり屋なんだ。我はこれまでのアイツを調べたが、やはりアイツには心の休養というものが必要だ。だから皆にも、アイツに安らぎを与えてやってはくれないか?敵対するかしないかとか関係なしに、アイツに心の温かさを教えてはくれないか?」
十二死星の全員はその言葉を聞いて全員ハッとする。そして、少し恥ずかしそうにしながら強く頷いた。
「そ、そ、それでは、わ、私達は何をしたら良いのですか?」
「も、もしかしてエッチなこととか!?」
「ふぇ!?わ、私、む、胸とか全然無いですよ……」
十二死星の女性陣が全員そんなことを言い始めた。そして、頬をあからめる。すると、サタンは言った。
「馬鹿か?お前達そんなにエロいことがしたいのなら今すぐここで裸になれ」
その瞬間十二死星の男性陣はニヤリと笑った。そして、逆に女性陣が全員胸やお尻、股の部分を隠すような仕草をして顔を真っ赤にしながら怒った。
そしてそこで映像は途切れる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……真耶はその映像を見て自然とえみがこぼれてしまった。そして、ほっと胸をなでおろして安心する。もし敵だったら、もし攻撃してきたら、もしアイツらが裏切ったら、そんな考えで疑心暗鬼になっていた自分を殴り飛ばしながら花火で打ち上げたいと思った。
そして、ドアノブを握る手に力を込めて扉を開く。その瞬間に真耶は何故か危険を察知した。
そして、一瞬で体をそらす。すると、さっきまで真耶の上半身があった場所に高圧力で圧縮されたエネルギー弾が飛んできた。
そのエネルギー弾は真耶の上を通り抜けて後ろの壁を壊す。真耶はその光景を体を反らしながら見つめた。そして、体を起こす。すると、中の様子が見えた。
なんと、中はぐちゃぐちゃだった。会議していたのかと思うほどぐちゃぐちゃだった。
議題と思われる紙は散乱し、壁はズタボロ。中の人は皆戦闘形態となり魔法を使用している。そして全員剣やら杖やらの武器を構えて殺気を放っている。
「……お前らなにしてんの?」
「「「喧嘩してんのよ!」」」
真耶がそう言うと、全員声を揃えてそんなことを言ってきた。
「喧嘩か……面白そうだな。俺も混ぜてくれよ」
真耶は楽しそうに笑ってそんなことを言う。すると、全員ニヤリと笑って言った。
「「「フッ、ごめんなさい!」」」
そして全員真耶の前に飛び出してきて土下座をする。
「は?おいおい、それはひでぇだろ。混ぜてくれよ〜」
「許してください!真耶様と戦っては私達の命が無限に必要となってしまいます!」
「そ、そ、それに、エッチな罰を受けたくない、で、です!」
十二死星はそんなことを次々に言ってくる。真耶はその光景を見て何故か楽しくなり笑ってしまった。
その時、目の前にサタンがいることに気がつく。どうやらサタンは土下座をせずに楽しんでいる真耶を見て笑っていたらしい。
「おい、これお前が考えたのか?」
真耶はそう聞く。なんせ、もしかしたらさっきの会話の続きでこうなったのかもしれないからだ。しかし、答えは予想していたものとは違った。
「いや、さっきまで真面目な会議をしていたのだがな、ある一言で本気の喧嘩になってしまってな。それでこうなった」
サタンはそう言う。真耶はそれを聞いて呆れてしまった。そして、さっきの会話を覗き見たことを秘密にすることにした。
「……はぁ、お前らなぁ、そんな姿をほかのみんなが見たら幻滅するだろ。しっかりしろよ。あと、真面目に会議しろ」
真耶はそう言って中に入って扉を閉める。そして、あることに気がつく。
「あれ?なんでこの席だけ違うの?何で?」
「あぁ、それか?それはお前の席だよ。他のみんなも違うだろ?」
「確かに。よく見ると違うな」
「他のみんなは雰囲気が似てるがお前は元々魔界に住んでたわけじゃないからオーラとか違うんだよ。だから、オーラに合わせた色にするとそうなったわけだ」
アーサーはそんなことを言う。真耶はその言葉を聞いて納得した。そして、椅子に座る。
「ま、何でもいいけど早く会議をしようぜ」
「そうだな。お前らも早く座れ」
サタンはそう言う。そして、会議は始まった。
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