第50話 魔界と悪魔
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━例えば、未来から来たと言われたら人は信じるだろうか?いいや、信じない。なんせ、人はそういう経験をしたことがないから。
そして、逆に経験したことある人でも認めたり信じたりはしない。なんせ、認めてしまえば、自分は他の人とは違った存在で、おかしいと認めてしまうことになるから。
人は人と違ったものをするのを好む。だが、人と違うと言われるのを嫌う。これが人の持つ集団的自衛というものなのかもしれない。違うかもしれないがな。
現に今も、こうして自分と違う存在を見た時、人はその人を嫌い遠ざけようとしている。そう、今モルドレッド達は目の前に現れた真耶と名乗る未来人と戦っていた。
「未来人って……そんなの信じるわけないでしょ!」
「信じる信じないの問題では無い。それに、正確に言えば別の世界から来た未来人だ。だから、単に未来から来た訳では無い。その証拠に、今こうして2人のモルドレッドが遭遇しても何も起こらないだろ?」
「確かにな。だが、その話が本当だとして、何故今こうして俺らの前にいる?」
「ま、やりたかったことは別にあるんだけどね、まだその時ではなかったみたいだ。とりあえず君達に言っておくことは1つ。今のままだと世界は崩壊するよ。それじゃあね」
そう言って真耶は光の粒子になって消えた。その後にもう1人のモルドレッドとアーサーも光の粒子となって消えた。モルドレッド達はその姿をただ呆然と見つめるだけだった。
一体今のはなんだったのか?疑問は残るばかりだ。だが、今やることは1つ。真耶を闇の中から救い出すということだ。それに、今のままだと世界は崩壊すると言っていた。それが本当かどうかは分からないが、信じてやるしかない。
「よし、やろう」
「そうだな。そのためには、この道をどっちに行くかだな」
「……ねぇ、みんな聞いて。私作戦があるの」
モルドレッドはそう言って振り返ると、アーサー達に作戦を伝えた。そして、全員頷くと不敵な笑みを浮かべる。そして、モルドレッド達は真耶が進んだ方向とは本体の方向へと進んだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━そして、真耶は……
「……ここが魔王城か……」
遂に魔王城の前に来ていた。ここまでの道中何度も罵声をあびせられたり、怒鳴られたり、卵のような食べ物を投げつけられたり、煽られたりしたが、真耶へ全て無視してきた。
しかし、途中でフェアリルに害を与えたものがいたため、流石の真耶も堪忍袋の緒が切れたらしい。
殺しそうになったので12死星が全力でとめた。そして、そのまま何とか拘束して真耶を魔王城の前まで連行してくる。
「さぁ行け」
12死星の一人がそう言って真耶を押す。しかし、真耶は自分の好きなペースで歩きたい。だから、中々動こうとしなかった。
「皆、すぐに会議だ。来てくれ」
サタンはそう言って1人だけどこかに行ってしまう。そして、12死星の人たちも全員慌ただしくどこかへ行ってしまう。真耶は、その後を追った。
それから魔王城の中を歩いていると、全員ある部屋へと入って行った。真耶もその部屋に入ろうとする。そして、ドアノブに手をかけたところで、ある人物から声をかけられた。
それは、サタンでも12死星でもないその魔王城に住む悪魔だ。かなり強いみたいだから、上級悪魔だろう。
「なぁ、お前強そうだな。今度相手をしてくれよ」
「やめておけ。死ぬぞ」
「へっ、俺はあの12死星とも渡り合える。そう簡単にはやられないぜ」
「俺をアイツらと同レベルだと思ってるのか?無礼だな。俺はアイツらより何倍も強い。お前みたいなやつが俺に勝てるとは思えん」
真耶はそう言って睨み、殺気を飛ばした。すると、その上級悪魔も負けじと殺気を飛ばしてくる。
かなり強い殺気だ。普通の人なら慌てて逃げ惑うくらいの殺気だ。だが、どれだけこの世界で強いと言われても、俺と比べたらまだ赤子のようだ。
真耶は、その上級悪魔を見て少しため息を着くと、殺気をさらに放つ。そして、その殺気を具現化させ、人の形へとした。
「っ!?」
「なんだそれ!?」
「お前も強いと言うならここまでできるようにしておけ。それでやっと、俺の足元にしがみついたくらいだ。それとな、お前も上級悪魔なら相手の力量くらい測れるようになっておけ」
真耶はそう言って扉を開き、部屋の中へと入っていく。上級悪魔はそんな真耶をただ呆然と眺めるだけだった。しかし、その中に少しだけ真耶への怒りが混じっていた。
真耶はそんな怒りに気づくことなく扉を閉める。そして、部屋の中を見た。すると、そこには巨大な楕円形のテーブルがあり、それを囲むように等間隔に間を開けてサタンと12死星が座っている。
「遅かったな。何をしていた?」
「たった今変な悪魔に声をかけられてな。戦おうと言われたから断ってきた」
「ったく、あいつらはなんであんなに……すまんな、真耶」
サタンは少し頭を抱えながら真耶に謝罪する。そして、1度だけため息を着くと話を始めた。
「それでは、会議を始める。各々現在の状況を報告してくれ」
サタンがそう言うと、真耶の隣から話し始めた。
「まず俺だな。現在領域を管理しているが、特に進展は無い。壊されたとか侵入者がいるとかはな。以上」
「次は私だね。私も同じよ。何も問題はなかったわ」
「次は小生か……小生も問題は無い」
「わっちもだ」
「僕も」
「妾も」
「吾輩も」
「俺様もだ」
「わ、私……も、で、です……!」
「俺もッスね」
「……」
「俺は真耶を見つけた。それ以外は無い」
12死星は全員そう言う。そして、真耶へと回ってきた。
「俺も言うのか?」
「まぁ、何かあるのならな」
「分かった。まず、この世界は神々によって地脈に干渉されている。もしかすると、かつて龍神族であるクロエが住んでいた龍脈の大地にある龍脈まで干渉されているかもしれん。まぁ、まだこの世界に散らばっている龍脈には干渉してないがな。あと、神々には妖穴がある。それと、神々は理ごと殺せば殺せる。また、神々は龍穴を斬る攻撃も通用する。これぐらいだ」
真耶がそう言うと、サタン達は悩み出してしまった。理解できなかったのか、理解出来て悩んでいるのか分からない。もっと簡単に言うべきだったか。
真耶がそう考えていると、4つ隣の女の子が話し出した。
「で、でも、龍脈に干渉するなんて私達でも出来なくないですか?も、もし干渉されてたら、ど、どうにもならないですよ」
「何?お前ら龍脈に干渉出来ないのか?」
真耶は思わずそう聞いてしまう。すると、サタンは言ってきた。
「龍脈は愚か、地脈に干渉することも出来ないぞ。なんせ、地脈に干渉なんてすれば、魔力が体に流れ込んできて魔力回路が焼き付いてしまうからな」
「そうか、じゃあ、この中で龍脈まで干渉できるのは俺だけか」
真耶は平然とそんなことを言う。すると、それに少し離れた場所に座っている男が食いついた。
「嘘は行けませんよ。小生らが何年かかっても出来なかったのですから。新参者に出来るとは思えませんね」
男のその一言で、その場の空気がガラッと変わる。そして、真耶に対する批判モードに入ったのだった。
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