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モブオタクの異世界戦記Re  作者: 五三竜
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第49話 魔界の住民

「お前ら、やってくれたな」


 真耶のその一言でその場にいた全員の体が固まった。そして、口を動かすことすらもできなくなる。おそらくだが、今ここに誰か1人でも侵入してくる者がいれば、その人はたちまち殺されるだろう。


 それくらい重たく強烈な殺気を真耶が放っていた。


「死ぬ覚悟はできてるよな?」


 真耶はそう言ってリーゾニアスを抜く。そして、なぜか眼帯をつけた。


『真耶!本気で殺す気なの⁉︎』


 そう、真耶は本気でサタン達を殺すつもりなんだ。知っている人は知っているし、知らない人は全く知らないのだが、真耶は本気で人を殺す時は眼帯をわざとつけて能力を隠して戦う。


 この戦い方は、真耶がこの状況になって身につけた戦い方だ。恐らく、ロキやオーディンなどのアースガルズの出現や、モルドレッドの記憶喪失など、様々なトラブルが真耶の心を大きくねじまげ、こういった暗殺に近い戦い方をするようになったのだ。


 そして、現に今もサタン達を暗殺しようとしている。まぁ、バレてるので暗殺では無いがな。


 それでも、真耶がこの格好になったのはかなりやばいということだ。


「……俺の仲間を……」


 真耶は小さくそう呟く。そして、少しだけ……いや、こんな顔をしているのを見たことがないと思えるほど悲しい顔をして剣を大きく振り上げる。


「俺はさ、もう心を傷つけたくないんだ。悲しいことは嫌なんだ。ずっと……ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと!そう!ずっとだ!ずっと我慢してきた!仲間が死んでも愛する人が記憶喪失になっても、ずっと我慢してきた!もう俺はうんざりなんだよ!日本にいた時から……いや、もっと前だ。そうだな、神が俺の邪魔をしてきた時からずっと我慢してきた。もう、やめようぜ。悲しい思いをする前にお前らを殺して、全ての世界の人を俺は殺すよ。そしたら、悲しみの無い、感情も無い、何も無い真っ白な世界が作れる。理想郷だろ?」


 真耶ほそう言って剣を振り下ろそうとする。しかし、何故か腕が動かない。どうやら精神世界でクロエが真耶の魂を拘束しているみたいだ。そのおかげで真耶の動きを止めることが出来ている。


『……やめろ』


『やめない!ここでやめたら、みんな殺されちゃう!』


『この世界の奴らなんてみんなゴミだ。運だけで成功したクズだ。他人の気持ちなど素人もしないカスだ。運も実力のうちらしいがな、実力もないやつが運だけで成功して、それを実力だと思って勘違いしている。そんな馬鹿でゴミでクズでカスでアホな奴らだけだ。そんな奴らは世界に必要ない』


 真耶は無慈悲な声でそう言う。そして、クロエの方を一切振り向くことなく無理やり動き出した。


 しかし、再び真耶は動きを止める。なぜなら、現実世界でフェアリルが真耶の体を止めたからだ。だから、真耶は動きを止める。


「……お前も……俺を助けてくれるのか……」


 真耶はそう呟いて剣をさやに収める。そして、何も言わずに殺気を押さえ込んだ。真耶は、静かにサタンの横を通り過ぎる。その瞬間、とても小さな声で呟いた。


「俺は、仲間をこんな目に遭わせるやつは許さない。だが、今回は特別に許してやるよ。あとな、これからはお前らは仲間となる。俺はもう失うのは嫌だからな。助けてやるよ。絶対に」


 真耶はそう言ってサタンの横を通り抜けていく。そして、クロエの力を出して女性の体へと戻った。


「……とんでもないやつを仲間に入れたな」


「……だが、この一手で神々を倒すことが出来る」


「……本当に強いんですかね?あれかもしんないっすよ。見せかけだけの強さとかそういうの」


「ま、これからに期待だな」


 サタン達はそう言って真耶の向かった方向を見つめた。


 そして真耶は、少しだけ目を瞑ってゆっくりと開く。その目には時眼クロニクルアイが浮かんでいる。真耶はその目を浮かべてその建物の外に出た。


 すると、そこは街だった。そして、目の前に大きく魔王城がそびえ立っている。どうやらこの牢屋みたいなところは魔王城とは別の場所にあるらしい。


「……フェアリル、少し街を回ろう」


「……」


 真耶が声をかけても返事は帰ってこない。どうやら完全に心を壊されてしまい会話すら出来なくなっているようだ。


 もしかしたらだが、真耶のことも忘れているのかもしれない。さっき真耶を止めたのは、無意識に真耶を思う気持ちが体を動かしたのかもしれない。


「思いの力か。記憶の断片メモリアルフラグメントを思い起こさせるしかないか。モルドレッドと同じか……」


 真耶はそう呟いて街を回る。フェアリルは精霊族のためどこかで変なやつらに絡まれる可能性がある。真耶はそれを考慮してフェアリルを抱っこした状態で回った。


「おい、お前人間だな。人間がここで何をしている?」


 突如、そんなことを言ってくるやつがいた。見た感じ下級悪魔だ。めっちゃ弱そうだな。グーパンで倒せそうだ。


 真耶はそんなことを頭の中で思い浮かべてニヤニヤと笑った。そして、無視して歩き出す。すると、後ろから何かを投げてきた。


 真耶はそれを見ることなく避けると振り返ってその悪魔を見る。何故かブチギレている。手に持っているものを見ると、ナイフを持っていた。恐らくさっき投げたのも同じものだろう。


「おいおい、やめておけよ。死にたくなかったらすぐにどっか行け」


「お?お前言うじゃねぇか。人間のくせに生意気だぞ!”ダークナイフ”」


 悪魔はいきなり魔法を使って攻撃してくる。しかし、その威力も精度も弱い。12死星とは比べ物にならない。ましてや、サタンと比べでもしたらサタンに申し訳ない。


 真耶はそのナイフを人差し指と中指でつまんで止める。そして、足元に投げて突き刺した。


「弱いな。これが魔界に住む者の力か。俺に比べたら天と地の差がある」


「何!?言ってくれるな!じゃあお前の力を見せてみろよ!」


「そうか、後悔するなよ。”暗黒星雲ダークネビュラ”」


 真耶はそう言って黒い玉を作り出した。それは、小さいながらもとてつもなく不穏な雰囲気を醸し出している。さらに、その黒い玉は黒い雷を放っていた。


「っ!?な、なんだよそれ……!?」


「何って?全てを飲み込む黒い星だよ。ブラックホールに近い物質とでも思ってくれたら良い」


 真耶はそう言ってその玉を下級悪魔に向けた。そして、その玉を放とうとする。しかし、途中でサタンが来た。


「おいおい、早速喧嘩するなよな」


「これは喧嘩ではないさ。こいつらに俺の恐ろしさを教えてあげようとしているんだ」


「それをやめろ。まず、そんなものをここで放てばこの街がどうなるか分からないだろ」


「いや、これは単体攻撃だ。触れた瞬間その1人だけを黒い空間に飛ばす。時空転移魔法ってところだな」


 真耶はそう言って笑う。しかし、サタンは少しだけ怒ったような顔をして言った。


「やめろ」


「そうか、なら、こいつらに俺を人間だからといって舐めるなと言っといてもらおうか。どうやらこいつらは礼儀を知らないみたいだからな」


「分かった。だからその手をおろせ」


 真耶はそう言われると素直にその手を下ろした。そして、黒い玉を消す。


「……はぁ、街を回るのは後にしろ。先に魔王城に行くぞ」


 サタンはそう言って魔王城を見る。真耶は魔王城のある方向に向かって歩き出した。サタンも真耶の後ろからついて行った。

読んでいただきありがとうございます。

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