第41話 2つの道
真耶は静寂に包まれた空間に立ち尽くしていた。ついさっきまでアルテミスが真耶を襲ってきていたのに、今ではその場には誰もいない。
「……」
真耶はそんな中何も言わずに街に戻ろうとする。そして、ついでにクエスト達成のために必要なアークナイトの残していった何かを探す。
そして、たまたまアークナイトが落とした剣の破片があった。これは、真耶によって欠けた剣の破片だろう。真耶はその破片をありがたく貰って行った。
そして、街へと戻る。やはり、そこまでの道は女の子1人で来れるような楽な道のりでは無い。そんな険しい道を進んで真耶は街へと戻った。
そして、ギルドへと向かう。ギルドに着くと!すぐに受付の人と話して依頼の達成を報告する。
「はい。分かりました。依頼達成ですね」
受付の人はそう言って真耶に報酬のお金を用意する。真耶はそれを受け取ると、収納魔法ですぐに収納してギルドを出た。
「……よし、次の街に行くか」
そう呟いて街の入口へと向かう。当然だが、気配と魔力は完全に消している。そんな状況で真耶は次の街を目指した。次に行く街はメテオの街だ。
「……次にあった時は確実に殺す。待ってろよ」
真耶はそう言って街を出た。アーサー達が街に到着したのは、真耶が出発してから3時間後のことだった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━真耶が出発してから4時間後、真耶は行き先を変えた。なぜなら、メテオの街に行くための道が無くなっているからだ。
前回はここを通る時に何も無かったはずなのだが、何故か溶岩が流れており通れなくなっている。
真耶はその溶岩を見て立ち止まった。そして、優眼を発動してその溶岩の中に手を入れる。すると、一瞬で手が熔けた。
「本物か……」
真耶は自分の手を再構築しながらそう呟く。そして、目の前の溶岩を見つめた。さらに、溶岩の川が流れている対岸を見つめる。
行こうと思えば行けないような距離では無い。この世界の冒険者で、かなりの上位層だったら飛び越えられるのではないだろうか。
真耶はそんなことを思った。そして、飛び越えようとするが、その瞬間少し我に返る。
「……」
そして、飛び越えるのを止めた。考えてみれば飛び越えれることを知っている人がいれば誰でも飛び越えようとする。しかし、そんな安易なものを神々が作るだろうか?そんなアホなことはないと思う。
だとしたら、恐らくここには何かしらの壁や障壁があるはずだ。だから、下手に飛び超えれば危険だ。
真耶はそう思いながら地面から石を1つ持ち上げた。そして、その石を対岸に向かって投げる。すると、その石は溶岩の川の真ん中で何かにぶつかり止まった。
「……やっぱりな。どうやら他の道を探す必要があるみたいだ」
真耶はそう呟いて周りを見る。すると、そこには2つの道があった。右は森だ。そうとしか言えないくらい森だ。道と呼べるのかも分からないくらいとんでもない荒れ狂った道だ。
また、左は普通の道だ。だが、とんでもないほど嫌な予感がする。どちらにせよきつい道になりそうだ。
「……左に行くか」
真耶はそう呟いて安全な道へと向かって行った。しかし、真耶はその行動で、全力で間違えた方向へと走って行ってしまった。
「……え?」
真耶はその光景を目の当たりにして言葉を失う。そして、直ぐに戻ろうとした。しかし、何故か戻れない。既にその空間に出口はなくなっていた。
真耶はそんな状況になって直ぐに理解しようと思考をめぐらす。しかし、この異様な光景にやはり頭が混乱する。
だが、何故ここまで真耶が混乱するのか、それににはいくつか理由がある。まず、さっきまで暗かった空が明るくなっているのだ。曇って全く見えなかった青空が見え、太陽の光が照り返し、久しぶりに暑いと感じる。
そして、もう1つは今目の前に見えているものにある。なんと、今真耶の目の前に広がっているのは広大な砂漠だったのだ。
ついさっきまで溶岩とか荒れ狂った大地とかそんな感じのものしか無かったのにいきなり砂漠が現れた。さすがの真耶もその異常な状況に言葉を失うのだ。
だが、そううかうかしていられない。早く状況を理解して対策を打たなければならない。なぜなら、こんなふうに異常事態が起こるということは、もしかしたら近くに敵がいるかもしれないからだ。だから、一瞬でも隙を作れば殺される可能性が高い。
「さて、どうするかな。転移眼で転移するか?いや、出来なさそうだな」
仕方なく真耶は歩き始めた。いかに広大な砂漠と言えど、いずれ終わりは来るはずだ。そんな希望を持って歩き始めた。そして、その10分後に絶望する。
真耶が歩き始めてから10分が経過した頃、少し遠くに人影が見えてきた。その人影はかなりゆっくりな速さで歩いており、すぐに追いつけそうだ。
「おい、お前、ここで何をしている?」
真耶はその人影を追いかけ追いつくと、そう問いかける。すると、その人影が男だと分かった。そして、その男は真耶の声を聞いて振り返ると、げっそりとした表情で答えた。
「え?そりゃあ見てわかるだろ。ずっと歩いてんだよ。いつになっても終わりが来ないからずっと歩き続けてるんだよ」
男は疲れた声でそう言った。
「まさか、あんちゃん助けに来てくれたのか!?俺をここから出してくれるのか!?」
「いや、そういう訳では無い。そもそも、俺はこの状況を理解出来ていない。一体ここはどこだ?」
「チッ!あんちゃんも閉じ込められたのかよ。教えてやるよ。ここは魔王軍の幹部が作り出した砂漠の牢獄だよ。1年前に神々が世界を壊し始めただろ?それに反発した魔王軍が世界のあちこちにこういう魔王軍の領域を作り出したんだよ」
男はそう言ってその場に座り込んでしまった。そして、全てを投げ出したかのように大の字になって地面に寝転がる。
「あー!もうやめだ!もうここからは出られねぇんだ!諦めだ!」
「なるほどな。こっからは出られないわけか……ループしてる訳じゃないんだな?」
「最初はそれを疑ったんだよ!でもな!どれだけ歩いても足跡が残らねぇんだよ!後ろには大量の足跡が残ってんのに前には無いんだよ!」
男はそう言って持っていた荷物を投げ飛ばす。その荷物の中にはかなり多くのアイテムが入っていた。
「ん?お前こんなに荷物持って、行商人か何かか?」
「そうだよ!俺の名前はカネンだ!行商人やってんだよ!たまたまこの砂漠地帯に入り込んじまって、もう3日は出られてねぇんだよ!水ももうないし、食料ももうねぇ!俺はここで死ぬんだ!」
「食料と水が無いのか?」
「あぁ!そうだよ!」
「そうか、ならこれをやるよ。ここで会ったのも何かの縁だ」
真耶はそう言って水と食料を作り出してカネンに渡す。すると、カネンはとても嬉しそうな顔をしてその水と食料に飛びついた。
「ありがてぇ!あんちゃん良い奴だな!」
「フッ、そうでも無いさ。俺は悪い奴だよ」
「どういう事だ?何かあったのか?」
「ちょっとしたことさ。少しのすれ違いで仲間を敵に回した。それに、何人も人を殺したからな」
「あんちゃん、犯罪者なのか?」
「……どうなんだろうな?この世界では犯罪者なんだろうな。あっちでは処刑人って呼ばれてたがな」
「……あんちゃんちょっと話してみな。話せば楽になるかもだぜ」
カネンはそう言って微笑んだ。
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