表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブオタクの異世界戦記Re  作者: 五三竜
40/195

第39話 アークナイト

 真耶達はそれから少しだけ歩き回り、ある開けた場所に出た。そこだけは何故か木々が生えていない。この村に来る時もあまり木はなかったが、ここはそれ以上にないのだ。


 さらに言うなら、アークナイトが現れるというのは森の中だと言う。そして、確かに真耶達が入ってきたのは森だ。だが、ここだけ森じゃない。まるで自然の闘技場にも思えた。


 真耶がそんなことを思っていると、前方から人影が見える。その人影はだんだんと真耶のいる方に近づいて来ていて、大きくなっていく。


 さらに、ガシャガシャと音が聞こえてきた。だいたいここら辺で誰か分かるだろう。


 そう、真耶達の前に現れたのは、アークナイトだ。アークナイトは着ている鎧を重たそうに動かしながら剣を構える。


 それを見た真耶は少し疑問に思った。何故この騎士は危険視されているのだろうかと。闇堕ちの騎士は目の前の騎士とは違って鎧を着こなしていた。しかし、目の前の騎士は鎧どころか剣すらもまともに使えなさそうだ。


 こんな状態では戦うことは愚か、あんなことをするのは不可能に近い。それに、剣なんて振れるのかと思うほど腕がプルプルしている。


「ふざけてんのか?」


「……」


「まぁいい。速攻で終わらせる。”紺青こんじょう激流閃げきりゅうせん”」


 真耶は一瞬で距離を詰めて首元に向かって刃を振るった。しかし、その刃は何故か当たらない。不思議な力で防がれてしまったのだ。


 よく見ると、見えにくい壁がある。その壁は淡い紫色で、暗い場所だとほとんど見えないだろう。その壁は光などの透過するものすらも防いでいるようだ。水も弾いている。


「なるほど、通りであいつの周りだけ暗いわけか。なら、壊れる威力で攻撃する。”疾風しっぷう裂空斬れっくうざん”」


 真耶は凄まじい速さで剣を振るった。すると、空を切る斬撃が騎士を襲う。


 どちらかと言えば威力というより鋭さの方が重視されているが、それでも壁を切り裂くのには十分だろう。その斬撃はいとも簡単に壁を切り裂いた。


「っ!?」


 アークナイトはそれを見て目を丸くする。そして、何故か誇らしさと懐かしさ、嬉しさ等の明るいオーラを溢れだしていた。


「……?」


 真耶はそのことを疑問に思いながらも突っ込む。そして、間合いに入り込み首元を狙った。しかし、突如として体が動かなくなる。


「っ!?」


「ふふふ、ごめんなさいね。こんなことになって。私が会いたかっただけなの」


 アークナイトはそんなことを真耶の耳元で囁く。真耶はその言葉を聞いて直ぐに神眼を使った。そして、鎧の中を見る。すると、見えてきたのは夢の中で見た自分の母親だった。


「っ!?ペルセポネ!?」


「しー!ダメよ!言ったら!バレたらダメなの!ま、そういうことだから1つ助言をさずけるわ」


「いや、どういう事だよ。どうしてそんな流れになった?」


 真耶は少し呆れながらそう呟く。すると、ペルセポネは少し楽しそうに笑いながら言ってきた。


「何故って?ふふふ、自分で考えないとボケるわよ。私、その歳でボケてるあなたなんか見たくないわ」


 そう言ってニヤニヤと笑う。真耶はそんなペルセポネを見て少し不思議な気持ちになった。そして、直ぐに体を動かそうとするが、全く動く気配がない。


 そうこうしていると、ペルセポネが何かを言い始めた。真耶はその言葉を聞く。


「良い?まず見えてるものが全てじゃないわよ。きちんと目を凝らして、物事の深淵を見据えないとダメよ。それとね、それとね、絶対に目で語る戦いを忘れちゃダメよ。それを忘れたらあなたがあなたじゃなくなっちゃうわ」


「は?何だよそれ?」


 真耶は思わずそう聞いてしまう。すると、ペルセポネはからかうような笑みを浮かべて真耶の体に触れた。そして、何故か懐かしさでも感じたかのような声で言う。


「こんなに強くなって……固くてたくましくて、大きくて……」


「卑猥な言い方やめろ。卑猥な女だな」


「あ!酷い!でも、なんだかあなたにそう言われると胸がキュンってなるわ」


 そんなことを言って照れるような素振りを見せる。その姿を見て真耶は少し軽蔑してしまった。だが、直ぐに微笑んで言う。


「フッ、俺はロリコンだがドMも好きだぞ」


「キャッ、私そんなふうに育てちゃったの!?そんな……そんな……!」


「っ!?待て!今育てたって……」


「それ以上はダメよ。もっとあなたがこの世界について知ってからもう一度聞きに来る事ね。それじゃあ私からの助言は終わりよ。多分だけど前にあなたに同じこと言ったのはハデスよ。ダーリンったら、私と同じこと考えてるんだから♡」


 そんなことを言いながら顔を赤くするのが鎧の下で見えた。そして、時空に扉を開ける。


「それじゃあね。私はあなたもケイオスもどちらも愛してるわよ。それはダーリンも一緒。また会えたらいいわね」


 そう言って扉の中へと入ってどこかへ消えていった。


「あ、待って、最後に”恋人と友達は大切にするのよ”って言うの忘れてたわ。気をつけるのよ。あとね、あとね、たとえ1人になっても、疑心暗鬼になっても、世界中の人を殺したくなっても、私達はずっとあなたを愛してるわよ」


 ペルセポネはそう言って本当に扉の向こうへと消えていった。その瞬間、真耶を拘束していた何かが外れる。そして、やっと動けるようになった。


「やっとか。ったく、一体なんだったんだよ……」


 真耶はそんなことを呟きながらペルセポネがいなくなった場所を見つめた。そこには、さっきまで扉が空いていたとは思えないほど綺麗に時空が閉ざされている。これでは追跡は不可能だろう。


 そんなことを調べていると、後ろからディアーナが話しかけてきた。


「あの……何が起こったの?」


「ん?あぁ、悪いね。少し拘束されてね。でも、あいつはいなくなったよ。これで一応依頼内容は達成した」


 真耶はそう言って剣を背中に収めた。そして、依頼内容が書いてある紙をもう一度確認する。


 しかし、その時ちらっとディアーナの顔が見えた。ディアーナは何故か不機嫌な顔をしている。恐らく、仇を撃てなかったことが気に食わないのだろう。


「……はぁ、しゃーないな。少し君の母親のことを調べさせてくれ。何か手がかりがあるかもしれない」


 真耶は思わずそんなことを言ってしまう。特段調べることなどない。それに、調べてもどうせ何も出てきやしない。それがわかっているのに何故かそんなことを言った。


 そして、家へと戻り調べ始める。しかし、やはり何も出てこない。よく見ればほかに家があるが、そこにも無い。


「……」


 真耶はその状況に疑問に思うことなく納得して探していた。しかし、その時あることを思い出す。それは、ペルセポネとハデスが言っていたこと。


 この2人はどちらも同じことを言っていた。それは、『目で見えている世界が全てでは無い』ということだ。ペルセポネは深淵を見据えろと言っていた。もしかしたらまだ真耶飲みえていない部分があるのかもしれない。だとしたら、もっと探すべきだ。


 だが、そもそも深淵というのがあまり分からない。もっと深く読めということかもしれない。もしかしたら、まだ真耶の気づいてない何かがあるのかもしれない。


「……おかしなところか……いや、いくつかあるな。まず、ペルセポネは女性なのにディアーナのお母さん達は犯されている。別人がやったか偽装したかだよな。あと、ここまでの道を女の子1人で来たってのがおかしい。普通に無理だと思うがな。だが、そうなってくると答えが1つしかないぞ」


 真耶は小さな声でそう呟いた。そして、無邪気な顔でこっちを見つめるディアーナの顔を見る。


 やはり、その笑顔を見るとこの子が怪しいなんて思えなくなる。しかし、その時真耶は気がついた。ディアーナが怪しいという決定的な証拠に。


「……なぁ、ディアーナ。お前はどうやって俺のところまで来た?あの道を進むのはかなり厳しいんじゃないのか?それに、なんでアークナイトが女性だったのにお前のお母さんは犯されてるんだ?そして、なんで俺って分かった?考えてみればおかしなことだ。俺はあの時気配も何もかもを消していた。また、変えていた。それにもかかわらずお前は俺だと分かった。何でだ?それに、ディアーナって……それ本名か?」


 真耶はディアーナに対して怒涛の質問攻めをした。すると、ディアーナは困ったような動きをして真耶に言う。


「ど、どうしたの?何か言われたの?」


 真耶はそのディアーナの言葉を聞いて少し考えると、魔法を気づかれないように一瞬で描き言った。


「いや、何でもない。そんなはずないからな。悪かったな、疑って」


 真耶はそう言ってディアーナに近寄る。そして、頭を撫でた。その時、突如ディアーナはどこからかナイフを取りだし真耶の首元に突き刺した。

読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ