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モブオタクの異世界戦記Re  作者: 五三竜
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第29話 2人のアサシン

 それから真耶達は歩き続けた。目的地は前回同様で、ルーレイトの街だ。そこに行けばもしかしたらクロバがいるかもしれない。そんな希望を持ってその街へと向かう。


「……あ、そう言えばヘファイストスのお仕置の、”お尻1万叩き”やるの忘れてたな。どっかのタイミングでしよう」


「っ!?そ、そんなこさ物あったっけ?」


 真耶の言葉を聞いてヘファイストスが慌てて隠そうとする。しかし、真耶は忘れたりしない。これでも王なのだから。


「あのなぁ、俺の記憶力舐めるなよ」


 真耶は呆れた感じでそう言った。そして、少しため息を着くと、ヘファイストスに言う。


「チャンスをくれてやる。今から3秒以内に俺に魔法を放て。出ないとお仕置を2倍にする」


「え?なんで?」


「3……」


「え?ちょっ……」


「2……」


「なんで?」


「1……0」


 その時、真耶がヘファイストスの体を抱き抱えてその場から飛んだ。忘れていたが、ヘファイストスが服を着ていなかったから抱き抱えたのだが……。


 まぁ、そんなことはどうでもいい。それより、さっきまで真耶がいたところに何かが飛んできたのだ。アーサーはその何かを跳ね返す。すると、そのなにかの正体が分かった。


 なんと、飛んできたのはナイフだった。どうやら誰かが真耶に向かってナイフを投げてきたらしい。真耶はそれに気づいたからヘファイストスに撃ち落としてもらおうと思ったのだ。なんせ、今のところ敵に戦力がバレているのはヘファイストスとアーサーくらいだから。


「馬鹿野郎!お仕置2倍だからな!」


 真耶はヘファイストスにそう叫ぶ。すると、ヘファイストスは涙目になって言った。


「だってわかんなかったんだもん!」


 真耶は少し苦悶の表情を浮かべながら周りを見つめた。しかし、どこを見つめても人は居ない。


「……暗殺者アサシンか……」


 真耶は小さく呟く。そして、モルドレッドの体を自分に抱き寄せると、背中のリーゾニアスに手をかけた。しかし、アーサーが言う。


「やめろ。相手の情報が分かってない以上こちらの情報を晒す訳にはいかない」


「だよな。どうする?」


「魔法を使わずに位置を特定できるか?」


「出来なくもない。相手の気配の大きさによる」


「分かった。じゃあ試してくれ」


「了解した」


 真耶とアーサーはそんな会話をすると、それぞれ自分達のやることを始める。真耶は目を閉じ集中した。アーサーは周りを見渡して何か普段と違うことが無いかを確認する。


 しかし、やはり何も見つからない。どうやら気配も足音も絶っているらしい。かなり上級者だろう。これだけ見つけるのが困難だったら、かなりの戦力になるはずだ。


「そう簡単には見つからないよな……」


 アーサーは小さくつぶやくとエクスカリバーを握る手の力を強くする。すると、エクスカリバーが少し光を放った。その光はその場を照らすが、やはり何も見つからない。影で見つけられるかと思ったが、無理だったようだ。


「……っ!?」


 その時、再びナイフが飛んでくる。アーサーはそれを容易に避ける。そして、その飛んできた場所を見つめた。しかし、誰もいない。


「真耶!」


「今探している!」


 アーサーの掛け声に真耶はそう答える。そして、さらに集中した。


 真耶はゾーンに入る。そのため、周りのものが何も見えなくなった。音も何も聞こえない。触覚も嗅覚も味覚も全て無くなる。そうすることで、新たなる第六感を働かせようとしているのだ。


 しかし、真耶はあることに気づく。それは、普通に気を探れば見つかるということだ。


 どういうことかと言うと、もし相手が気配を消しているのなら、その部分だけ気配がないからだ。ただ、他の場所と気配を合わせているのなら分からないが。ただ、その場合気配で相手の居場所がわかるから、どちらにせよ見つけることが出来るのだ。


 そう頭の中で考えて、真耶は気配を探る。やはり、気配は無い。次に、周りの気配を感知した。すると、大地の力を感じる。だが、それ以上に1部だけ何も無い場所をみつけた。それは、とてつもなく不自然に気が無くなっている。


 それで直ぐに気がついた。


「いたぞ!右斜め前だ!」


 真耶がそう言った瞬間アーサーがエクスカリバーを強く握る。そして、その場所に向けて斬撃を放った。


 すると、突如その斬撃が弾かれる。しかし、弾いたことで完全に真耶達は居場所を掴んだ。


「っ!?」


 その瞬間、アーサーの姿が消える。そして、その見えない敵の目の前に一瞬で移動して切りつけた。すると、その見えない何かがいる場所から大量の血が流れる。


「逃がさん」


 アーサーはそう言って一瞬で5回切り裂く。そうすることで、両手足と脇腹を切り裂くことが出来、殺すことなく無力化する。


「っ!?」


 その時、その見えない何かが姿を現した。それは、なんと勇者パーティの1人、暗殺者アサシン暗雲くらくもかすみだったのだ。


「お前は!」


「クッ……!」


「何しに来た?」


「何って……お前達を殺しに来たんだよ!」


 霞はそう言って叫ぶ。しかし、両手足を切られてしまい体を動かすことが出来ない。そのせいでただ睨みつけるしか出来ないのだ。


「フッ、面白いやつだ!まさかクラスメイトがこんなに強くなるとはな!」


 真耶はそう言って高笑いする。その時の顔は本当に楽しそうだった。


「どういうことだ?」


「見ろ!こいつ、こんな状況になっても殺そうとするなんてな!しかも、目で呪い殺すタイプの魔法か!」


 真耶はそう言って高笑いをする。そして、その目を見て言った。


「どうする?俺と呪い合うか?フフッ、どっちの呪いが強いか勝負しようじゃないか!」


 真耶はそう言って笑う。その笑顔はまるで、世界を破壊したような男の笑みだった。


「……まぁ、別に戦う必要も殺す必要も無いからな。無視していこうぜ」


 真耶はそう言って霞の傷を全て治す。そして、無視して先を進み出した。しかし、またどこからか武器が飛んでくる。しかし、真耶はそれがわかっていたかのように掴むと、何も無いところを掴み睨みつける。


 すると、その場所から暗雲くらくも霧音きりねが現れた。霧音は真耶に胸を捕まれ顔を赤くしながら苦しんでいる。


「んん!やめ……て!」


「……無理だな。だってお前可愛いもん」


 真耶は真顔でそう言う。その瞬間モルドレッドとヘファイストスが真耶を睨んできた。しかも、モルドレッドはディスアセンブル砲を打とうとしている。


「済まない。失言だった。だが、離すことは出来ん。お前の胸が気持ちいいとかそういうこともあるが、ここでお前を離せば殺しにくるだろ?そうなれば俺はお前を殺さなくてはならなくなる。今回霞は俺ではなくアーサーが戦った。だから殺さなかったが、お前は俺に戦いを挑んだ。俺と戦って生きていたものは居ない。俺が戦いを始める前に降参しろ」


 真耶がそう言うと、霧音は真耶から何か良くないものを感じ取ったのか、すぐに降参した。真耶は降参したのを確認すると、手を離す。


「いい判断だ。それより、なぜ殺しに来た?」


「何故って、まずあなたが怪しい。それに、そんな怪しい人と一緒にヘファイストスが居る。たとえアーサーがいたとしても、私達の敵が目の前にいる以上戦いを挑まなければならないの」


「なんだそれ?共感できるが相手は選んだ方が良いぞ」


「無理よ。私達は勇者パーティだから」


「勇者が必ずしも強いわけじゃない。勝てない者もいる。この俺みたいにな。それに、ここはお前達の世界とは何も関係がないだろ?なぜ無関係の世界を助けようとする?」


「確かに、私達は召喚者。でも、もうこの世界に関係してしまった。それに、私達をこの世界に呼んだのが神なら、その神を倒さない限り私達は帰れない」


 霧音はそう言って立ち上がった。そして、服についてるホコリを払うと、何事も無かったかのように真耶達について行こうとする。


 その後ろから霞が来た。霞も何事も無かったかのようについて行こうとする。


「なぜ着いてくる?」


「あなた達が敵じゃないと分かった。そして、危険地帯があるからそこを抜けるには私達の力がいる。だから、そこを抜けさせてあげる」


「へぇ〜。そりゃありがたいことだけど、多分要らねぇよ」


 真耶はそう言ってどんどん進んでいく。アーサー達も要らないだろうと思いながら進んだ。


 そして、それから10分程でその危険地帯に着いた。そこは、毒ガスが充満していて何かしらの耐性がついてる人でなければ通れないほどだ。


「私達にはそういう魔法がある。だから抜けれる。でも、普通の人は抜けれない」


 霧音はそう言って魔法をかけようとした。しかし、真耶はそれを止める。そして、そのままその危険地帯に向かって歩き出した。


「ちょっと待って!死ぬわよ!」


「大丈夫だ。俺は耐性があるからな。モルドレッドはまだ耐性が無いよな。俺に触れてろ」


 真耶はモルドレッドの体に触れると魔力で包み込む。すると、薄い魔力の膜が張られた。真耶はそれを確認するとその危険地帯の中へとはいる。すると、毒ガスが真耶達を容赦なく襲った。


 アーサーとヘファイストスもその後を追って毒ガスの中に入ってくる。霧音と霞はその光景を目の当たりにして言葉を失った。そして、魔法をかけて真耶達の後を追う。


「あなた達何者?」


「俺達はアヴァロンに住むものだ。長い間生きてるからこれくらいの耐性はあるんだよ」


「長い間って、あなた何歳なの?」


「こっちで言う300歳くらいだ」


「っ!?」


 霧音は真耶の言葉を聞いて言葉を失う。


「あなた一体何者?」


「言ったろ。アヴァロンの者だって。俺はアヴァロンに住む、ラウンズの1人だ。アーサー王と円卓の騎士。聞いたことはあるだろ?」


 真耶がそう言うと、霧音は驚き目を見開く。そして、少しだけ申し訳なさそうな顔をして前に立ち、そして跪いて言った。


「申し訳ありません!まさか、貴方様が月城真耶様とは思ってもおらず、無礼な口を聞いてしまいました!」


「は?急にどうしたの?てか、なんで俺の名前を?いや、まぁいい。とりあえず街に着いてから話をしよう」


「了解しました」


 真耶達は不思議な気分になりながら街へと向かう。その道中もずっと霧音が真耶を守るように動いていた。霞は気配を消し、周囲を確認していた。


 そして、それから30分程でルーレイトの街へと着いた。すると、そこには結界のようなものが張られている。


「これは街を毒ガスから守る結界でございます。よこしまなものを拒む力があります」


「いい結界だな」


 真耶はそんなことを言いながら結界に入ろうとする。しかし、入れない。だが、アーサーとモルドレッド、そしてヘファイストスは入ることが出来た。


「……」


「真耶、邪なこと考えてるから入れない」


 モルドレッドがそんなことを言って来た。さすがの真耶もそんなことを言われれば傷つく。


「やっぱ、モルドレッドと夜の営みをしようとか考えてるからかな」


「え?でも、私も考えてたよ。話をしてからずっと真耶と夜の営みをしようと考えてた」


「それもどうかと思うぞ」


 アーサーにそう言われて2人とも言葉を失う。しかし、直ぐに真耶が入れないことの対処法を考えた。


 しかし、真耶だけは違うことを考える。


(……冥界の力の余波が来たのかもな……)


「……」


 真耶は突然何も言わずに魔法陣を描いた。


「っ!?壊すのか!?」


「いや、壊すわけないだろ。少し穴を開けるだけだ」


 真耶はそう言って結界に少し穴を開ける。真耶はその穴から結界の中に入った。そして、魔法陣を壊して結界を元に戻す。


「さて、ギルドに行くか。そこで説明してくれ」


「はい。了解しました。真耶様」


 霧音はそう言って真耶達をギルドへと案内した。その道中真耶達はルーレイトの街を見渡すが、どこか少し違った空気を感じた。

読んでいただきありがとうございます。

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