第222話 扉
アイティールは先程よりも速く動いた。どうやらさっきまでは手を抜いていたらしい。今度は確実に勝つと決めたからなのか、先程とは動きが違う。
なんというか、流動的だった。これまで見てきた中で、こんなにもくねくねとした動きをしながら戦いを挑んでくる人はいなかっただろう。それくらい不思議な動きで攻めてきた。
モルドレッドはそれを見て冷静に光線を放つ。先程と同じように赤黒い大量の光線がアイティールを襲う。上空から振り下ろされる光線の雨はアイティールの逃げ場を完全に潰した。
しかし、アイティールには一つも当たらなかった。確実に当てるために狙っているはずなのに、それは全て綺麗に外れてしまった。まるでアイティールから強力な斥力でも働いているかのようだった。
「チッ、何で当たらないのよ。”エナジーレイ”」
モルドレッドの魔法が発動する。そして、今度は緑に光る光線を飛ばしてきた。アイティールはそれを見てすぐに止まる。光線の動きをよく見て全て躱した。
光線はそのままの勢いで背後にそびえ立つ巨大な山に直撃した。すると、山の一部が抉り取られたように削れている。その様子だけでも今の攻撃がかなり殺傷能力が高いことが分かる。
「……」
アイティールはすぐにモルドレッドに向き合い足を進めた。モルドレッドはその道中も攻撃する手を止めなかった。連続で光線を放ちアイティールを殺そうとする。
そして、結局光線は当たらずアイティールはモルドレッドの目の前まで来た。
「終わりにゃ。”深紅・暗雲影火節”」
まるで演奏でもしてるような音を奏で、メロディーでも書いてるような流れる動きで炎が吹き荒れる。アイティールはクナイを握りしめモルドレッドに向けて攻撃をしかけていた。
しかし、モルドレッドもさすがと言うべきか。自分に対しての攻撃を全て寸前のところで躱す。そして、反撃も仕掛けた。
だが、アイティールにとってそれを躱すのは苦ではない。完全に死角となっている場所からの攻撃でさえも当たることはなかった。まるで見えているかのように全てを躱す。
モルドレッドはその光景を見てあ少しだけ汗を垂らした。しかし、その汗もアイティールの魔法で作り出した炎ですぐ蒸発をしてしまう。
モルドレッドはアイティールのそんな技や姿を見て戦闘方法を少しだけ変えることにした。
「あなたは守りながら戦うのね」
「それがどうしたにゃ?」
「いえ、後手に初めから回るなんて……殺してくださいと言ってるようなものよ」
「うっさいにゃ」
その言葉は急に深淵の中に吸い込まれた。まるで、音を吸収する空間に入ったように声が無くなる。
その時アイティールは気がついた。自分が今謎の空間にいることを。まるで、異空間に閉じ込められたような空間にいることを。
「これは……」
「なんでしょうね」
「おみゃーの魔法……じゃにゃさそうにゃ」
アイティールはそう言い切った。そして、クナイをひとつ飛ばす。すると、何もない空間に突き刺さった。アイティールはそれを見て少し笑う。
「おみゃーがなんでマイダーリンに勘違いされたのか分かった気がしたにゃ」
アイティールは笑いながらそう言った。そして、印を超高速で組んでいく。
「おみゃーに本当の力を教えてやるにゃん♡」
アイティールがそう言った瞬間、身体中から不思議な魔力が流れる。その力は、まるで自然そのもののようだった。だが、地脈の魔力とはまた違う。普段自分達が何気なく踏みつけている地面そのもののような感じがした。
「何……これ……!?」
その時モルドレッドの体は完璧に硬直してしまった。そして、アイティールの額に出来た目玉を見て目を丸くする。アイティールは浮かべた笑みとは裏腹に、痛そうに血を流しギョロギョロと動く目玉が出来ていた。
「仙人みたいにゃんよ」
アイティールは自慢げに話す。だが、モルドレッドにしてみればそれはただの恐怖でしか無かった。強そうで怖いとかじゃない。ただ、気持ち悪いのだ。ギョロギョロ投獄目がなんとなく怖いとかそんな感じのやつ。
アイティールはモルドレッドの表情からそれを読み取り少しだけ悲しくなった。そして、心の中で『真耶だったら……』なんて考える。
「あら?何かしら。真耶だったらその気持ち悪い目も愛してくれるって思ったのかしら?」
モルドレッドは煽るようにそう言った。そして、ハッキリとその口で気持ち悪いと言う。しかし、アイティールは楽しそうに笑いながら言った。
「違うにゃ。真耶だったらこの額にまで幻術をかけて、にゃあをぐちゃぐちゃに犯すにゃん♡そしてにゃあは泣きわめきながら土下座して……にゃふふふふ♡」
アイティールは両手を頬に当てて頬を赤らめながら照れるような仕草をする。モルドレッドはそんなアイティールの超特殊性癖に目を丸くし言葉を失った。
「まぁいいわ。なんにせよあなたが真耶に会うことはもうない。この空間に入った以上あなたはもう負けよ」
「にゃんでそう思うにゃ?おみゃーの転生前のその魂はよっぽど強い自信があるにゃんねぇ」
「……クソ猫が。キモイわね。”開け”」
モルドレッドはそう言って目の前に空間の扉を開いた。その扉はギィっと音が鳴って少しずつ中を見せてくる。
しかし、その中は虚空が続いておりなにか見えるわけではない。アイティールはその先を見つめて少しだけ冷や汗を垂らした。
「怖い?今少し怖かったんでしょ?この先がどうなってるのか、分からなくて怯えたんでしょ」
「うっさいにゃ!にゃあはビビらにゃいにゃ!たとえ真耶……マイダーリンに押し倒されて、にゃかにゃいからにゃかせてやるって言われても、にゃくまでお尻を叩くとか言われても、にゃあはにゃかにゃいにゃ!」
アイティールは頬を赤らめ少しだけ……いや、かなり嬉しそうで楽しそうにそう言い切った。そして、手裏剣を扉に向けて飛ばす。
「無駄よ。実態はない。あなたは手も足も出ない」
「にゃはは……そう言いきられると怖いにゃん……」
アイティールはそう言ってクナイを構える。そして、両目を閉じて額の目で扉を見つめた。しかし、それがなにか分からない。その先に広がる空間などもってのほかだ。
アイティールはゆっくりと目を開けクナイを2つモルドレッドに向けて飛ばした。モルドレッドはニヤリと笑うと2つ小さな扉を開く。クナイはその扉の先に入っていき消えた。
「扉はどこでも何個でも開くの」
そう言って扉をアイティールの背後に2つ開く。すると、そこからクナイが2つ飛んできた。アイティールはそれを慌てて躱そうとしたが、躱しきれずに腹部に2つ突き刺さってしまう。
「強……。ズルにゃん」
アイティールはそう言いながらクナイを引き抜いた。そこから血が流れてくる。アイティールはそんなことなど気にすることもなくクナイを地面に2つ突き刺した。
「さてさて、そろそろここから出してもらうにゃ」
「いや……と言ったら?」
「言わせにゃいにゃん」
アイティールは狂気的な笑みを浮かべてそう言い放つ。その顔はさながらメスガ……小悪魔のようだった。
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