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モブオタクの異世界戦記Re  作者: 五三竜
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第212話 敵と味方と味方と敵と

 ━━クロエ達が戦っている頃、アレスはゆっくりと起き上がり奏に目をやった。そして、デュポーンを握りしめ殺気を漏らす。しかし、奏は起きない。


「……」


 アレスはオーディンに倒される前に言われた事を思い出していた。それは、奏には聞こえないように言われた言葉。耳元で忠告するかのように言われた言葉。


『奏を信じるな』というものだ。その真意までは分からない。しかし、少なくとも夜桜奏という人物はオーディンから見て危険な人物なのであろう。


「だが、敵の言葉を容易に信じるほど俺は……」


 愚かではない。そう言いたいのだ。だが、最後まで言葉は出なかった。なんせ、体のどこかでは信じてしまっているからだ。まるで今のうちに奏を殺せと体のどこかが激しく訴えてくる。そのせいもあってかデュポーンを無意識に倒れている奏に向けてしまっていた。


「……信じるなか……」


『殺せ』ではない。オーディンが言ったのは『信じるな』だ。だから、今ここで殺すべきではないということなのかもしれない。


 どちらにせよアレスは中立的立場にいると言っても過言では無い。オーディンは敵であるが、奏も敵である。それに変わりは無い。オーディンの肩入れをするわけでも、奏の肩入れをする訳でもないのだ。


「真耶はどう考える?」


 アレスはそう呟いて奏を蹴飛ばした。そして、デュポーンを離す。手から離れたデュポーンは光の粒子となって消えた。


「おい。起きろ寝坊助」


 アレスは奏を足で揺さぶりながらそう言った。奏はハッと急に目覚める。そして、周りを見渡した。


「あれ?オーディンは……?」


「居ない。恐らくフィトリアと共に別の場所で戦っている」


「そぅ……行きましょ!」


「無論、そのつもりだ。だがその前に1つ聞いておく。お前から見て俺は敵か?」


 奏はその言葉を聞いて少しだけ言葉を詰まらせた。


 ━━フィトリアは投げ飛ばされたクロエを見て少しだけ身体を震わせる。そして、今度は自分が狙われないように鼻を隠した。


 クロエは投げ飛ばされ背中に強い痛みを感じる。だが、それ以上に鼻に強い痛みを感じた。鼻血はドクドクと止まらず流れ、ちとは関係なしに真っ赤に腫れている。


 フィトリアは怖くなって少しだけオーディンから距離をとった。しかし、そんなことをしていれば有利になるのはオーディンだ。6本ものグングニルがフィトリアを襲う。


 フィトリアはムチを使ってその全てを弾こうとした。しかし、グングニルだけに意識を向けていると、凄まじい速さで近寄ってくるオーディンに気が付かなかった。フィトリアはすぐにその場から離れようとする。それに合わせて魔獣達が攻撃をしかけた。


 しかし、それら全てはオーディンに届かない。オーディンは確実に近距離戦闘でカタをつけるつもりなようだ。


「妾に恋しておるのか!?」


 フィトリアはそんなことをいいながら反撃する。


「さぁな。アイツの言葉で言うなら、いじめたくなる可愛さってやつだ。多分」


 オーディンはそう言ってフィトリアの左胸に強い掌底を食らわす。


「ほぐぅっ……!」


 その刹那、オーディンの手から強い電撃が流れた。


「あばばばばばば!!!」


 フィトリアはそのせいで全身が痺れてしまった。最初は微妙な痺れ方で多少の快楽はあったものの、即座に強い電流が流れ全身が痛みで包まれる。


「はぐ……!ふぐ……!」


 フィトリアは光の無い目で痙攣しながら変な声を出し続ける。そんな時、唐突に鼻になにかが詰められた。


「ふがっ!?」


「1度やってみたかったんだ。それに、余裕を見せるならギャグ漫画でやる技をするのが1番いい。これが最高の煽りになる」


 オーディンはそう言ってフィトリアに鼻フックをしてそのまま背負い投げをした。当然フィトリアも鼻血を吹き出しながら背中を強く打ち付ける。


「さて、これで終わりか。あっけないな」


 オーディンは6本まで増やしたグングニルを地面に突き刺す。しかし、消そうとはしない。まるでこの後来る何かを知っているかのようにただ地面を見つめていた。


「瞼の裏にあるものは、闇だと言う人も入れば、虚空だと言う人もいる。一体どっちなんだろうな」


「ど、どう……言う……」


「そのままの意味だ」


 オーディンはそう言って何も見ることなくクロエの攻撃を防ぐ。甲高い金属音が鳴り響いた。そして、大量の火花が散る。


「ノールック!?」


「そろそろ終わらせよう。もう十分だろ?」


 オーディンは哀れむような目を向けてそう言った。


「……そんなことないわよ……!」


 フィトリアが立ち上がりながらそう言う。


「だが、お前らの力はそこまでだ。それ以上強くはなれない」


「フン!それはどうかな!私達はまだ本気じゃないよ!」


 クロエは自慢げにそう言って指を指す。


「……だったら見せてみろ!ユグドラシルの破壊神と呼ばれたこの俺に!」


 オーディンはそう言ってグングニルを7本操り構える。


「……」


(見ものだな。アイツがどこまで育てているのか……見てやるよ)


 クロエ達は向けられた7本のグングニルを見て少しだけ息を飲む。しかし、すぐに落ち着き魔力を溜める。


「やるわよ!”天神纏あめのかみまとい”」


「”死獄纏マカルヒトヤノマトイ”」


 2人の魔力が急激に上昇した。そして、膨大な魔力を全身に纏い、煌びやかで妖艶な装甲を身につけたクロエが光の中から現れた。


 その隣でどす黒い魔力が爆発的に増大した。そして、真っ黒なオーラとともに華美で妖艶な衣装を纏ったフィトリアが闇の中から現れた。


「始めるわよ」


「えぇ、始めますわ」


 2人はそう言って歩き出した。

読んで頂きありがとうございます。

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