第183話 食い違い
━━……真耶は既に用意を終わらせている。折れてしまったアンダーヴァースはも丁寧に魔法で作りだしたアイテムボックスの中にしまった。そして、王城を一瞥する。
「すまないな。我らのせいで手間を取らせた」
「悪い」
「ほんとに申し訳ない。まさか、小生もあれほどとは思えなかった」
3人はそう言って俯く。しかし、真耶はそのことに対して怒るつもりはなかった。この3人が戦っていなかったとしても、どうせここで少し休憩していたからだ。
「アンダーヴァースが折れてしまったのか」
「あぁ」
「……勝てるのか?」
サタンはそう聞いた。
「無理だね」
真耶は即答する。しかし、サタンは驚く様子を見せない。どうやら予想していた答えと一致したらしい。
「お前もわかったんだろ?あいつは人じゃない。俺らが到達できる生息域を超えてしまっている。それこそ、人間の向こう側に行った存在だ」
「アンダーヴァースが切られた以上、アンダーヴァースと同じ力の剣だとまた切られるぞ」
「まぁね。もうここまで来ると、技量でどうにかなる次元じゃないからね。ただ、向こうは俺を呼んでるんだ。それに、ナメられちまったなら、取り返すしかねぇだろ?」
真耶はこれほどまでにないほど怖い顔をしてそう言った。
「……そうだな」
サタンは小さくそう言った。そして、真耶達は王城に向けて歩き出した。
━━数分間だけ真耶達は歩いた。現在真耶たちがいる紅い森から王城までは本当に近く、たった数分歩くだけでも近づくことが出来る。
近づいてみて分かったのだが、本当にここには敵はいないらしい。
「いや、見えないだけか」
「何か言った?」
「言ったよ。ラーメン食いたいってね」
「ラーメン?なんですか?それ」
「バカやろう!ラーメン知らねぇのか!?」
真耶はびっくりしてそう叫んでしまった。すると、アイティールが呆れたような目で見ながら言ってきた。
「地球に住んでないと分からんにゃ。普通は」
「それもそうか」
真耶は納得して何も無かった顔をする。その場の全員は呆れて何も言えなくなった。しかし、すぐに全員の雰囲気が変わる。王城の入口の前まで来て気を引きしめる。
「皆、注意しろ。今から王城に侵入する。ただ、ここはどちらかと言えば避難用の経路だ。だから、入る場所ではない。それだけは覚えておいてくれ」
「どういうことにゃ?」
「早く出るためにできてるから、登らなきゃならない壁があったりするってことだよ。あと、基本的に広間とかは通らない。一気に三階の食堂まで行くことになる」
「なるほどにゃ。だとしたら……」
「最初に出会う敵が、神の可能性が高いってことか」
「いや、そうとも限らない。ここにはラウンズもいるはずだ。ま、とりあえずなにかに出くわす可能性が高いってことだ。それと、出口で待ち伏せの可能性もある。相手にはアーサーがいるからな」
真耶はそう言った。その場の全員はそれを聞いてより一層気を入れ直す。そして、王城の中へと入っていった。
「……ま、いるよな」
真耶は入るなりそうつぶやく。そして、冥界のエネルギーを球体にして手のひらの上に溜めた。
「”鳴動心火”」
真耶が球体を飛ばす。すると、タイミングよく目玉が現れた。目玉はその球体が直撃し一瞬で消し飛ばされる。
「……まさかここにいるなんて……」
「助かりましたよ」
みんながそれぞれお礼を言ってくる。そんな中1人だけ固まっている人がいた。それは奏だ。奏だけは何故か驚き固まっている。
「どしたん?」
「いや、なんであれがいるのかなって思って……あれは、天使でしょ?」
「違うな。正確には天使が作り出した兵器だ」
サタンがそう言った。すると、奏は青ざめた顔で言う。
「そんなの知ってるわ。それより、なんでいるのかが知りたいの。あれは古代のものじゃ……」
「3000年前のものだな」
「30万年前のものだな」
「「「っ!?」」」
サタンと真耶が同時に喋った。しかし、その言葉は一致しなかった。そのことに2人も驚きを隠せない。
「30万年前だと?あれが作られたのは我達が生まれたのと同じ時だ。だから、3000年前だろ?」
「3000年だと?それに、俺は30万年前から生きている。アーサーもそうだ」
「馬鹿を言え。アヴァロンが作られたのは5000年前の事だ。30万年前など古代の時代だろう?」
サタンの言葉に真耶は驚く。
「じゃあなぜ俺は……っ!?」
その時、なにかに気がついた。まるでこれまで絡まっていた知恵の輪が解けたように納得し笑みを浮かべる。
「ちょ、何2人だけで納得してんの?教えてよ」
「まだその時じゃないよ。確信が持てないからさ。ただ、全ては繋がっていた。少なくともこれらのことの裏には何者かが存在する。それだけ入っておくよ」
真耶はそう言ってニヤリと笑った。
「急ごう」
そして、凄まじい速さで走り出した。サタンはそれを見て少しだけ笑う。その後、すぐに真耶を追いかけた。その場の全員も慌てながら真耶を追いかけた。
それからずっと走り続けた。出てくる敵は一瞬で倒し、他を寄せつけないほどの速さで進んだ。その為なのか、真耶とサタンの2人だけがすぐに食堂に到着する。
「いいのか?置いてきて」
「良いよ。着いてきても殺されるだけだ。今回は相手が悪すぎる」
「……ゼウスはなんとかなるかもな。だが、兄は……」
「相手のことはよくわかってるよ。多分、全力で殺しにくることも分かってる」
真耶はそう言って後ろを振り返った。まだ、アイティール達は追いつきそうにない。
「剣はどうする?」
「……プラネットエトワールを使う」
真耶はそう言って折れたアンダーヴァースを取りだした。そして、それを直ぐに分離させる。
「っ!?そんなことが出来たのか?」
「まぁね。元々は2つのものを1つにしてたんだ。だから、2つに分けることも出来る」
「……じゃあ、戻して剣を直して、また1つにしたらどうなの?」
「この剣は人で言う魂の部分……いわゆる核が1部壊されてる。折れた原因もそれだ。だから、直しても力は半減したまま。本当に直ったとは言いきれない」
「なるほどね。ま、剣はあとでなんとでもなると思うよ。とりあえず今はやれることをやろう」
サタンはそう言って歩き出した。真耶は剣をそれぞれ鞘に戻して歩き出した。
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