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モブオタクの異世界戦記Re  作者: 五三竜
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第169話 化身と化身

 ━━アポロンの心は炎に埋め尽くされた。しかも、黒い炎に。


 これまでのアポロンの心は赤い熱い炎に埋め尽くされていた。だから、何事にも全力で熱く行うことが出来た。


 しかし、今は違う。黒い炎が心を燃やし尽くし、埋め尽くす。これまで善だった心が、悪に変わっていく。


 アポロンはそんな炎に焼き尽くされながら、全てを諦めた。そして、たった1人の男に全てを託した。


 ━━アイティールは砂煙の中を突き進んでいた。巨大な砂煙は、視界を奪ってしまう。そうなれば、危機に陥る可能性が高い。


 しかし、実際のところそこまで砂煙は危険視していなかった。功を奏したのか、アポロンが纏う炎が強すぎてどこから見ても見えるのだ。


 だが、その状況がずっと続くとは限らない。アポロンがもしかするとそれに気づいて炎を弱めるかもしれない。そんな思いでアイティールは砂煙から出ようとした。


 そして、真っ直ぐ突き進み砂煙から出る。そして、砂煙の中で燃え上がる炎を見た。それに一瞬だけ安堵する。しかし、そのすぐ後に背後に現れたアポロンを見てアイティールは驚いた。


「っ!?」


 アポロンの拳がアイティールを襲う。しかし、アイティールはすぐさま背中の剣でその拳から身を守った。そして、アイティールはその拳を蹴り飛ばす。


「っ!?」


 すると、アポロンの体は反動で少し飛んで行った。その、飛んで行った場所に合わせてヘファイストスが攻撃を仕掛ける。


「”流星破壊メテオブレイク”」


 ヘファイストスの一撃がアポロンに炸裂した。空から降ってくる灼熱の巨岩がアポロンの体をおしつぶす。


「……」


 そして、その岩に向けてアイティールが黒い玉を3つほど投げた。よく見ると、その黒い玉には刃のようなものが着いており、かなり早いスピードで回転している。


 その玉は無慈悲にもアポロンを容赦なく襲う。そして、黒い玉は一瞬で膨張し、辺りのものを飲み込んだ。更に、黒い玉から出ている刃が巨大化し、辺にあるのものを破壊する。


「……!」


 アポロンはその攻撃を受けて苦しみ始めた。何とかその攻撃の範囲内から出ようともがくが、強大な魔力とエネルギーに阻まれてしまう。


「このまま畳み掛けるよ!」


 ヘファイストスはそう叫んでハンマーを振り回した。すると、今度は地面ではなく空気が燃え始める。そして、燃えた空気が刃となりアポロンを襲った。


「……完成まではまだ時間がかかりそうね」


 ヘファイストスはそう言ってもう一度気合いを入れ直した。


「”▊▊▊▊”」


 アポロンの声が聞こえる。そして、青白い光線が発射された。その光線は真っ直ぐヘファイストスとアイティールを狙っている。


「……!」


「無駄よ!」


 アイティールもヘファイストスも特に支障はなくその光線を避ける。そして、アイティールは背中の剣を2つアポロンに向けた。


 2つの剣が真っ直ぐ飛んでいきはじめた。そして、フラフラの状態のアポロンに突き刺さる。アポロンはその一撃を受け少しだけよろめいた。


「……”▊▊▊▊▊▊▊▊▊▊▊▊▊”」


「っ!?」


 アポロンが魔法を唱える。すると、アポロンの背後に超巨大な人型の炎の化身が現れた。その化身は山よりもでかく、恐怖心を煽ってくる。


 しかし、それ以上に問題なのが、その化身がアイティールのみを狙っているということだ。確実にアイティールを殺すべく手を突き出し向けている。


「……!」


「アイティール!早く逃げて!”新時空超壁しんじくうちょうへき”」


 ヘファイストスがそう言ってアポロンが作り出した化身とアイティールの前に魔法の壁を作り出した。そして、そのすぐ後に化身が魔法を放つ。


「っ!?」


 パリィィン!っという音を立てて壁が破壊された。そして、プラズマ化した炎の光線がアイティールを襲う。


 ギリギリのところでそれを躱したアイティールだったが、それでも完全に忘れ躱すことは出来なかった。右腕がその光線に飲み込まれる。


 獄炎がアイティールの右腕を焼き尽くした。一瞬にして右腕を埋め尽くす苦痛にアイティールは大粒の涙を流す。そして、急いで腕を引き抜いた。


 すると、腕は少しだけだが溶けていた。皮は愚か、肉さえも熔けて骨が見えている。


「っ!?」


 アイティールはそれを見て涙が止まらなくなる。


「アイティール!止まっちゃダメ!」


 ヘファイストスの声が聞こえる。しかし、アイティールはそれ以上足を動かせなくなった。恐怖と痛みにより足が震えて前に出てくれないのだ。


「……!私も……やるしかない!”超新星ちょうしんせい天神羅鳳凰あめのしんらほうおう”」


 ヘファイストスはそう唱えてハンマーを地面に叩きつけた。すると、ヘファイストスの背後の地面から手が現れてくる。そして、岩で出来た超巨大な化身が出てくる。


「やって」


 ヘファイストスのその言葉と共に岩の化身が走り出す。その岩の化身はアイティールを狙う炎の化身におそいかかる。


「……っ!?」


 アイティールは2人の巨大な存在を見て言葉を失った。そして、少しだけ呼吸を整えて自分の右腕を再生し始める。


 ヘファイストスが作り出した岩の化身はアポロンが作り出した炎の化身と戦いを始める。巨大な力どうしが衝突し、空間が揺れ始める。強力な衝撃波が放たれアイティールとアポロンは飛ばされそうになった。


 炎の化身の攻撃1つで爆炎と爆風が荒れ狂い、周りに存在するものさえも燃やし尽くしてしまうほどだ。アイティールはそんな2つの強大な存在を見ながら腕を再生していく。


 アポロンは炎の化身を出したのがかなりの負担になったのか、少しだけ動きを止めている。そんなアポロンに再生を終えたアイティールは攻撃を仕掛けた。


「っ!?」


 アポロンの反応速度が少しだけ遅い。やはり、動きが鈍くなって来ているようだ。アイティールはそのことに気がつき七つの剣全てを使用し全方位から攻める。


 ヘファイストスはアイティールが攻撃を仕掛けたのを見て炎の化身に攻撃を仕掛ける。両サイドの壁から巨大な棘を出したり、拳を出したりして炎の化身に殴り掛かり、岩の化身が更に攻撃をする。


 反撃の暇さえも与えない2人の攻撃によってアポロンを押していく。しかも、この戦いの中で1番だ。長時間による戦闘もあるのだろうが、これまでのダメージの蓄積もあるのだろう。


 遂に2人はアポロンを追い込むことが出来た。しかし、それでも2人は気を抜くことは無い。全ての攻撃を注意深く見て当てていく。


「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………!」


 ボコボコにされたアポロンは極限状態まで来ていた。体を動かすのも難しくなるくらい極限だった。


「あと少し……!2人とも……速く!」


 ヘファイストスはそう言って再び気合いを入れ直した。

読んでいただきありがとうございます。

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