第148話 次の場所へ
「真耶!油断しないで!そいつは他のと違うわ!」
フィトリアはそう言って戦闘態勢に入る。
「ほかのと違うって……どこがだよ?全くおなじだろ?」
「違いますよ!あれは亜種です!普通のより数倍も強いやつです!本当にやばいんですからね!気をつけてください!」
ルリータはそう言ってかなりの魔力を放出した。それを見た真耶は呆れたような目をして言う。
「あれが?亜種になっても弱そうだぞ。それに、遺伝子組み換えされて出来た破壊兵器的なやつが亜種になるって、どんだけ属性増やせば気が済むんだよ」
「そんなこと言ってる暇ないです!私達あれに1回やられそうになったんですよ!」
「ほぅ、それ初耳だな。負けそうになるとはけしからん。罰としてルリータにはおしりペンペンだ」
「そんな呑気なこと言ってる暇は無いです!」
ルリータはそう言ってプンプン怒る。その様子を見ていた真耶はニッコリ微笑むと、向かってくる目玉を見て手を突き出した。
「一撃で終わらせる。”冥閃・魂断”」
その時、目玉の怪物は真っ二つに切り裂かれた。さらに、その体はだんだん薄くなり消滅していく。
「強い……」
ルリータはその様子を見て口をポカーンと空けるしか無かった。
「どうだ?これでも本当に勝てないと思うか?」
真耶はそう言って不敵な笑みを浮かべた。
「……むー!」
真耶の笑みを見たルリータは拗ねて怒ってしまう。顔をぷいっと横に向けて頬をふくらませている。
「……なんで怒ってんだよ」
真耶はそう呟いてため息を1つ吐いた。そして、アンダーヴァースを握りしめ何も無い空に向かって一振する。
「どうしたのですか?」
「いや、ま、ちょっとな」
真耶はそう言って少し離れる。その刹那、その場に再び光線が降ってきた。真耶はその光を何事もなく躱す。
「っ!?」
ルリータはそれに驚きポカーンとしてしまう。真耶はそんなルリータを見てニヤつくと、静かに左目を閉じ、開いた。
「”強制転移”」
その瞬間、突如謎の人が現れる。その人は神々しい魔力を放ち、顔には金色の仮面を被っていた。
「神の手先か」
「フッ!弱ってる貴様を殺してやろうじゃないか!」
神の手先はそんなことを叫ぶ。真耶は少しニヤついて静かに剣を鞘に収めた。
「っ!?舐めてるのか!?」
神の手先はそう言って歩き出す。真耶はそれを見てさらにニヤつく。
「お前!なんか喋れ!」
神の手先はそう叫ぶ。すると、真耶は恐怖に満ちた笑みを浮かべて手を前に突き出した。そして、楽しそうに言う。
「おっけー。死ね”忘却・メメントモリ”」
その時、突如神の手先の首が飛んだ。血を噴射しながら飛んでいく様は、そこらのホラーゲームよりグロく恐怖だった。
「っ!?」
ルリータは目の前で起こったことを理解できない。ただ、目を見開きポカーンとするだけ。
「……行くぞ」
真耶は剣を振り血を落としてからそう言った。そして、アイティールがいる方向を向きながら剣を鞘に収める。
「真耶……かっこいいにゃ!」
アイティールはそんなことを言いながら頬を赤らめていた。しかし、真耶はそんなことを気にすることなくアイティールの目の前に来る。そして、猫耳を触って振り返ると、城に向かって歩き出した。
「……なんだったにゃ?」
「……なんだったのでしょう?」
「……さぁな。わっちには分からん」
「妾にも分かり兼ねることなのじゃ」
4人はそんなことを言って真耶のあとを追った。
━━それから1時間後……
真耶達は王都の中心に近い場所まで来ていた。5人は静かに、元音を立てることなく移動している。どうやら王都に近づくにつれて警備が厳重になっているらしい。
「……さて、強行突破するか」
真耶は正面の門を見て出ていこうとした。
「「「やめい」」」
しかし、4人はそんなことを言いながら真耶を止める。
「もうちょっと慎重になりなさい。たとえあなたが強くなったとしても、多勢に無勢よ」
フィトリアはそう言う。真耶はフィトリアのその言葉を聞いて少しだけ考えるような素振りを見せると、小さな声で言った。
「ま、俺も勝てるか分からないからな」
「ん?何?」
「……いや、何でもない。とりあえず今の状況をどうにかしよう。俺的には一気に潰しておきたいが、そう目立つ訳にもいくまい。かと言っていい案が出るわけでもなく……さて、どうしたものかね」
「真耶様の言う通り一気にカタをつけるのが一番だってのは分かりますが、それだと後がキツイですよ」
「それも分かっている。魔力はなるべく節約しておきたいからな。……なぁ、今ここにサタン達がどこにいるか知ってるやつはいるか?」
真耶のその問いかけに誰も答えない。全員無言で俯いてしまう。
「何があった?」
「……怒らないで聞いて欲しいです……。それが、ここに来て私達が王城に入った時全員謎の力で飛ばされたんです。だから、皆何人かのグループになってこの世界のどこかにいます」
無為は何故か敬語でそんなことを言う。
「何?謎の力で飛ばされただと?……転移系の魔法か……いや、それならルリータが分かるはずだ。ルリータが分からない魔法……」
真耶はそう呟きながら深く考え込む。
「……なるほどな。理滅か」
真耶は考えが纏まったのかそう呟いた。
「っ!?理滅!?なんで!?それって真耶の魔法じゃ……」
「いや、理滅は元々俺のじゃなかった。俺も知らなかったが、ケイオスがそれを聞いてきたらしい。恐らく本当のことだろう」
「「「っ!?」」」
真耶の言葉を聞いた4人は目を見開き言葉を失う。そして、無為が恐る恐る聞いてきた。
「じゃあ、理滅は誰の技なの……?」
「……多分アーサーだ。あの常人離れした一撃は間違いない」
「っ!?」
「さっき無為が言ったよな?謎の力で飛ばされたって。多分それは理滅の力だ。俺も前に1度使ったことがある。神眼の正のエネルギーと邪眼の負のエネルギーを人に付与して、負のエネルギーを在る空間に溜める。そして、限界まで磁石のように引き付け正負を逆転させることで吹き飛ばす技だ」
真耶はアーサーが使った技を4人に説明する。他な4人はその言葉を聞いて言葉を失った。
「ま、そのことに関しては問題は無さそうだ。なぜアーサーが殺さなかったのは気になるが、恐らくサタンのこともあるのだろう。ただ、それより心配なのは次にアーサーと戦う時に勝てるかどうか分からないということだ。恐らく理滅をフル活用してくるだろうな」
「っ!?じゃ、じゃあ下手を打てば殺されるかもってこと!?」
「そうなるな」
「「「っ!?」」」
真耶の言葉でその場の空気が重たくなる。そして、全員が緊張感を持ち始め、息を飲む。
「とりあえず今は目の前の状況をどうにかしよう。この感じだと強行突破で行けそうだが、アーサーが来てしまうと勝てない。それに、モルドレッドにもだ。ここではなるべく隠密行動だな」
真耶はそう言って全員に魔法をかける。そして、門番にも魔法をかけた。
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