第146話 冥界の力をこの手に
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━頭の中に流れ込んで来た情報全てを真耶は一瞬で処理した。そして、その全てを理解した真耶はニヤリと笑う。そして、前を向いて剣を構えた。
「やっとだ……やっと全てを壊せる。ジェノサイドの始まり……」
「”エクスカリバァァァァァァァ”!!!」
「「「っ!?」」」
その時、突如空からアーサーが降りてきた。どうやら高く飛び上がり剣を構え降下してきたらしい。
真耶はその一撃を食らってかなり遠くに飛ばされる。さらに、アーサーの一撃は強力でかつ巨大な衝撃波を放ち地形を壊す。
「アーサー!?あなたどこに行ってたの!?」
「隙を狙っていた。こうでもしないと倒せないからな」
「あんだけボロボロにさせたあなたが言う?」
「相手は神をも殺す力を持つ男だぞ?手を抜けばどうなるかわかっているのか?」
アーサーはそう言ってモルドレッドを見た。モルドレッドはアーサーを見て不敵な笑みを浮かべると、アイティールを見て恐怖に満ちた笑みを浮かべる。
「あらあら、可哀想な子ね。今から私が玩具にしてあげるから安心しなさい。うふふ、これからが楽しみだわ」
モルドレッドはそう言って笑う。アイティールはそんなモルドレッドを見ながら真耶の名前を心の中で叫んだ。
そして真耶は……
「……」
『……や』
「……」
『……真耶。ねぇ、起きて。早く行かないと……』
「起きてるよ。クロエにも待たせちまったからな。やっとその体を作ってやる時が来たみたいだ」
『私はそんなこと望んでないよ』
「俺は望んでいる。それに、この先お前を体にずっと居ておくわけにも行かない。俺の秘密がダダ漏れだろ?」
『……エッチ。そうやって体を取り戻させてエッチなことするんでしょ?アイティールちゃんと私で両手に花をするんでしょ!?』
「それもいいかもな。ただ、その前に1つ……」
真耶はそんな会話をすると静かに立ち上がる。そして、服に着いた泥や砂を落とし周りを確認した。
どうやらかなり飛ばされたらしい。それに、何故か洞窟にいる。しかし、上に裂け目ができていることから、アーサーの攻撃で山まで飛ばされたことが分かった。そして、その衝撃で洞窟を作り、アーサーの攻撃で山は切れたことも分かる。
「その前に1つ、読みの世界に送ってあげないとだよな」
真耶はそう言って体に淡い紫色の光を纏わせた。クロエは真耶の体の中でその力を感じて、少し怖い気持ちになりながらも優しくあたたかい力も感じた。
真耶はその状態になると、一瞬でモルドレッドたちがいた場所まで近づく。そして、誰にも気づかれることなくかなり近くまで移動した。
そんな時、モルドレッドとアーサー達がいる場所の近くにリーゾニアスが降ってきた。
「っ!?あら、弾いたのね。凄い反射神経だわ。あの状況で防ごうてしたなんて」
モルドレッドはそんなことを言う。そう、真耶はあの時アーサーの攻撃を食らう直前にリーゾニアスで防ごうとしたのだ。しかし、防ぎきれずに空に弾かれたらしい。
真耶は降ってきたリーゾニアスを見てニヤリと笑う。そして、ゆっくりと歩き出した。
「っ!?真耶!?」
「っ生きていたのか!?それに……雰囲気が変わった!?」
真耶の姿を見たモルドレッドとアーサーは驚く。その奥でロキは真耶を見て少し警戒していた。そんな時だった。突如その場に光の柱が出来る。
「っ!?」
モルドレッドはさらに驚いた。そして、その光の柱から出てきた人を見て少し警戒する。なんと、そこから出てきたのはアテナだった。アテナは楽しそうにその場の全員に近づく。
「楽しそうなことやってるわね。漁夫の利を狙いに来たわ」
アテナはそんなことを言いながら真耶に近づいてくる。その時、モルドレッドとアーサーは何かを察した。そう、既に真耶がリーゾニアスの元まで来ていたのだ。
それを見たモルドレッドとアーサーは慌ててジャンプをする。しかし、ロキとアテナはまだ理解していない。その時、それは起こった。
「「「っ!?」」」
なんと、真耶がリーゾニアスに触れただけで凄まじい威力の斬撃が放たれたのだ。その斬撃はその場にいたものに攻撃をする。しかし、ジャンプしたモルドレッドとアーサーはそれを躱すことが出来た。
アテナは何かを察したのか咄嗟にイージスの盾を構える。しかし、斬撃はその盾を貫通してアテナを襲った。そのせいで腹の辺りを深く切り裂かれる。
ロキは何も理解できずに体を両断される。そして、目線が落ちていきながらも真耶を見た。その真耶は淡い紫色の光を放っていた。
「まや……真耶!あなたやったわね!」
モルドレッドは真耶を見てそう叫ぶ。そして真耶に襲いかかろうとした。しかし、その後ろからアーサーが来てモルドレッドを取り押さえた。
「やめろ!今の真耶と戦っても勝ち目は無い!見ろ!?さっきとは全く様子が違う!下手を打てば殺さねかねないぞ!」
アーサーはそう叫びモルドレッドを連れその場から逃げ出した。ロキも何かを察してユグドラシルの根を生やす。そして、その中に逃げ込む。
「ま……待って……」
アテナは弱りきった声でそう言って真耶を見た。真耶の目に光はなかった。いや、あるのかもしれないが、濁りきっているせいで何も見えない。今の真耶からはただ、全てを消すことしか感じられなかった。
「止めて……お願い……!」
アテナは失禁しながらそうつぶやく。その掠れた声はまるで泣いたあとの子供のようだ。
しかし、その時突如としてアテナに救いの手がさしのべられる。なんと、アレスが助けに来たのだ。アレスはアテナの体を抱き抱えると、音のような速さでその場から退散した。
「ありが……とう……」
アテナは吐血しながら掠れた声でお礼を言う。そして、気絶してしまった。アレスは変わり果てた真耶を後ろ目にその場を去った。
「アイティール……またせたな」
真耶はそう言って謎の文字を作り出す。そして、それをアイティールの周りにいくつも放った。すると、アイティールの傷が全て塞がり元通りになる。
それを見た真耶は安心しきったのか、いつもの状態に戻った。アイティールはそんな真耶を見て立ち上がる。
「ありがとにゃ」
アイティールがそういった時、真耶は気を失ってアイティールの方向に倒れた。途中で真耶の体を抑えたアイティールは嬉しそうに微笑みその場から離れたのだった。
読んで頂きありがとうございます。