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モブオタクの異世界戦記Re  作者: 五三竜
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第144話 神羅万象を切り裂く者

 バタンという音とともにケイオスが倒れる。そして、真っ赤な血が地面に流れ出し、地面を赤く塗りつぶす。冷たくなっていくその手を見つめながらケイオスは静かに魔力を溜め始めた。


「あらあら、やっぱりケイオスじゃ真耶には勝てなかったわね。まぁ、見えてたことなんだけど」


「そんな……!」


「どうする?こっちも決着をつけるかしら?」


「え?あ、えと、いや……っ!?」


 突然の質問に奏は言葉が詰まる。すると、ペルセポネは容赦なく奏の腹を殴った。


「おぇ……!」


 その一撃は重たく、奏は嘔吐してしまう。


「あら、この程度でそんなふうに……弱いわねぇ」


 ペルセポネはそう言って奏にその腕を向けた。


「殺すわ。どうせまた違う人が来るのだからね」


「っ!?どういうこと……!?」


「You need not to know……」


「え?」


「あなたが知る必要のないことよ」


 ペルセポネのその一言でその空間は黒く染った。そして、奏の腹に腕が突き刺さる。しかし、痛みなど何も感じない。


 気がつけばその空間は元通りになっていた。そして、奏の腹の中心には腕1本分の穴が空いていた。そこからは大量の血が流れている。そして、奏の意識は闇へと飲み込まれていった。


「……はぁ、またこうなってしまったわ。これで何人目かしら?」


「分からないね。もう体と分離してから何年経つと思ってんの?」


「数十万年は経過してるわね」


「なんだ、分かってるんだ」


 真耶はそんなことを言ってペルセポネに向かって歩き出す。ペルセポネはそんな真耶に向かって言った。


「誰があなたを育ててきたと思ってるの?」


「……さぁね」


 真耶はそう言って奇妙な笑みを浮かべる。そして、少しだけ殺気を放つとケイオスの方向を見た。


「トドメを指しておくよ。いつも通りね」


 そう言って左手を構える。その爪は完全にケイオスの心臓をロックオンしていた。そして、無慈悲なその爪は容赦なくケイオスの左胸を貫く。


「……」


 しんと静まりかえるその空間に一瞬だけ血が飛び散る音が聞こえた。そして、大量の血がケイオスの周りに流れ出し、大きな水たまりを形成する。


「また、チャンスを逃しちゃったな……」


 そう呟いた時だった。


「っ!?」


 突如として真耶に攻撃が飛んでくる。真耶はそれを躱すと静かに振り返った。すると、そこには驚きの人物がいた。なんと、そこに立っていたのは奏だった。奏は血が滴る腹を押えながら震える足で必死にたっている。


「ケイオス……から……離れろ……!」


「無理な要望だ。死ね。”アンダーフォース・ブラストオメガ”」


 真耶の手から淡い紫色の光線が放たれる。それは、フラフラの奏の右肩を貫いてしまった。奏はその光線を受けて吹き飛ばされてしまう。


「あぐぁ……!」


 奏は言葉にならない叫び声を上げて涙を流す。そして、血がふきでる肩を抑えながら何とか意識を保とうとする。


「全く……ペルセポネ。お前がきちんと殺しておかないからこうなる。お前は詰めが甘いんだよ」


「悪かったわ。でも、後でとどめを刺すつもりだったのよ」


「その結果がこれだ。これで2人のうちどちらかが殺されていたらどうした?」


「あなたねぇ、散々言ってるけどあなたにも言えることよ」


 ペルセポネは少し怒ったような口調で言った。真耶はその言葉を聞いて直ぐに振り返る。すると、そこにはケイオスが立っていた。


「っ!?生きていたのか!?」


 真耶は思わずそう叫ぶ。しかしケイオスはその言葉に反応することなく静かに睨みつけるだけだ。そして、その目には金色の時計が浮かんでいる。


「なるほど、クロニクルアイの力か。久しぶりに楽しめそうだな」


 真耶はニヤリと笑ってそんなことを言う。しかし、ケイオスは殺気を放つだけで何も言わない。


「俺を殺すか?やめておけ。無理なことはする必要が無い。それとも、お前のその”パクリの技”で俺を殺すか?」


 真耶がそう言った時、奏が掠れた声で言った。


「パクリ……って、どういう……こと……!?」


「あ?知らねぇのか?今もう1人の真耶が使っている理滅はな、”アーサー”の魔法なんだよ。それを真耶が自分のモノとして使っているだけ。要はパクリなんだ」


 真耶のその言葉を聞いた奏は目を丸くしてケイオスを見る。そして、少しだけ涙を流した。


「じゃ、じゃあ……本物……じゃ、ない……から……」


「そう、俺には通用しない。人の魔法で勝てると思うなよ。ちなみにだが、真耶の本当の魔法とか魔力は俺が持っている。だから、ケイオスにももう1人の真耶にも使えない」


 真耶はそう言って恐怖に満ちた笑みを浮かべる。その言葉を聞いた奏はついに絶望してしまった。目から光を失い涙を垂れ流す。


「ハハッ!いい判断だ!そうして絶望して死ね!”ニトロバースト”」


 真耶がそう唱えた時、奏の顔の前に赤い玉が発生する。それは、急激に赤く光り始め、まるで爆発寸前かのように震え出す。


「……やだ……死んじゃう……」


 奏はそう呟いた。その目には光は既にない。


「……」


「……」


「……」


 しばらくの間沈黙が流れる。しかし、いつまでたっても爆発しない。真耶はその異常なことに気がつきケイオスを見た。


「……ま、止めるよね。普通は。確かに奏が絶望するのもわかるよ。だって、勝ち目が無さそうだからね。でもね、君達はまだ知らないのだよ。俺は俺で、新しい魔法を作り出したことを」


「っ!?どういうことだ?」


「後で見せてやるよ。とりあえず、これは返すよ」


 そう言って先程の赤い玉を手元に吸い寄せる。そして、真耶になげつけた。すると、それは真耶の前に来たところで大爆発する。


 真耶は咄嗟に防御結界を張ることでその爆発から自分を守った。


「貴様……よくも……っ!?」


 爆煙から真耶が出てくる。真耶は直ぐにケイオスの姿を確認した。すると、既にケイオスは目の前まで来ていた。そして、その手には剣が握りしめられている。


「ハハッ!その剣1本で俺を倒す気か!?」


「どうだろうね」


「……」


 真耶はケイオスの余裕そうな声や顔を見て少しだけ身構える。


「真耶!気をつけなさい!嫌な予感がするわ!」


「分かっている!先手必勝だ!”アンダーフォース・深淵斬しんえんざん”」


 真耶は剣を召喚しケイオスに斬りかかった。しかし、ケイオスは微動だにしない。逃げようともせずただ剣を横に振れるように構えるだけだ。


 だが、真耶の攻撃はケイオスに向かってきている。だから、真耶の攻撃でケイオスの左腕は深く切り裂かれてしまった。しかしケイオスは腕がちぎれそうになりながらも微動だにしない。ただ、蔑むような、憐れむような、よく分からない目で真耶を見るだけだ。


「お前……なんなんだよ!こっちはずっと待ってたんだよ!それが分かんねぇのか!?弱いくせに何度も何度も来やがって……雑魚はすっこんでろよ!何も知らねぇ奴が……そんな目で俺を見るなよ!”アンダーフォース・冥王めいおう状態モード”」


 真耶は怒り狂い全身を淡い紫色の光で包む。そして、とてつもない殺気を放ち剣を振り上げた。


「お前に何がわかる!?全てのことから目を逸らしたからこっちに来たんだろ!?だったら死ねよ!」


 そう言って剣を振り下ろす。その剣には淡い紫色の光が纏わりついている。ケイオスはその剣を見て少し目を瞑り開いた。


「っ!?」


 そして、真耶の腕は完全に止められた。その腕の周りには謎の文字が纏わり回転している。


「クロニクルアイだよ。その腕はもう動かない。あと、さっきの質問の答えだけど、知らないが俺の答えだよ。いくらお前が何を言おうと、俺は知らない。お前がイザナミと出会う前から離れてたのだとしたら、20万年は1人だったんだろうが、それも知らない。だからもう黙れよ。あ、ちなみにだけどね、どうやら俺はこっちに来た時記憶が開放されたようでな、ほとんど思い出したよ。ま、そういうことだからさ、終わりにしよっか」


 ケイオスはそう言って自分の左腕の傷を治す。


「良かったよ。お前が本気を出してくれて。じゃないとこの技使えなかったから。あと、ペルセポネがなぜ助けに来なかったのか教えておくけど、まぁ俺の目を見たらわかるよな?」


 ケイオスはそう言って右目にクロニクルアイを浮かべ、左目に孤独の眼アインザムソリタリウスをうかべた。


「っ!?その目は……!?」


「向こうとこっちは連動しているんだ。時間軸は違うんだけどさ。じゃ、ここいらでさよならだね。”この世に存在する物全てを切り裂け……神羅万象斬しんらばんしょうざん”」


 その時、真耶の体が横に真っ二つに切り裂かれた。

読んで頂きありがとうございます。

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