第133話 憎悪と純愛
「っ!?」
「っ!?」
「真耶!にゃんで!?か、鏡ではね返せたはずにゃのに……」
「バカ野郎!モルドレッドの技は光だけじゃない。熱も帯びておるんだ!だから、鏡なんかじゃはねかえせるわけないだろ!」
真耶はそう言ってアイティールに怒鳴る。そして、穴が空いた自分の腹を見ながら立ち上がった。
「真耶……あなたはその子を選ぶのね」
モルドレッドは真耶を見ながらそういう。すると、アイティールも言った。
「そうにゃんよ……真耶は私を選ぶにゃんか?」
2人の悲しげな目が真耶に突き刺さる。真耶はそんな2人を一瞥すると、苦しげな表情で言った。
「本当の愛を見つけるんだ。俺が本当に好きな人……本当に愛している人をな。だからこそ、お前には生きてもらわなければならないんだ」
「はにゃぁ……にゃ、にゃに言ってんにゃ!」
アイティールは真耶の言葉で照れてツンツンする。
「そうよ。何言ってるの?あなたに私達のどちらかを決める権限はないわ。あなたは私の手の平の上でずっと踊ってればいいの。全ては私が決めるわ。束縛して、制限して……そうね、仲間にも合わせないわ。そうでもしないと私の気が収まらないもの。嘘をつかれて記憶を消された上に、不倫でされちゃったら、二度とそんなことさせたく無くなるもの」
モルドレッドはそんなことを平然と言ってのける。その様子はこれまでのモルドレッドと違い、どこか真耶に怒っているようだった。
「っ!?まさか、記憶が戻ったって……アーサー!お前がやったんだろ!出てこいよクソボケが!」
思わず真耶はそう怒鳴る。すると、モルドレッドは言った。
「酷い悪口ね。全ては自業自得だってのにずっと……この何万年間かずっと黙ってたんでしょ?嘘をついて……つき続けて来たんでしょ?ほんと、人の心を弄ぶのが得意ね。だから仲間なんて出来なかったんじゃないの?」
モルドレッドの言葉は真耶の胸に深く突き刺さる。真耶は悪口を言うモルドレッドを見て少しだけ怒りを見せる。
「でも、そんなあなたを嫌いになれないなんて皮肉なものよね。なんでなのかしら」
「……さぁな。……アイツの中のイザナミの心が、俺の事を嫌いにさせないようにしているのか……」
「何?」
真耶の呟きにモルドレッドが反応する。真耶はモルドレッドの問いかけに対して答えた。
「なんでもないさ。そう……なんでもないよ。ただ1つ言えることは、それ以上敵対したり深く突っ込んできたりするようなら、俺は容赦なくお前を叩き潰す。それだけだ」
「……へぇそう、だったら私もあなたを叩き潰すわ。そして改めてこの気持ちの招待を調べる。そのためにあなたには一旦半殺しくらいになって欲しいわね」
「そう言われて素直に従うバカはいないよ。とりあえず、帰ってもらう」
真耶はそう言ってモルドレッドの前に出た。そして、戦う意思を見せつけ殺気を強める。
すると、後ろからアイティールが話しかけてきた。
「変わるにゃ。にゃあがやるにゃ」
アイティールの武器を構えて殺気立っている様子を見ると、モルドレッドと戦いたがっているのが手に取ってわかる。
「なんでだ?」
「にゃんででもにゃ。言葉では現せにゃいが、にゃんでか戦わにゃいといけにゃい気がするにゃ。それに、相手が女の子で妻だったら戦いにくいにゃんよ」
「そんなことは無いぞ」
「そこは”そうだにゃ”って言うもんにゃ!」
アイティールは真耶の言葉を聞いて怒る。しかし、真耶はそんなアイティールの事など気にすることも無く言った。
「……だいたい事情は分かったよ。本来ならダメだと言うところだが、今回は特別に許してやる。ただ、条件が3つある。それは……死ぬな、負けるな、殺すなの3つだ。これらは絶対に守れ」
「分かってるにゃんよ。とにかく無力化すればいいにゃんね」
アイティールは簡単そうにそう言ってのける。しかし、真耶は注意するかのように言った。
「相手を軽く見るな。例え相手がモルドレッドでなくても相手の力量を測り違えるのはやめろ。それに、本来は半殺しくらいで無力化して欲しいが、最悪殺してもらっても構わない。お前が死ぬよりマシだからな」
真耶はそんなことを言ってのける。アイティールはその言葉を聞いて少しだけ頬を赤らめると、それを隠すかのように顔を隠しながら言った。
「じゃ、じゃあ、にゃあからも命令するにゃ。絶対に負けるにゃにゃ。そして怪我もダメにゃ。失敗したらにゃあの勝ちだから、後で一日だけにゃあの奴隷になるにゃ」
「は?なんで勝ち負けがあるんだよ。ま、いいけどさ、その代わりに俺がお前を助けたら裸で土下座だからな」
「っ!?」
真耶の言葉でアイティールは顔を真っ赤に染め上げる。その様子はまるで、茹で上がったタコのようだ。
そして、アイティールは自分の猫耳をぺたりと閉ざし、真っ赤な顔を隠しながら言った。
「にゃ、にゃまぬるいにゃ……!にゃあが負けたら、1週間真耶にエッチな服を着て御奉仕するにゃ!」
アイティールは真っ赤な顔でそんなことを言い出す。さすがにその言葉を聞いた真耶は呆れてしまった。そして、当然モルドレッドも呆れた。おそらくどこかにいるアーサーも呆れてるのだろう。
「にゃ、嘘じゃにゃいにゃんよ!」
「……うん。そうだね」
真耶はアイティールに哀れみの目を向ける。すると、アイティールは頬を膨らませ、顔を真っ赤にし、目に大粒の涙を浮かべながら真耶を睨みつけた。
「そう怒んなって。とりあえずお前のやる気は十分わかったよ。だから、俺の背中は任せたよ」
「任されたにゃ!」
真耶の言葉にアイティールはそう答えてモルドレッドの方向を向いた。真耶はそんなアイティールと背中合わせになるように反対側をむく。
「そろそろ出て来いよ!出てこないなら、その死体を誰にも拝ませないように消し飛ばすぞ!」
真耶は虚無の空間に向けてそう怒鳴った。すると、そこからアーサーの姿が出てくる。
「やっぱりいたか……。とりあえずケガだけはするなよ」
真耶はアイティールにそう言う。すると、アイティールも言い返すように言った。
「そっちこそ、怪我したら許さにゃいにゃ」
2人はそんなことを言い合って不敵な笑みを浮かべる。そして、2人の背中がトンッと触れた時、2人は同時に走り出した。
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