第132話 再開
「にゃにゃぁ……酔ったにゃん」
アイティールはそう言いながら真耶の手の上から降りる。
「うるさい。こんなことで酔ってたら、あの目玉なんか見れないだろ!……いや、普通に見れないか」
真耶は自分で言って自分で納得しながらそんなことを言う。
「てか、熱かったんだけど!もうちょっと猫を労わって欲しいにゃ!聞こえにゃかったにゃ?ずっと『アチアチ』言ってたにゃ!お尻もちょっと燃えたにゃ!」
「もっとうるさい。青白い炎なんだから燃えるわけないだろ!……いや燃えるな。まぁ、炎だし普通か」
「さっきからずっと納得してるにゃ!真耶が悪いにゃ!」
アイティールはそう言って真耶の背中に飛びつくと、ポカポカと頭を殴り始める。
「おいやめ……ろ……アイっぴ、静かにしろ」
アイティールは真耶の言葉を聞いて少し黙る。真耶は何かを気にするかのように周りを確認し始めた。
背後には城壁があるはずだが、先程の真耶の攻撃により穴が空いてしまっている。真耶はほんの少しだけ姿勢を低くして剣に手をかける。
「……アイっぴ……舌噛むから歯を食いしばれ」
真耶がそう言った刹那、鋭い斬撃が飛んでくる。真耶はそれを見て後ろに後退し避けると、剣を抜き斬撃が飛んできた方向に向けて斬撃を放ち返す。
「”真紅・燃焼波”」
炎を纏った斬撃が真っ直ぐと空に向かって飛んでいく。すると、唐突に斬撃が切り裂かれた。
「そこか……。”紺青・激流閃・連撃”」
真耶は連続して水の刃を放つ。激流のように激しい水の流れを持つその斬撃は、不自然な場所で2つに切り裂かれた。
しかし、真耶はそれを見て笑う。そして、切り裂かれた斬撃を見て見えない何かに向けて手を掲げた。
「とりあえず確保だ。”水獄牢”」
真耶は見えない何かを水の牢獄に閉じ込めた。そして、少しだけ手を握りしめる。
「誰だ?姿を見せろ」
「……」
「もうお前の負けは確定している。諦めろ」
真耶はそう言って握りしめる力を少し強くする。すると、それに呼応して水の牢獄の水圧が上がった。
「俺は容赦はしない。お前の存在が敵という可能性が高い以上殺す他ない」
真耶はそう言って握りしめる力を強めていく。すると、水圧もどんどん上がっていく。
「……」
「……」
「……」
「……」
真耶の握りしめる手が半分を超えた時、突如それは起こった。
「……っ!?にゃにゃ!?あぶにゃいにゃん!」
突如アイティールが何かを避けた。そのせいで真耶にぶつかりバランスを崩す。そして、水の牢獄は壊され中にいた人が解き放たれた。
「しまっ……っ!?」
なんと、真耶に向けて謎の弾丸が飛んできた。それは、赤い光を放ち、圧縮されたエネルギーが溢れ出ていた。
「……」
「真耶!大丈夫にゃ!?誰にゃ!?邪魔してるのは!」
「私よ。私があなたの邪魔をしてるわ」
アイティールの問いかけに女の子が反応する。その女の子は赤く長い髪に赤い目、背はそこまで大きくなく子供のような体型、服はちょっと露出が多い戦闘服を着ていた。
「あにゃたは……」
「わかるでしょ?私のこと」
「……分かるにゃんよ。当然真耶もね」
そう言ってアイティールは武器を構える。すると、モルドレッドは首を振りながら言った。
「やめた方がいいよ。あなたじゃ私に勝てないから」
「やってみにゃいと分からにゃいにゃ。例えあにゃたが真耶のために動いていても、真耶に攻撃するのにゃら倒すしかにゃいにゃ」
「へぇ、そう。あなたも真耶が好きなのね。”エンペラーレイ”」
モルドレッドはそう言ってアイティールに攻撃を放った。無慈悲にも放たれたその赤い光線は地面を抉り、消し去りながらアイティールにおそいかかる。
「にゃめるにゃにゃ!”忍法・封天夢”」
アイティールは向かってくる光線に向けて巻物を取り出しその文字が書かれている方を突き出す。すると、その文字一つ一つが光を放ち始め、光線を吸収し始めた。
「後ろががら空きよ」
モルドレッドはそう言いながら赤い光線をいくつも放った。そして、アイティールに向かって全方向から攻撃する。
「やるにゃんね……!」
アイティールはその光線を見て少しだけ汗を垂らす。
「どうやらこれは防げないみたいね」
「……!ま、まだそうとは決まってにゃいにゃ!先を見て……見て……み、見えにゃいにゃ……!どの未来も死が待ってるにゃ……!」
アイティールはそう言って両手足を震えさせる。そして、目に少しだけ涙をうかべた。
「……はぁ、ったく、仕方ないやつだ」
真耶はそう言いながら右手に光を溜めてアイティールの元まで飛ぶ。そして、アイティールの足元に叩きつけた。
その刹那、かなり強い光が一瞬だけ輝く。そして、その光は不思議なことにモルドレッドの攻撃を消してしまった。
「っ!?なんで!?」
「簡単な話だ。光は横波……だが、横波と言えど波に変わりない。お前が放った横波と逆位相の波をそれぞれにぶつければ相殺することは容易い。もしくは固定端反射で逆位相を無理やり作り出すか……だな」
「……そんなことで相殺出来るのね……!」
「全く……急に喧嘩するなよな」
「無理な相談ね。だって、そこの猫女も真耶を狙ってるんでしょ?敵は潰しておくべきでしょ?それに、その女は……いや、これは別に構わないわ。私も同じ立場だから」
「何を言ってる?」
「なんでもないわ。ただ、1つ言えることは記憶というものは根強く体に刻まれてるってことよ」
「っ!?」
真耶はその言葉を聞いて言葉を失った。そして、目を見開き殺気を放ちながら剣に手をかける。
「お前……記憶が……!?」
「えぇ、戻ったわよ。戻ったからあなたに会いに行こうと思ったわ。でも、あなたはそうして新しい女を作ってた……。そんな浮気性な夫に私の恐ろしさを教えてあげるわ」
モルドレッドはそう言って手をポキポキ鳴らした。
「……まずいね。記憶が戻ったからこそ、嫉妬心が強くなったか」
「そういうことよ。”エンペラーレイ”」
モルドレッドは容赦なくアイティールに攻撃をした。
「アイっぴ!避けろ!」
「にゃに行ってんにゃ?にゃめんにゃよ!”ミラーウォール”」
アイティールは真耶の言うことを聞かずに鏡の盾を作り出した。
「バカ野郎!」
真耶は慌ててアイティールに駆け寄る。しかし、モルドレッドの放った光線は既にアイティールの作りだした鏡に当たっていた。
「にゃにゃ!?」
そして、当然のように鏡を貫通した。その光線は容赦なくアイティールに襲いかかる。
「クソっ……!」
真耶は慌ててアイティールを突き飛ばした。そのおかげでアイティールは光線を避けることが出来る。しかし、それは真耶の腹部に直撃してしまった。
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