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モブオタクの異世界戦記Re  作者: 五三竜
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第128話 見える先の未来

「あーあ、せっかく速攻で潰せると思ったのに」


「やっぱり無理にゃんよ。普通殺られそうになったら本気出すにゃんよ」


「ま、当たり前か。じゃあ、どうする?俺達は本気を出すか?」


「当たり前にゃんよ。手を抜いて勝てると思ってるにゃ?」


 アイティールのその言葉に真耶はニヤリと笑う。そして、楽しそうに笑いながらアイティールに言った。


「本気を出すのにも段階がある。1、今の俺が出せる本気を出す。2、クロエと一緒に本気を出す。3、アイっぴと一緒に本気出す。この3つがある。どれがいい?」


「意地悪だにゃ」


「当たり前だろ?俺はドSだ」


「はぁ、確かにそうにゃんね。じゃあ、どうすればいいにゃ?」


「手を合わせれば良い。そしたら俺が勝手に魔法を発動する。あと、俺一人じゃ出来ないからクロエも混ぜるけど、3人でやった事ないからどうなるか分からんぞ」


 真耶はそう言ってアイティールに手のひらを向ける。アイティールはその手のひら向けて自分の手を合わせた。


「”結合ユニオン”」


 その時、3人の魂が融合していく。光り輝くその魂は、それぞれの光を混ぜ合わせながら新しい光を作っていく。


 そのせいもあってか、真耶の体も光を帯び始めた。そして、その光はさらに明るくなっていき、その場を昼間のように明るく照らす。


「っ!?なんの光だ……!?」


 ポセイドンはその光を見て驚く。そして、すぐに真耶に攻撃しようとした。しかし、その光に目が眩み、中々攻撃が当たらない。


 それでもポセイドンは攻撃をする。すると、そのうちの一つが遂に真耶に向かって飛んでいきはじめた。どうやらその光に慣れ、狙いを定められるようになったらしい。水の槍が真耶に向けて飛ばされる。光に包まれた真耶はその光の中から水の槍を見た。


「”理滅りめつ歪曲わいきょく”」


 その時、唐突に水の槍がゆがんだ。そして、この世の物理法則を無視して、真耶の隣に落ちる。真耶はその槍を一瞥すると、すぐにポセイドンの姿を見た。


 仰々しい服装に金ピカの武器や防具。トライデントは水が巻きついており、神が使っていると言われればなんの遜色もないものだ。


 それに比べて、真耶の姿は静かな雰囲気が出ていた。それほど派手では無い服装に剣を持っている。その静けさは、まるで暗殺者だ。


 しかし、そんな真耶にも仰々しい部分はある。なんと、真耶の体の周りに謎の立体が浮いているのだ。それは、静かに空中を浮遊して、真耶の周りを回っている。しかも、体に謎の線が入り、未来感を漂わせている。


「本気と本気のぶつかり合いだな。手を抜けば殺されるぞ」


 真耶は自分の体の中にいるアイティールとクロエに話しかける。すると、頭の中に直接言葉が送り込まれてきた。


『問題ないわよ』


『問題にゃい』


 真耶は2人の言葉を聞いてニヤリと笑うと、静かに剣を抜いた。その剣も線が入り未来感が漂っている。


「どんな技を使えど俺には勝てん。不可能というものだ」


 ポセイドンはそんなことを真耶に言った。しかし、その言葉に真耶は笑う。そして、煽るように言った。


「さっきまで追い込まれてたやつが何言ってんだよ」


 真耶のその言葉にポセイドンの堪忍袋の尾が切れる。そのため、凄まじいほどの殺気とともに、トライデントに魔力が溜められていく。


「死ね。”海神の鉄槌(ポセイドハント)”」


 ポセイドンの手からトライデントが投げられる。そして、トライデントはすぐさま強力な雷を纏い、真耶を襲う。


「無駄だね」


 真耶はそのトライデントを難なく躱す。さらに、そのトライデントから放たれる雷すらも全て避けてしまった。そして、そのまま飛び上がり空中に舞う。


「”食らいつけ”」


 ポセイドンがそう言うと、ポセイドンの背後にいた3匹のヤマタノオロチが真耶に向かって襲いかかってくる。ヤマタノオロチはその口を大きく開き真耶を食べようとした。真耶はそれを見てニヤリと笑うと、即座に剣を構える。


「ヤマタノオロチと言えど、首を着られれば生きてはいけまい。”星剣せいけん星雲破壊コスモブレイク”」


 真耶は首元を狙って剣を振る。すると、首元から唐突に破壊されていく。そして、バラバラになっていくヤマタノオロチを見てニヤリと笑った。


「やっぱり威力が上がっている。さすがは龍と猫だな」


『違うわよ!私は龍”神”よ!』


『にゃあも猫じゃなくて、”神”にゃ!』


 2人は真耶の言葉にそう反論してくる。すると、真耶は楽しそうに笑って言った。


「あはは。冗談だよ」


 真耶はそう言うと静かに地面に着地する。その時に少しだけ足に衝撃が来た。


「こういう時も、水が入ったバケツを使ったらダメージ0だよな」


『それは禁句にゃ』


 真耶の言葉にアイティールがツッコム。その時のアイティールの言葉と顔がマジだったため、真耶はそのことについて触れるのをやめた。


『てか、真耶はそうやって冗談ばっか言うけど理解してるの?自分にタイムリミットがあることを』


「……」


『分かってるんでしょ?』


「……」


『黙ってないで答えなさい。分かっているのならのんびりはしていられないのよ?』


「分かっているさ。だからこそ慎重に行かなければならない。少しの未来も間違えられないんだ。よく見て正確な選択肢を選ぶ必要がある」


『正確な選択肢?』


「そう、正確な選択肢だ。たった一つのミスで、全てが狂う。たとえそのミスが、足を置く場所が少しズレたとか、瞬きをする瞬間がズレたとか、そういうしょうもないことでも世界は変わる。だから、寸分の狂いなく正解のルートを進まなければならないんだ」


 真耶はそう言ってその場から後ろに飛び退いた。すると、さっきまで真耶がいた場所にトライデントが飛んでくる。


「俺達が今やるべきことは、ポセイドンを殺すことじゃない。ルートを間違えないことだ」


 真耶はそう言って目を閉じると、静かにその目を開く。すると、その目には白く光る円が浮かんでいた。


世界眼ワールドアイ。世界の全てを見る目。地図みたいなもの。だが、それは表の見かけの能力だ。真の能力は違う。この目の力は、たくさんの未来を見ることが出来る。アイっぴと同じ能力だ」


 真耶はそう言うとその場を強く蹴りポセイドンがいる場所まで距離を詰めた。ポセイドンは空中に浮いており、空から攻撃を仕掛ける。真耶はその攻撃を全てよけ、間合いに入り込んだ。


「”雷鳴らいめい残響ざんきょう乱舞らんぶ”」


 その場に巨大な雷が1つ落ちる。その雷は凄まじい轟音を掻き鳴らし、その場の全ての音を飲み込む。


「音で惑わそうと思ってるのか!?」


 ポセイドンはそう叫んでトライデントに水を纏わせる。そして、トライデントを真耶に向けて振り下ろした。すると、纏った水が手裏剣のように真耶に向かって飛んでいく。


「”真紅しんく円残華えんざんか”」


 真耶はその攻撃を切り裂き霧散させる。そして、ゆっくりと地面に着地した。


『ねぇ、真耶ってそんなこと考えながら戦うタイプじゃなかったでしょ?急にどうしたのよ?』


 クロエは疑問に思ったのかそう聞いてくる。それに対して真耶は言った。


「いつもは気にしていなかった。だが、今回俺は気にして未来を見て見たのだがな……そのどれもがバッドエンドに向かっていた。だから、ハッピーエンドに向かうには気にしなければいけないんだ。今回は特別にな」


 真耶はそう言って静かに剣を強く握りしめた。

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