第119話 激戦
「目眩しか!?」
デメテルはその花吹雪を見てそう叫んだ。そして、花吹雪の中を見渡して魔法を放つ。
「めんどいなぁ!”天潰し”」
デメテルがそう唱えると、花吹雪は一気に圧縮される。そして、さっきまで散りばめられていた花吹雪は一気に潰され無くなった。
「っ!?どこに行った!?逃げたのか!?」
デメテルはそう言って全方向探す。しかし、どこにも真耶の姿が見当たらない。
「”真紅・加具土命”」
その刹那、黒く染った禍々しい炎がデメテルに襲いかかった。デメテルはその炎を見た瞬間、即座にその場から離れる。そうすることで炎から逃げる。
「何だ!?」
デメテルがそう叫んだ瞬間、真耶が剣を構えて突っ込んできた。
「っ!?」
「さぁ、死ねよなぁ!”真紅・鉄鮮華”」
真耶はデメテルに向けて容赦なくその刃を振り下ろした。その無慈悲な刃は炎を纏い、殺傷能力を高める。
デメテルはその刃を防ぐべく、目の前に存在する空気の変化を止め、無敵の障壁を作り出した。そのせいで、真耶の攻撃は防がれデメテルに届かない。
しかし、真耶はニヤリと笑ってデメテルを見た。普通なら、攻撃を止められ悔しがるところを、なぜか真耶は笑って見ていた。その、異常とも思える行為に、デメテルは恐怖を覚える。そして、それと同時に嫌な予感もした。この後になにか来る……そんな嫌な予感が脳裏に過った。
そして、その予感は的中した。なんと、真耶の持っていた剣とデメテルの作りだしたバリアが衝突した時、大量の火花が散ったのだ。その火花はある程度の範囲に広がると、爆発と共に花のような形になり大きくなっていく。
その火花はデメテルのバリアをすり抜け襲ってくる。流石のデメテルも一瞬焦ってその場からさらに離れた。
「逃げは負けだ!”雷鳴・雷閃”」
真耶はそう叫んでデメテルの前まで飛び、剣を振る。その神速にも満たった一閃は神と言えど、肉眼で視認するには厳しかった。そして、その一閃でデメテルは右腕を切り落とされる。さらに、それから発生した衝撃波でデメテルは地面まで叩き落とされた。
「かハッ……!クソ……!舐めるなよ!”世界玉”」
デメテルはそう言って手を前に突き出すと、背中に8つの土の玉を作り出す。その土の玉はふわふわとデメテルの背中に円形に並んで飛んでいた。
「今更遅せぇよ!”雷鳴・雷の舞”」
その時真耶の剣に雷がやどる。そして、たった一振で辺りの地形を歪ませるほどの威力だった。その剣から放たれた雷は、空中で4つに別れ、それぞれ容赦なくデメテルを襲う。
デメテルはそれを見てその場から逃げようとした。しかし、なぜかそれをやめて動こうとしない。そして、その雷が当たりそうになった時、背中にある玉を自分の前に持ってきた。その玉は、突如土から鉄に変わる。そして、雷を全て吸収してしまった。
「避雷針か……」
「これが世界玉の力さ。理を変えてなんにでもなれる。君じゃ勝てないのわかっただろ!”天礫”」
デメテルはそう言って地面に手を着いた。すると、とんでもない数の礫が真耶を襲う。真耶はそれを見て慌ててその場から離れた。
すると、その数秒後に真耶がいた場所に礫が飛んでくる。そのせいでその場の地面はかなり砕けてしまった。
「真耶!合体技するにゃ!”真紅・加具土命”」
そう言ってアイティールは黒い炎を出す。どうやらさっきデメテルを襲った黒い炎はアイティールが放ったものだったらしい。
「なるほどね」
真耶はその炎を見てニヤリと笑うと、剣に炎を宿らせる。そして、その炎を使って黒い炎を絡めとった。
「”真紅・炎神”」
真耶はその黒い炎を絡めとると、デメテルの間合いに入り込む。そして、その技を使った。すると、黒い炎が一瞬で無数の連撃となってデメテルを襲う。
「これが合体技にゃんね」
「”獄炎・倶利伽羅”」
その時、黒い斬撃は龍が巻き付くような形になってデメテルを襲う。そして、それはデメテルから逃げ場をなくし、死という未来だけを与えた。
「っ!?クソ……!これじゃあ世界玉も通用しない……!」
デメテルはそう言って焦る。その斬撃が当たるまで残り数秒もないだろう。そんな短い時間で考える。そして、何かを思いついたのか、両手を左右に広げて唱えた。
「”天地鳴動”」
その刹那、地面が凄まじい轟音を立てて揺れ始める。そして、巨大な亀裂を作り大地を壊す。
さらに、空からは巨大な雷が落ちた。竜巻も発生し豪雨も降る。その様子はまるで、天変地異のようだった。
「フフフ……これはまだ序の口だよ。これが本番だ!”天変地異”」
デメテルはそう唱えた。その言葉を聞いた瞬間真耶は少しだけ身構える。アイティールはその轟音だけでも耐え難いのに、さらに巨大な技来ると知って、真耶にしがみつく。
そして、気がつけば黒い炎は消えていた。どうやらデメテルの放った魔力量が多すぎて、黒い炎がかき消されてしまったらしい。その様子からも、次の技の威力が高いことを物語っている。
真耶は荒れ狂った大地を見て慌ててその場から離れた。そして、安全な場所まで逃げようとする。しかし、その揺れは激しく、進行方向には竜巻やら雷やらで塞がれている。
「逃げることは出来ない!これで終わりだよ!”崩天爆”」
今度はデメテルは空に魔力を放った。そして、巨大な爆発が起きて、空が壊れ始める。アイティールはそれを見て慌てて結界を張った。
「う〜!”神結界”」
「結界か……。これだと破られるぞ」
「分かってるにゃ!でも、これ以上は魔力の使用量が多すぎて使えにゃいにゃ!」
「魔力の量か……今の俺じゃあまり魔法は使えないからな。仕方ない」
真耶はそう言って魔力を溜め始めた。すると、補強しておいた暗黒樹が紅く発光し始める。それが、皮膚の上からでも見て取れた。その様子を見るだけで、とてつもない魔力の量が溜められていると分かる。
「っ!?だ、ダメにゃ!それを使ったら魔力回路が壊れるにゃ!」
「うるさい!ただを捏ねてるとお仕置だぞ!」
真耶は子供に叱るようにアイティールに言うと、プラネットエトワールを鞘に収め、リーゾニアスを抜いた。
「やらなきゃ殺されるんだ。それだったら、殺それる前に殺してやるよ」
真耶の右腕が赤く染っていく。灼熱に染っていくその腕は、まるで限界を超えているように見えた。
「……ん〜!ダメったらダメにゃあ!それをすると、世界は破滅するにゃあ!」
アイティールはそう言って真耶に飛びかかってきた。真耶はそのせいで転けてしまい、発動しようとした技が中断されてしまう。そのせいもあってか、紅く発光していた右腕は元通りになっていた。
「やめるにゃあ!絶対にダメにゃあ!それは死を意味するにゃあ!」
アイティールは泣きながら真耶にしがみつき、必死に止める。
「……」
その様子を真耶は静かに見つめた。そして、少しだけ考えて言う。
「分かった。止めるよ。止めるけど、お前はどうやってこの場を乗切るつもりだ?」
真耶はそう言って静かに立ち上がり、服を整えた。
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