第118話 運命を変えて
━━10分前……
デメテルは時空を超え魔界の入口へと来ていた。
「全く……なんで僕がこんなところに来なきゃならないんだ?」
デメテルはそんなことを言いながら、おどろおどろしい街並みをぬていく。その街にはなぜか人がいなかった。なんせ、神々がアヴァロンを襲撃したことで、魔界の兵士達が皆出向いているから。
デメテルは、誰もいなくなった街並みを見渡しながら、真耶がいる場所に向かう。目標は、真耶を殺すこと。
たとえ真耶がどれだけ弱っていようと、仲間がいては倒すことは出来ない。だが、誰もいない時を狙えば確実に殺せる。
デメテルはそう思って、真耶が1人だと思われる時を狙った。そして、その狙いは的中した。
真耶は檻に1人で閉じ込められていた。枷はつけられてないものの、武器を持っておらず周りに誰かいる訳でもない。
このままいけば確実に真耶を殺せる。デメテルはそう思って壁を壊し檻を破壊した。そして、中にいた真耶を殺した。
━━……という違う世界を、猫耳忍者は見たのだ。それも、3ヶ月前に。だから、この日を狙って真耶を監禁した。さらに、そこに1人にさせないことで、その『間違えたルート』を『正解したルート』に変えようとした。
そして、それが正解だったのか、間違いだったのか、それは今わかることとなった。命運は全て、真耶の勝敗にかかっているのだった。
「先に言っておくにゃ。未来は全て真耶に託されたにゃ。だから、負けることは許されにゃいにゃ」
「はぁ?なんでいきなりそんな重たいものを背負わなくちゃならなくなるんだよ?」
猫耳忍者の言葉に真耶は半分呆れながら答える。すると、猫耳忍者はニヤニヤと笑って言った。
「にゃあの名前はアイティールにゃ」
「アイティール……アイテール……原初の神か。お前、もしかして神なのか?」
「今更にゃ!?」
真耶はアイティールの事実を知って頭が混乱する。そして、思考が止まって何も考えられなくなる。そうしていると、突如横から攻撃が飛んできた。
「うぉ!?」
真耶は咄嗟にその攻撃を避ける。
「危ないにゃ!」
「うるさいな!そう思うんなら技とか出して弾けよ!」
後ろからごちゃごちゃ言ってくるアイティールに真耶は半ギレで言い返す。すると、アイティールは少しだけムッとして言った。
「わかったにゃん!もうどうなっても知らにゃいにゃん!”雷鳴・武甕槌命”」
アイティールがそう唱えると、その右腕にバチバチと音を立てる雷がまとわりついた。アイティールはその手を素早く振り下ろす。その刹那、とてつもない轟音と共に猛り来るう雷が無慈悲に降り下ろされた。
「っ!?何なんだ!?この技は……!」
デメテルはそんなことを言いながらその雷を全て避ける。そして、真耶との距離を詰めようとした時、唐突にデメテルの前にクナイが飛んできた。
「油断大敵にゃ」
その言葉とともに煙玉の雨が降り注ぐ。その煙玉は瞬く間にその場を白く染めあげた。
「馬鹿なヤツだ!僕たち神は目で見ずとも感知することが出来る!」
「じゃあ感知するのが遅かったな」
真耶のそんな声が聞こえる。それと共に真耶がデメテルの前に現れた。真耶はリーゾニアスを握りしめて既に斬りかかってきている。
「っ!?クッ……!まずい……!」
デメテルは慌ててその場から離れようとした。しかし、簡単に離れられるものでは無い。真耶のリーゾニアスの刃が容赦なく首元に振り下ろされている。
「舐めるなよ!”神格化”」
危機に陥ったデメテルは、刃が触れる寸前のところで神格化をした。そうすることで発生する衝撃波を使い、真耶の刃を跳ね除ける。さらに、神の力を全力で使うことで真耶を殺そうとしたのだ。
「来たにゃ。気をつけるにゃ」
「そうだな。まぁ、何回か見た気とあるからだいたいわかっているんだけどね」
「他の人と一緒にしない方が良いにゃ。デメテルは神の中で唯一理に干渉出来るにゃ。神格化したらその能力が強化されるにゃ」
アイティールはそう言ってより強い力で真耶にしがみつく。真耶はその話を聞いて、かつアイティールの握る力が強くなったのに気がついて、直ぐにその場の地形を確認する。
一番最初に真耶が壁を切ったことで、1部の壁だけは外が見えている様子だ。しかし、この場は壁に囲まれているのと変わらない。下手を打てば殺されかねないのだ。
「まぁ、フィールドは大きく使いたいよな。”旋風・裂空斬”」
真耶はリーゾニアスを回転しながら振り払う。すると、真空の斬撃が飛んでいき周りの壁を全て切り裂いた。すると、狭かったフィールドが広くなる。
デメテルは真耶の攻撃を空に飛んで避ける。そして、真耶を見下ろした。
「じゃあ、始めるか」
真耶がそう言った瞬間、デメテルは地面を操作して巨大なトゲを真耶の真下に作り出した。真耶はそれにすぐに気が付き難なく避ける。
そして、周りの状況を確認して少し離れた場所に着地した。
「どうするにゃ?逃げてばかりだと勝てないにゃ」
「それは分かってんだけどな。神格化されてしまったらこっちからは手が出せない。出方を考えなければならない」
「だけど、後手に回ってれば殺されるにゃ。相手は理に干渉できるにゃんよ。真耶とほとんど同じ能力を持ってるにゃ」
「それは分かっている。わかっているからこそ手が出せないんだ。下手に手を出して反撃でもされればどうしようもない」
真耶はそう言って周りを見渡すと、先程デメテルが作り出した巨大なトゲに向かって走り出した。そして、右手の手首のシューターから悲しみの糸を出す。それは、真っ直ぐトゲにぶつかり突き刺さった。
「……素材は変わってないか。じゃあ、あのでかいトゲは土でできてるわけだな」
真耶はトゲの素材を知ると、それだけでデメテル の技のほとんどを理解する。そして、突き刺さった悲しみの糸に少量の魔力を流し込んだ。
その魔力は、真っ直ぐトゲの中に入っていく。そして、中心まで到達させ圧縮させた。
真耶は悲しみの糸を手元に戻すとトゲに登り始める。走るように登っていきてっぺんまで登る。
その刹那、トゲの付け根部分が大爆発した。その爆発は一気にトゲを粉砕し、かつ空に打ち上げた。
真耶はそのトゲの上に乗り、トゲと共に上空に飛び上がる。そして、その飛び上がる勢いを使ってさらに上に飛ぶ。そうしてデメテルの元まで向かう。
「とりあえず、帰って欲しいんだよね。それが出来ないなら死んでもらうだけなんだけど。”真紅・紅花の吹雪”」
その時、デメテルに向かって大量の赤い花びらが襲う。そして、改めて3人の戦いが始まった。
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