第117話 真実とは……
「……」
「……」
「……んっ……」
彼はゆっくりと目を覚ました。顔を上げるとそこには誰か人がいた。しかし、脳はまだ覚醒してないようで、目から得られる情報を未だに処理しきれておらず、誰かの判別ができない。
「ここ……は……?」
「牢屋だにゃ。あの時あなたが外に行こうとしたから、私が頼まれて眠らせたにゃ」
そう言って真耶の前に立った人は、何とあの猫耳忍者だった。真耶はその猫耳忍者の顔を見て呆れる。
「……なんだお前か」
「なんだとはなんにゃ!?私だって、好きであんたの監視してるわけじゃないにゃ!」
「じゃあ俺をここから出してくれよ」
真耶は楽しそうに笑いながらそう言う。すると、猫耳忍者は言う。
「それは出来ないにゃ。それをしてしまうと、わざわざ私がここまで足を運んだ意味が無くなるにゃ。そして、あの二人のためにならないにゃ」
猫耳忍者は少し暗い顔をしてそういう。当然だが真耶はそのことに対して食いつく。
「あの二人?どの2人だ?言ってみろ」
「言えないにゃ」
「またそれか?お前、口でも縫われてんのか?もしくは、封印魔法で閉ざされてるとかか?」
「そんなことされてないにゃ!それに、そうだったら今どうやって話してるにゃ!?」
「そりゃあ……腹話術だろ」
「出来ないにゃ!」
2人はそんな牢屋でするような話じゃないことを話して盛り上がる。しかし、猫耳忍者もさすがに話を進めたかったのか、ゆっくりと話し始めた。
「真耶、あなたがなぜ拘束されたのか、分からにゃいよね?」
「当たり前だろ?知ってたらこんなことをしてない」
「それもそうにゃね。でも、全てを教える訳にはいかにゃいにゃあね」
猫耳忍者は維持の悪そうな顔でそう言ってくる。その顔を見た真耶はゆっくりと猫耳忍者に近づいていく。
「にゃ、にゃんにゃ?文句あるにゃ!?」
「……文句は無い。ただ、お前の顔をぐちゃぐちゃにしたらどれだけ可愛くなるだろうかって考えてたんだよ」
「ごめんにゃさいにゃ。にゃんでも話すからするしてにゃ」
猫耳忍者は真耶のとてつもない殺気と圧力に負け即座に服を脱ぎ捨て土下座をする。真耶はそんな猫耳忍者を見ながら言った。
「へぇ、従順な猫じゃないか。やっぱりご主人様を舐めるなんてことはしないよなぁ?あと、しっぽって尾てい骨から生えてたんだな」
「それ今更にゃ?」
「いや、オタクにとってそれは大事なんだよ。しっぽがどこから生えているのか?尾てい骨から生えていると、その分リアルさが増すし、お尻から生えていればそれはロマンだ」
「とりあえず真耶は変態にゃんね」
猫耳忍者は呆れてそう言う。すると、真耶は少しだけムッとして言った。
「お前、何言ってんだよ。俺は変態じゃない」
「にゃ!?変態としか思えにゃいにゃんよ!この変態鬼畜悪魔!」
「だから違うと言ってんだろ!俺は変態じゃなくてド変態だ!」
真耶は清々しいほどの声量でそういった。猫耳忍者はその言葉を聞いて何も言えなくなる。そして、ゆっくりと服を着始めた。猫耳忍者が服を着終えると、真耶に向かって話し始める。
「とりあえず話を進めるにゃ。にゃんで真耶がここに拘束されたかにゃんだけど、その理由は私にゃ。私がサタンに頼み込んで、真耶をアヴァロンから遠ざけるようにしてもらったにゃ」
猫耳忍者から放たれたその言葉は驚きのものだった。真耶はその言葉を聞いて一瞬だけだが思考が止まる。
「何?どういうことだ?」
「そのまんまの意味にゃ。真耶、あなたは知らないだけなの。多分あなたは直感的に世界のルートを辿ってきた。だから、まだ見た事がないの。『失敗した先の平行世界』を」
猫耳忍者の口から驚きの言葉が出てきた。平行世界……それは、今自分がいる世界とは全く違う、もう1人の自分がいる世界。簡単に言えば、右の道を選ぶか左の道を選ぶかで、左の道を選んだのが今の真耶だとしたら、右の道を選んだ真耶がいる世界のことだ。
猫耳忍者は何故かそのことを話した。それは、真耶にさらなる疑問と驚きを与える。
「どういうことだ?平行世界がどうしたんだよ?」
「真耶、あにゃたはまだもう1人の自分を見た事がにゃいにゃ?」
「もう1人の自分?ケイオスのことか?」
「それは二重人格の内のもう1つの人格のことにゃ」
「じゃあ、もう1人の自分ってなんだよ?ドッペルゲンガーのことでも言ってんのか?だが、あれは自分の中の陰神が外に出ただけだろ?」
「うん。だから違うよ。もう1人の自分っていうのはね、パラレルワールドにいるもう1人の自分の事だよ」
「っ!?それが俺となんの関係があるんだよ」
真耶は一瞬驚くが、直ぐに冷静になりそう聞く。すると、猫耳忍者は言った。
「あにゃたはまだ知らにゃいにゃ。今こうして失敗したルートを辿っていると思っている人生が、実は正解のルートだったってことを」
「っ!?な、なぜそう言える!?お前は何者なんだ!?なんでそんなことを知っている!?」
「うふふ、当ててみるにゃ……にゃにゃ!?」
真耶はおちょくってくる猫耳忍者を押し倒した。
「こ、攻撃的だにゃ」
「煽るなよ。俺は今なぜか枷を付けられていない。襲おうと思えば襲えるんだぞ?」
「う〜怖いにゃあ」
猫耳忍者はそう言って小悪魔のような笑みを浮かべる。その顔を見た真耶は突然無言になって離れた。そして、なぜか檻の外を見る。
「どうしたにゃ?」
「いや、今のお前の顔が可愛かったから、カメラに収めようとしただけだ。だが、ここにカメラがないから今探してるところだ」
「やめるにゃあ!」
猫耳忍者はそう言って涙目になりながら真耶にすがりついてくる。しかし、真耶はカメラを探す手を止めない。そして、外を見ていてあることに気がついた。
「ん?」
「どうしたにゃ?」
「……いや、少し疑問に思ってな」
「だからなんにゃ?」
真耶の言葉に猫耳忍者は食いつく。そして、猫耳忍者も檻の外を見ようとする。そして、俺の外に衝撃的な光景が映っていた。
「おい、なんか地面が氷始めたぞ」
「ほんとにゃんね」
「なぁ?ここって魔界だよな?どこに作ったんだ?」
「普通の気候の場所だにゃ」
真耶はその言葉を聞いた瞬間嫌な予感がする。そして、直ぐに近くにあったリーゾニアスに呼びかけた。
「”来い”」
すると、リーゾニアスが真耶に向かって飛んでくる。真耶はそれを掴み取ると、檻を切り裂いた。
「俺から離れるな」
真耶はそう言って猫耳忍者にくっつく。そして、リーゾニアスを強く握り締め、意識を集中させる。すると、部屋の外の様子が見えてきた。外に人がいるのが分かる。その人は子供で、なぜか宙に浮いている。
真耶は、その子供に向かって斬撃を放った。
神速に近い一閃は空を切り裂きながら真空の斬撃を作っていく。その斬撃は檻の外の部屋の壁さえも切り裂き、その奥にいた子供を襲った。
しかし、突如としてその斬撃は消失する。
「危ないなぁ。いきなり殺しに来るなんて」
「それはお前もだろ?」
「それもそうだね」
そう言って現れたのはデメテルだった。あの時断罪の矢を放ったが、命拾いしたようだ。
「モルドレッドに助けられたか。それで、敵対してまた俺を殺しにくる。イカれてんな」
「言ってくれるね。当たり前だろ?助けられた狩りがあるからあの時は殺さなかったけど、普通なら皆殺しだよ?」
「ハハッ!ガキがほざくなよ」
「そう言ってられるのも今のうちだよ。今の君は片腕で魔法もろくに使えないんでしょ?だったら前みたいにはいかないよ」
「知ってるよ。だから、違う技で行く」
真耶はそう言って剣を構えた。すると、そんな真耶に猫耳忍者が飛び乗る。2人はおんぶのような格好をして戦いを始めた。
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