第109話 ロストテクノロジー
ぼたぼたと両腕が地面に落ちる。そして、その真下には真っ赤な水たまりができていた。
「あ〜あ、私のお洋服がまた破れちゃった。さっきから無駄だって言ってるのに、なんでそんなことするのかなぁ?」
フェアリルは切り落とされた両腕を再生しながらそう言う。その光景を目にした真耶達はすぐさまその場から離れた。そして、フェアリルの攻撃に備える。
「そんなに構えなくていいよ。どうせ防げないから」
フェアリルがそう言った刹那、唐突に真耶が吹き飛ばされた。辺りに凄まじい轟音を鳴らしながら古代遺跡の入口まで吹き飛ばされる。そして、階段に激突し止まった。
「がはっ……!ごホッ……!」
たった一撃で体の至る所に痛みが走る。そして、背中と頭、左の脇腹から大量の血を流す。
「な、何……だ……!?」
真耶は思わずそうくちばしる。そして、手に持っているプラネットエトワールを見た。その剣は、先程までとは違いボロボロで、ちょうど刃の真ん中あたりで崩れている。
「あらら、剣の腹なんかで防ぐからそうなるのよ。大事な大事な聖剣が壊れちゃったわね」
「……それは、お前もだろ?」
血を吐き出しながら真耶はそう言う。すると、フェアリルの持っていた妖精剣の刃が粉々に砕けた。
2人とも柄のみとなった剣を握りしめ見つめ合う。そして、その背後からムラマサが切りかかる。
「”闇影月”」
「無駄よ」
フェアリルは背後からの攻撃を魔法陣を使い防いだ。そして、その魔法陣を使って魔法を放つ。
「っ!?」
しかし、なんと真耶がフェアリルの顔を掴んで地面に叩きつけたのだ。そのせいで魔法陣は消える。
「なん……で……!?」
「残念だったな。お前が取らなかったこのアーティファクトの能力は再生だけじゃないんだよ。このアーティファクトの名前は『再生ペンデュラム』。しかしこれは表向きがな。裏向きは違う。その名も、『血呪のペンデュラム』。名前の通り血を操る能力さ」
真耶はそう言って右手に流れる血を針のように変えてフェアリルの首元に突き刺す。さらに、真耶の体に流れる血を剣のように変えフェアリルの体に突き刺す。
「あぐっ……!」
「これで終わりだな」
真耶はそう言いながら血を体から切り離し、立ち上がった。そして、再び手に流れる血を変え剣を作り、それでフェアリルの心臓に向けて突き刺した。
「あぐぁ……!」
フェアリルの口から悲痛な声が盛れ出してくる。
「もし、お前の能力が『不死』ではなく『再生』なら、これで死ぬ。たとえ再生を使おうとも、魔力を流すために必要な器官を先に潰した。もう魔法は使えない。これで本当に終わりだ」
真耶はそう言って剣を抜いていく。そして、自分の体にある傷を全て治した。
「よし、今のうちにこの場から離れるぞ」
真耶はそう言って無為達を移動させる。そして、出来るだけフェアリルから離れさせた。
フェアリルの姿が見えないくらいかなり遠くまで来たところで真耶は無為とフィトリアが咥えているボールを外す。
どうやら後ろで固定されていたらしく、自力では取れなさそうだ。しかも、その固定しているものがカラクリになっており、簡単に外れそうでもない。
「……クソだな。片腕では難しそうだ。ちゃんと俺に対して対策されている。ここでは出来そうもない。どこか宿に言って手伝ってもらいたいところだ」
「むむ!?むむむーむむ!」
「何を言っているのかさっぱり分からん。とりあえずゴーストの街は嫌なんだろ?そこじゃないところに行くから良いよ」
「むむん!むむむ!」
「あ?何言って……っ!?」
真耶は少し怒りながら振り返った。すると、そこにはフェアリルがいた。
真耶はフェアリルの姿を認識した瞬間、その場にいる全員を悲しみの糸で捕まえ離れさせる。そして、ボロボロになったブラネットエトワールを構えた。
「よくもやってくれたわね。あなたのせいで、私のペットが何人も死んじゃったわ。いや、元々死んでるから、成仏したってところかしら?」
フェアリルは訳の分からないことを言って近づいてくる。その様子からとても嫌な予感がする。
「ふふふ、そんなボロボロの剣で私を殺すの?その背中の剣は抜かなくてもいいの?」
「分かって言ってんだろ?」
「まぁね。伊達にあなたを観察してなかったわ。まぁ、あなたもかなりやり手だたけどね。全く分からなかったわ。上手く隠されていたからね」
「……」
「でもね、あなたも何も分かってないの。あなたは私のことをわかった振りをしてたんでしょうけど、何も分かってないの」
「……」
「ねぇ、とりあえずなんだけど、早く死んで」
フェアリルはそう言って巨大な魔法陣を3つ作り出す。
「……」
「むむ!むむむむむ!」
「むーむ!むむむむむ!」
無為とフィトリアはそう言って逃げ出す。しかし、真耶は何故か逃げようとしない。
「……逃げないの?」
「逃げないさ。逃げるばかりじゃ前に進めないからね」
そう言ってペンデュラムを取り出す。それは、前に猫耳少女が持っていたものだ。真耶はそれを首にかけ呪文を唱える。
「เหจวเขขจาลมชา่จบอเจ」
その場の全員はその言葉に聞き覚えがなかった。なんせ、この世の言葉では無いから。そもそも、何故真耶は12死星があそこまで嫌う死霊達が怖くないのだろうか……その答えはこのペンデュラムにある。
実は、このペンデュラムは古代先進武器なのだ。この8ヶ月間で真耶は忘却技術について研究した。そして、それを取り入れようともした。
そんな時、たまたま発見したのがこれだった。あの時不思議な力を感じて連れてくると、まさかオーパーツを持っていたのだ。
そして、この力を手に入れたことで真耶は忘却技術を取り入れることが出来た。だから真耶は誰に対しても怖がることは無い。
あと、普通に例は怖くないからだ。
「まぁ、何でもいいけどさ、不思議な感覚だよ。自分の体の中に魔力とは違う別の何かが入り込んでくる感覚ってさ」
そう言って真耶はプラネットエトワールを復元させ形を変えた。さらに、真耶の体に不思議な力がみなぎる。その力は魔力とはまた違った雰囲気を出し、真耶の体に不思議な紋様を浮かばせた。
「これがロストテクノロジーだ。”忘却状態”」
そして、真耶の体は発光し、左目の周りには線が描かれ、左目の中には特殊な紋様が浮かんだ。
体にはその力を流す回路のようなものまで浮かぶ。その姿は、これまで見た事もないほど美しかった。
読んで頂きありがとうございます。