第106話 流れた月日
「今回呼んだのは他でもない、古代武器が発見されたからだ。しかも、そのアーティファクトはかなり強い。神々に取られる訳には行かないものなんだ」
サタンは深刻な顔をしてそう伝える。すると、ペテルギアは少し軽そうにサタンに聞いた。
「それってどんな能力なんスか?」
「能力は『再生』だ。たとえどんな傷を負っても必ず再生する。それがそのアーティファクトの能力だ」
「再生って、神々にそれ必要なくないッスが?あいつら自分で再生出来るッスよね?」
「いや、そういう訳にはいかないんだ」
「何でですか?」
サタンの言葉に無為は聞く。すると、横から真耶が言った。
「神々に再生の能力は無い。奴らは再生をしているのではなく、ただ回復魔法で回復しているだけ。恐らくアテナも生きているだろうが、その理由はアテナは魂をあの肉体に定着させているからだ。だから、体が死のうとも魂は死なない。そして、回復すれば傷は治る。そういうことだ」
「そうなのね」
無為は真耶の言葉を聞いて納得する。そして、サタンは皆が理解したことを確認して話を続けた。
「じゃあ、これを誰かに取りに行ってもらいたいんだが……行きたいやつはいるか?」
「場所はどこなのだ?吾輩らは場所が分からねば行けない可能性もある」
「場所は……死霊の街……ゴーストの街だ」
サタンは少し気まづそうに言った。その刹那、その場の全員の雰囲気が変わる。さっきまでは興味津々に聞いていたのだが、皆行きたくないという雰囲気を醸し出し始めた。
「……皆どうした?」
真耶は思わずそう聞く。すると、その場の全員は目を逸らしてしまった。そして、ルリータが言う。
「い、いえ……なんでもないですよ……」
「そうか?てか、なんで目をそらす?」
「……」
「おい、なんか喋れよ」
真耶はそう言う。しかし、誰も答えない。サタンも少し嫌そうな顔をする。どうやら誰も行きたがらないらしい。
「この街に何がある?」
「そうか、真耶は知らないよな。この街にいる奴らは変なやつらが多くてな。みんな嫌なんだよ」
「何だそれ?そんなので幹部を名乗れるのか?」
「いや、あのね、幹部って言っても嫌いなものだってあるのよ。で、特にみんな嫌いなのが死霊の街なわけ」
「へぇ〜、じゃあ俺が行くよ。それで解決だろ?」
「いや、真耶に行ってもらうことは初めから決まっている。それの同行者を誰にするかを決めるのだ」
「わっちは嫌だ!何があってもついて行かん!!!」
「妾も嫌よ」
「俺も嫌っスね」
「吾輩も嫌だな」
皆そんなふうに嫌がって言ってくる。サンドドラゴンなど、嫌とは言わない人も中にはいたが、ほとんど嫌そうな顔をしていた。
そんな時、ムラマサがサタンの顔を見て何かを伝える。
「……」
「ん?ムラマサ?言ってくれるのか?」
その問いかけにムラマサは頷く。どうやらムラマサは行く気だったらしい。みんなはそれを聞いて顔を明るくする。
「よし、じゃあもう1人決めるぞ」
そして、サタンのその一言で俯いた。どうやら全員安心したのに、まだ決めると言われて嫌な気分になったらしい。
そして、そのせいかその場の全員が話さなくなった。皆無言で前を向いている。本当に全員行きたくないらしい。とにかく行かなくて済むようにしている。
「……誰も行きたくないか……仕方ない。ここは真耶に選んでもらおう」
「「「っ!?」」」
「や、やだよ!それだったらくじがいいわ!」
「指名制なんて、嫌よ!」
無為とフィトリアが必死に否定してくる。しかし、サタンは決定を翻す気は無いらしい。真耶が決めてくれることを待っている。そして、真耶はそれを知ってか少し悩んでしまった。
真耶は少しだけ悩むと無為のフィトリアの方を向いた。すると、2人は急いで目をそらす。
「まぁ、行ったことない場所だし、あまり増えすぎても守れるか分からないからな」
「ちょっと!別に私達守ってもらう必要なんてないのよ!」
「あなたと同じで私達も訓練してたの!だから、そんなに弱くないのよ!」
「いつまでも弱いもの扱いしないでよ!」
「私達だって強くなったのよ!」
2人は躍起になって真耶にそう言う。真耶はそんな二人を見てニヤリと笑った。そして、楽しそうに言う。
「じゃあお前ら2人できまりだな」
その言葉を聞いた瞬間2人は言葉を失った。そして、固まって静かに涙を流した。
「よし、じゃあこれで決まりだな。早速4人には行ってもらおうか」
「「「うぅぅ……行きたくないよぉ……」」」
2人はそんなことを言って落ち込む。
「じゃあ、解散だな」
「待て。その前に1つ聞きたい」
サタンが解散させようとした時、真耶はそれを止めて言った。
「なぁ、フェアリルはどうした?」
真耶のその言葉はその場を凍りつかせた。
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