第105話 新しい日々
「遅いぞ。だいぶ待ったんだからな」
サタンは真耶にそう言う。真耶はその言葉を聞いて少しだけニヤリと笑った。
「……悪かったな。ルリータから聞いた。お前が俺の娘を助けるために必死になってくれたことも、それで、死んでしまったことも、全部聞いた。さっきはあんなこと言って悪かったよ」
「別に構わんよ。言われ慣れてるから」
「そうか……」
ルリエールは真耶のその言葉を聞いて少しだけ俯くが、何事も無かったかのように前を向いて真耶の顔を見た。真耶はその顔を見て少しだけニヤリと笑う。
サタンは真耶の笑った顔を見て少し嬉しくなった。そして、それはその場の全員が同じことを思っていた。だから、真耶の顔を見て安心する。
クロエはそんな真耶を見てほっと胸を撫で下ろすと、ゆっくりと体の中へと入っていった。真耶はクロエが中に入ってくるのを感じながら歩き出す。
「もう帰るのか?」
歩き出した真耶にサタンは聞く。
「逆に帰らないのか?」
真耶はそう聞き返した。すると、サタンはため息をひとつ着いて言う。
「帰るよ」
そう言って真耶の隣まで来て歩き出した。そして、全員は揃って魔王城まで帰っていく。その時の真耶はどこか嬉しそうだった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……それから8ヶ月後……
「フッ……フッ……フッ……」
真耶は残った片腕で逆立ちをしながらその腕でスクワットをしていた。
その細い腕からは考えられないほど引き締まった筋肉は、50kg以上あるその体をなんども持ち上げ降ろす。
「……」
「……」
「……フッ」
真耶は何百回かスクワットをして体制を戻した。そして、深呼吸をして息を整え荷物を置いている場所に戻る。そして、タオルを取りだし汗を吹く。
「……」
「どうした?」
「……」
「模擬戦がしたいのか?いいぜ。少しやり合おうじゃないか」
真耶は何も言わないムラマサの表情から言いたいことを読み取る。そして、今回は戦いたいって思っていそうだったからそう言った。
だいたい真耶がそう思った時はそれが当たっている。だから、真耶は木刀を取り出しムラマサに渡すと、2人は1度離れて構える。
「どっちかが負けを認めたら終わりな」
「……」
真耶がそう言うと、ムラマサは素早い動きで駆け出した。そして、すぐに真耶との間合いに入り込んでくる。
しかし、真耶は即座に後ろの飛び退きムラマサから距離をとった。さらに、そのジャンプした勢いで壁まで到達し、その壁を蹴り加速することで逆にムラマサに近づく。
そして、一気に畳み掛けるようにムラマサに連撃を繰り出した。片腕だけで繰り出される連撃は片腕とは思わせないほどの速さで、かつそれだけの量の攻撃だった。
ムラマサはそれを何事もないかのように防ぐ。そして、隙あらば真耶に反撃をする。しかし、真耶はその反撃を足を使って防ぐ。
そうして、2人の攻撃は当たらなくなる。こうなってしまうと、どちらかの体力が尽きるしか終わりが見えない。だから真耶は別の方向から攻めることにする。
1度離れてムラマサの背後に移動する。ムラマサはそれをわかっていたかのように後ろに攻撃をする。真耶はそれを躱してまた別の方向から攻撃をする。
しかし、2人の実力は均衡していた。そのため、なかなか決着がつかない。
「……」
「お前も中々やるな。だが、俺の方が強い」
真耶はそう言ってまた動き方を変える。攻撃の仕方を何度も何度も変更し様々な角度からムラマサに攻撃する。
そして、ついにムラマサはその攻撃の量が多すぎて捌き着れなくなった。そのせいで弾かれ転けてしまう。
そこに真耶は木刀を突きつけた。すると、ムラマサは負けを認める。そうして模擬戦のような戦いは終わった。
「……」
「ん?どうした?俺が強すぎるって?そんなことないさ。お前もかなり強い」
「……」
「勝てなかったのはお前が弱いからじゃない。剣術のうまさで言ったら魔王城の中でお前が1番だろ?俺はただそこに別のものを付け加えただけだ。足を使ったり、周りの地形を使ったりしてな。だから、お前は弱くない」
真耶はそう言って荷物を摂ると、木刀を武器置き場においてトレーニングルームから出た。ムラマサはその後ろを見つめながら再び練習を始めた。
そして、真耶は部屋に戻るとすぐにシャワーを浴びる。そうすることで汗を流し、体を清潔に保つ。そして、シャワーから出てくると水を拭き取り一瞬で着替える。その後は自由行動だ。自分のしたいことをする。
しかし、大抵自由行動の時間になると、呼び出しがかかるものだ。
「真耶、緊急会議だ。来れるか?」
「分かった。すぐに行こう」
サタンが真耶を呼びに来る。真耶は近くにあったプラネットエトワールを手に取り部屋を出て会議室へと向かった。
真耶が会議室に着くと、まだ何人かしか集まってなかった。どうやら緊急だったから集まりが悪いらしい。
しかし、ムラマサはいる。トレーニングルームにいたはずなのにいる。真耶はその事で驚いてしまう。
「遅いな。あいつら何をしてんだ?」
「すみません!遅れました!」
「私も遅れました!」
「わっちもだ」
「妾も同じく」
サタンが愚痴るとルリータ達が入ってきた。しかし、何故かルリータ達の服は乱れている。それに、下着を履いてもつけてもない。
「おい、会議にそんな服で来るなよ」
真耶はそう言った、すると、ルリータが泣きながら謝ってくる。
「うぅぅ……!ごめんなしゃい……!ゲームをしてて、負けたら服を脱いで全裸になったらおしりペンペンっていうゲームをしてたんでしゅ……!そ、それで、皆何回も負けて全員裸になってて……」
「変なゲーム作ったな。想像力豊かすぎるだろ」
思わず真耶はそう言ってしまう。すると、何故かルリータが照れていた。
「何照れてんだよ。てか、早く座った方が良いぞ」
「あ、はい。すみません」
ルリータはそう言って座る。これで8人揃った。残りは6人だ。
「すまんっス。遅れたッス」
突如そう言って扉が開かれた。すると、上裸のペテルギアが入ってきた。そして、突然5人入ってくる。その5人は普通の服を着ていた。
「……なんで上裸なんだ?」
サタンは呆れながら聞いた。すると、ペテルギアは笑いながら言う。
「女性陣の誰かに服を盗まれたッス」
ペテルギアがそう言うと無為がビクッとした。
「お前が盗んだのか。後で罰を与える」
真耶はそう言った。すると、サタンは怒りながら言う。
「おい!それは俺のセリフだぞ!」
「悪い悪い」
「ったく、お前らは早く会議を始めるぞ」
サタンがそう言って会議は始まった。
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