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モブオタクの異世界戦記Re  作者: 五三竜
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第102話 暗闇に浮かぶ暗闇

 ━━それから1時間後……真耶達は街へと戻った。そして、おじさんの家まで行く。


「……戻ったよ」


「っ!?戻ったか!?大丈……夫……って、お前!何があった!?その体……!」


 男は真耶の体を見るなり駆け寄り心配する。そして、救急箱を持ってきた。


「いや、傷は大丈夫だ。ルリータが無事でいる限り、俺の傷は永久に治り続ける」


 真耶はそう言って男を止める。そして、扉の前に行って振り返り言った。


「まぁ、助かったよ。色々とね。また今度会えたら会おうな」


 真耶はそう言ってルリータを連れて家を出て行った。そして、男に追いつかれる前にその場から離れる。


 男は慌てて外に出た。しかし、既に真耶達の姿は無い。だが、男は嫌な気分はしなかった。ただ、生きて帰ってきたことを心の中で喜び、小さく微笑んだ。


 ━━そして、魔王城では……


「真耶とルリータ遅いわね。帰るって言ってからもう3時間は経過してるわよ」


「もしかしたら、どこかで何かあったのかも!?」


「あいつらに限ってそれは無いだろう」


 サタン達は会議室に集まりそう言いあった。しかし、心の中では心配をしているのだ。だから、内心かなり焦っている。


 だが、ここでどれだけ焦ろうとも、真耶たちが無事かどうかは分からない。怪我をしていれば怪我をしているし、無事であれば無事なのだ。それしかない。


 しかし、心配なものは心配だ。サタン達はその気持ちを押し殺して平然を装う。そして、静かに真耶達の帰りを待つ。


「……」


「……」


「……」


 その場には沈黙が流れた。その沈黙はその場の全員に重苦しい空気を襲わせる。そして、時間の流れが遅くなる。


「まるで時間魔法だ……」


 サタンが小さくそう呟いた。そして、ため息をひとつ着く。その時、突如扉が開かれた。そして、人が入ってくる。サタン達はその人を見て立ち上がり驚いた。


 なんと、真耶が帰ってきたのだ。しかも、いつも通り。しかし、何故かルリータの様子がおかしかった。その場の全員はそれにすぐ気がつく。


「……?なんかあったか?」


「いや、何も無かっ……」


「何も無かったわけないだろ!俺の娘の目が潰されてんだぞ!」


 突然真耶に向けて誰かが怒ってきた。それは、レリエール・ルリウス・シュリア。ルリータのお父さんだ。


 真耶は唐突にそう叫ばれ言葉を失う。そして、申し訳なさそうに俯く。しかし、ルリエールはそんなことお構い無しに真耶を責める。


「お前のせいだ!俺の娘がこんなことになったのは!この目も……もう見えなくなってるじゃないか!」


 ルリエールはそう言って真耶の胸ぐらを掴む。そして、壁際まで押して叩きつけた。


 しかし、なぜルリエールはルリータの目が見えないことに気がついたのか、それは、ルリエールにはその人の記憶を見ることが出来る目があるからだ。


 これはシュリア家に伝わる秘伝だそうだ。ルリエールはその目で真耶とルリータを見て起こったことを知った。


 しかし、その目は真耶が持っている記憶眼メモリアルアイとは違う。真耶のメモリアルアイは記憶を全て読取る目だ。だから、真耶のものとは違ってルリエールのものは全てが見える訳では無い。


 だから、断片的に見た記憶でルリエールは真耶を責めているのだ。その場の全員はルリエールを止めようと近寄る。


「おい、やめろよ。真耶にだって事情があったんだろ?」


「そんなことは関係ない!お前は俺の娘を殺しかけたんだよ!」


 ルリエールは真耶にそう叫ぶ。真耶はその言葉を聞いて顔を暗くした。そして、目を合わせないようにそっぽを向く。


「おい!なんか言えよ!」


「1部しか見えない目で、全てわかったふうな口を聞くなよ!」


「「「っ!?」」」


 唐突に真耶がそう叫んだことで、その場の全員は言葉を失う。そして、そんな真耶から放たれる威圧感に負けてしまい、ルリエールですらも離れてしまう。


「……お前らは何も分かっちゃいない。表面だけを見てその中を見ようとしてない。お前らはクズだ!人のことが何も分かっちゃいない!俺がこうして苦しんでいようとも、お前らは俺の事を心配することもないんだろ!?こうして、俺が死にかけてでもルリータを連れ帰ってきて、労いの言葉もないんだろ!?」


 真耶はそう言ってルリータを皆の元に向かわせる。そして、混み上がってくる怒りを何とか押し殺し、振り返って扉を開いた。


「おい!どこに……」


「どこでもいい……誰も来れない場所に行く」


 真耶はそう言って歩き出した。サタンは直ぐに真耶を連れ帰らせようとするが、扉から出た途端その姿は消えており、見失ってしまう。


「真耶……」


 サタンは誰もいなくなった場所にそう呟いた。


「フン!あんなやつ、いない方がマシなんだよ!」


「おい!ルリエール!そんな言い方は……」


「お父様は何も分かってない!真耶様は私の目を治そうとしてくれた……自分を犠牲にしてまで私を助けてくれた!こうなってしまったのは私のせいだし、真耶様はそんな私に悪くないって言ってくれた……!全部自分が悪いって言って、責任を真耶様が全て負ってくれたの!私にはお父様みたいに記憶を読む力が無い。だから、お父様が何を見たのかは分からないですが、真耶様はもっとすごい人なの!何も知らないのにごちゃごちゃほざかないで!」


 ルリータはルリエールにそう言い放って泣きながら真耶を追いかけ出ていく。ルリエールはその後ろを追いかけようとしたが、ルリータもすぐにいなくなってしまい見失う。


 その場には、なんとも言えない喪失感が襲ってきた。サタンはそんな空気の中でぎゅっと拳を握りしめた。


 ━━それからなん時間経過しただろうか。真耶は1人、誰もいない場所で立ち尽くしていた。そして、誰もいない、そして、何も無い場所をずっと見つめていた。


 その先には特に何も無い。ただ、真っ暗で、永遠の虚無が続いていた。そして、その下には、永遠の闇が続く巨大な穴が空いている。


 ここは、地獄の入口。ここからさらに下に行くことで、各層に別れた地獄へと行ける。そして、その地獄に落ちる人は、大抵罪人だ。だから、人はそこを望まない。そして、魔界の住人でさえも、近寄らない。そんな場所に真耶は立っていた。


「……」


『落ちちゃダメよ』


 唐突に後ろから声をかけられる。振り返ると、クロエがいた。どうやらクロエも一緒に回復してもらっていたらしい。


「落ちないよ。安心して」


『安心出来ないわよ。今のあなたは特にね』


 クロエはそう言って真耶にくっつく。そして、抱きつき胸を押し付けてくる。


「そうか……だが安心したまえ。俺はまだ死ぬつもりは無いからな」


『そう言って、この前死んでたじゃん』


「うるさいな。俺は死なないって言ってるだろ。そもそも、死にたくないんだよ」


 真耶はそう言って悲しい顔をする。そして、悲しそうな目で真耶は下を見つめた。その目には、くらい何かが写っていた。

読んで頂きありがとうございます。

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