第100話 ゼウスの降臨
動かなくなったアテナを見下ろして真耶は息を吐く。その息は普段よりも荒く、自分でも驚く程に疲れていたようだ。
普段よりも荒く吐き出される息を真耶は何とか落ち着けようとする。そして、強く握りしめていた剣を鞘に収める。すると、突然右手の力が抜ける。
「……」
どうやら限界が来ていたらしい。さすがにここまでの過激な戦いをすると、この体では耐えきれないようだ。
「さて、帰るか……っ!?」
真耶がルリータの元まで帰ろうとした時、突如真耶に向けて雷が落ちてきた。真耶は慌ててそれを躱す。そして、上を見上げた。すると、そこには何とゼウスがいた。
真耶はゼウスの姿を見て言葉を失う。しかし、すぐに殺気を放ち牽制する。そして、剣に手をかけた。しかし、何故か手が落ちてしまう。というより腕から切断されてしまった。
「っ!?」
真耶は自分の落ちた手を見て言葉を失う。そして、慌ててその場から離れようとした。その時、胸に突然雷の矢が刺さった。それはかなりの太さがあり、強力な電気を帯びている。
その電気を浴びた真耶は体が動かなくなった。そして、その場に背中から倒れる。すると、自分の足元にゼウスが降りてきた。ゼウスはバラバラになったアテナの体を全て手に取ると、真耶を見下ろして言う。
「よくもわしの娘を……覚悟は出来ているのだろうな?」
「……!黙れよ。老いぼれじじいが。頭腐ってんの?(笑い)」
真耶は笑いながらそう言う。(笑い)もちゃんと読んでいるところから、完全に挑発して怒らせようてしていることが分かる。
そして、当然のようにゼウスは怒る。ゼウスはぶちギレて殺気と尋常じゃないほどの魔力を放ち、真耶に手を突き出した。そして、その数秒後にその手に魔力が溜まり始め、雷が集まっていく。その雷は一瞬で大きくなり、真耶に向けて放たれた。
真耶はそれを見てニヤリと笑うとそのまま何もしなかった。そして、当然のようにその雷が直撃した。
凄まじい轟音と眩い光がその場をうるさくする。そして、爆風が吹き荒れ辺りをめちゃくちゃに壊す。
そして、その元凶の雷は真耶を殺すべく集中的に真耶の上に落ちる。そして、凄まじい勢いで真耶の体を破壊していく。しかし、真耶も凄まじい勢いで再生する。そのおかげで死なずに済む。
「……」
「……再生か。貴様本当に人間か?半神の可能性もあるが、貴様からは神の力を感じん」
「……」
「まぁなんでもいい。とりあえずわしはここらで帰るとするかのぉ。目的なアテナの回収だからの。じゃあ、最後に一つ言っておこう。死ね」
その刹那、真耶を襲う雷が止む。しかし、その数秒後に真耶の背中や足などの体にいくつもの雷の矢が突き刺さった。さらに、右目に雷の矢を放たれ突き刺さった。そのせいで右目が潰れる。
しかし、これらはまだ大したことは無い。真耶はその時に再生の力を失ってしまった。というより、再生出来ないくらいに傷を負ってしまった。さすがに再生も追いつかなかったらしい。
真耶はその一撃を受けて吹っ飛ぶ。さらに、ゼウスは手に謎のエネルギーを溜めた。そして、即座に放つ。
「じゃあのぉ」
ゼウスはそう言って消えた。しかし、光線は消えることなく真耶を襲う。そして、真耶はその光線が直撃した。
━━それから30分後……
ルリータは目を覚ました。どうやら爆風で吹き飛ばされていた時気絶していたらしい。ルリータは目を覚ますなりすぐに起き上がろうとする。どうやら寝ていたおかげで体力も戻っているようだ。
全身から血が流れ痛みは激しいが、そんな体を無理やり動かしルリータは進む。そして、先程の轟音がした場所へと向かった。
ルリータはその場所について言葉を失う。なんと、そこは何があったのかを疑うほどに壊されていた。地面は壊れ、大量の電気が空中をピリつかせている。
ルリータはそんな荒れ果てた大地の中心にいる男に目を向けた。そこには、巨大な岩がゴロゴロと転がっており、その岩にもたれ掛かるように座っている男がいた。
「っ!?真耶様!?」
ルリータは慌ててその男に駆け寄る。その男は近寄らなくてもわかったが、やはり真耶だったようだ。ルリータは遠くからだったからよく分からなかったが、近寄ることで今の真耶の状態を知る。そして、それを知り言葉を失った。
「っ!?そ、そんな……!」
なんと、真耶は下半身が無くなっていたのだ。というのも、お腹より下の部分が崩壊していた。まるで、破壊魔法で破壊されたようだ。
さらに、右目は潰れその目を取り巻くように火傷のような痕が残っている。そして、上半身には多くの穴が空いており、雷を帯びていた。
「……ま、真耶様ぁ……!」
「……ルリータ?」
「は、はい!真耶様、私ですよ!」
「そうか……生きていたか。良かった」
真耶はそう言って近寄ってきたルリータの頭の後ろに手を回し抱き寄せる。
「……俺も生きてたよ」
真耶は掠れた声でそう言った。その声はいつもの真耶からすると、とても弱々しく、小さかった。
「……真耶様……!死んじゃいやですよ!」
「……大丈夫さ、安心しなよ」
「無理ですよ!こんなになるまで戦って、それで、死んじゃったら嫌なんですよ!」
「あはは……俺は死なないよ。だから……」
「どこにそんな確証があるんですか!?普通の人なら死んでますよ!」
「確かし……これで生きてたら奇跡だな」
真耶は他人事のようにそう言って笑う。しかし、ルリータは怒った表情で泣きながら破れてしまっている服を強く握りしめる。その目から垂れる涙で真耶の腹の上には水たまりができていた。
「……悪いな。でも、これしか道はなかった」
「それでも……もっと自分の体を大切にしてくださいよ……!」
ルリータは泣きながら真耶にそう言う。真耶はそんなルリータを見て優しくその頭を撫でた。そして、少しだけルリータに離れてもらい、鼻の頭を押す。すると、ルリータは豚のように鼻が上に上がる。
「ふがっ!?」
「ごめんな。俺は死なないから許してくれよ」
真耶はそう言って片腕で何とか立ち上がろうとした。しかし、足がないため立ち上がれない。
「……立てないじゃないですか。どうするんですか!?」
「どうしようかねぇ……」
「もぅ!だからこんなになるまで戦っちゃダメだって言ってるんですよ!」
「すまん……」
真耶達はそんな会話をする。しかし、何かを言ったところでもう真耶の下半身は治らない。だから、真耶は行動不能なのだ。
「……全部後で説明してもらいますからね」
ルリータは怒りながらそう言う。そして、真耶を持ち上げて帰ろうとした時、突如ルリータの背後に人が立った。ルリータは慌てて振り返る。すると、そこには知らない人がいた。
「っ!?誰!?」
「……誰でしょう?」
「……俺殺しに来たのか?ペルセポネ……」
「ふふふ、ハズレだけど当たり。殺しには来てないけど私はペルセポネよ♡今回は特別にあなたを助けてあげるわ♡」
「何?お前に助けてもらう必要など無……っ!?」
真耶がそう言った時、ルリータが真耶の頭を殴って言う。
「何をしたら助けてくれますか?」
「え?じゃあ〜この服と首輪をつけて一周まわってワンって言ったあとに、裸で土下座をしたら助けてあげるわ」
「っ!?」
「黙れ。殺すぞ」
そう言って左目に宇宙の様な目をうかべる。
「あら、まだその目が使えたの?とんでもない量の魔力に生命力を持ってるのね。『孤独の目』。ずっとその目を使って戦ってたのでしょ?再生の力もその他の力から全て」
「少し違うな。この目の力で古代の魔法を使っていただけだ。その力に再生があっただけだ」
「そう?だから今再生できないのね……。じゃあ良いわ。やっぱり何もしなくていいわよ。特別に真耶に1日1回キスをするだけにしておくわ。よろしくね、ルリータちゃん」
ペルセポネはそう言って淡い紫色の光を放つ玉を真耶の胸に撃ち込んだ。すると、真耶の体が再生してく。と言っても足だけだが。
真耶の足は完全に再生した。
「あ、あとこれも。落としてたから」
そう言ってシューターを投げ渡してきた。
「石化してなかったのか?」
「そう見たいね。ま、とりあえず私はここで帰るわ。じゃあね」
「突然すぎるだろ」
ペルセポネは真耶のそんな言葉を聞き届けて手を振りながら帰って行った。その場には、よく分からない不思議な空気が流れた。
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