あいさつするだけ
◆あいさつするだけの授業
起立、気をつけ。
これから「あいさつ」の授業をはじめます。
礼。よろしくお願いします。着席。
今日なぜ「あいさつ」の授業をするかというと、時間がたっぷりあることと、みんな当たり前にやっている「あいさつ」の練習をたまにはしてもいいかな、ということで「あいさつ」の授業をすることにしました。
突然ですが、問題です。
この時間、人に会ったらまず最初に言う言葉は？
『あの、先生……』
「「「おはようございます」」」
大正解。
では、失敗や悪いことをしてしまったら言う言葉は？
『遅れちゃって……』
「「「ごめんなさい」」」
大正解。
では、人に助けてもらったら言う言葉は？
『許してくれて……』
「「「ありがとうございます」」」
大正解。って、許すとは言ってないよ。
君、遅刻したからあとでお仕置きだからね。しかも大量のお菓子まで持ち込んで。でも、数えてみたらこのクラスの人数とぴったりだから、これから一個ずつみなさんに配っていきますね。
『先生、おはようございます。遅刻して、ごめんなさい。でも、ありがとうございます』
おっ、あいさつはしっかりできているね。なら、今日のところは許してあげよう。
お菓子もらっていない人いませんか。
いないね、よし。
それでは手を合わせて、いただきます。
「「「いただきます」」」
ありがとうも言いましょう。
「「「ありがとう」」」
それでは手を合わせて、ごちそうさまでした。
「「「ごちそうさまでした」」」
自然の恵みに感謝しましょう。せいの。
「「「ありがとうございました」」」
あら、まだたっぷり時間が残ってる。かといって、何もすることもないし。
『先生、僕からみんなに大事な話があります』
君はさっき遅刻した子だね。生まれてから何百回も遅刻を繰り返す子が大事な話だって。まぁ、みんなで最後まで聞いてあげよう。
『しばらくは会えないと思うから、今のうちに言っておきます。
久しぶりだね。みんな、元気そうで良かった。ただいま。明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。そしておはよう。
お土産のお菓子も買ってきました。みんな、食べてくれてありがとう。いただきます。ごちそうさま。おそまつさま。ごめんなさい。嬉しくてついその場で食べました』
いやまだ食べてなかったのか。
『それと理由はあとで言うけど、今日を最後に会えないから言っておきます。みなさま。ご成人、ご卒業、ご入社、そしてお誕生日おめでとうございます。今まで素晴らしい人生でしたね。来年も、再来年も、何百年後も、良いお年を。
あっ、もうおやすみの時間だ。遅刻するといけないから、あんまりゆっくり話せなくてごめんなさい。おやすみなさい。いってきます。みんなも帰る時は気をつけて。あとあっちでも元気に過ごしてね。短かったけど楽しい時間でした。ありがとう。さようなら。行ってらっしゃい。
ほら、僕のことは気にしないで、早く行ってらっしゃい。みんなにはみんなの、それぞれのやることがあるよ。気をつけて、それぞれの道へ行ってらっしゃい』
「「「はい、行ってきます。行ってらっしゃい。さようなら。おやすみなさい。ありがとうございました」」」
お話聞かせてくれてありがとうございました。あっちに行ってもがんばってね。
おっ、ちょうどチャイムが鳴った。
それでは号令をかけます。
起立、気をつけ。
これで「あいさつ」の授業を終わりにします。
礼。ありがとうございました。解散。
『あの、先生……』
おっ、君、さっきみんなにお話してくれた子だね。どうしたの。
『こんばんは。おやすみなさい。行ってきます。さようなら』
こんばんは。おやすみなさい。気をつけて行ってらっしゃい。さようなら。
◆あいさつするだけの元旦
あら、久しぶりね。元気そうで何より。おかえり、遠慮しないでどうぞ上がって。明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。そしておはよう。
あら、お土産のお菓子も買ってきてくれたの。そういえばこのお菓子、いや、ありがとう。それでは、いただきます。ごちそうさま。あら、ごめんなさい。嬉しくてついその場で食べちゃったわ。
それと理由はあとで言うけど、今日を最後に会えないから言っておかなきゃ。ご成人、ご卒業、ご入社、そしてお誕生日おめでとう。今まで素晴らしい人生でしたね。来年も、再来年も、何百年後も、良いお年を。
あら、もうお眠りの時間だわ。あんまりゆっくりさせてあげられなくてごめんなさい。おやすみなさい。帰る時は気をつけて。あとあっちでも元気に過ごしてね。短い間だけど楽しい時間だったわ。ありがとう。さようなら。
ほら、私のことは気にしないで、早く行って。あなたにはあなたのやることがあるでしょ。気をつけて、行ってらっしゃい。
おわり
