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エターナルシリーズ

エターナル・レイン 渇き世界を望む時、陽光は天に帰還する

作者: 仲仁へび



 世界が砕けたあの日の事を、僕は覚えている。

 忘れる事なんてできない。

 忘れられるもんか。


 あの日から、あの時から。


 僕は、僕達は、信じられないほど綱渡りの世界で、


 生きる事を強いられていた。


 ――それは永遠に降り注ぐ雨の物語。


 世界を悲しみで濡らす、切なくも愛しい物語。






『俺』


 俺は綱渡り屋だ。


 バラバラになった世界から世界へ、人や物を運ぶ仕事をしている。


 世界を隔てる空間は、虚無という。


 何もない空間だから、生物は普通は生きられないんだとさ。

 でも、俺達のような綱渡り屋の人間は特別だから。


 翼を広げて、虚無を飛ぶことができるから。


 皆の為に、必要なものを運んでいるんだ。






『僕』


 僕は翼管理人。


 綱渡り師って仕事があるんだけど、その人には翼が必要なんだ。


 その人にあう翼の状態でないととべないから、毎日手入れしなければいけない。


 だから僕はその仕事を毎日行っている。


 責任のある作業だけど、やりがいは十分。


 人の役に立つ仕事って、楽しいな。






『私』


 私は結界師。


 結界師は、世界と世界を隔てる虚無が、侵食してこないようにする仕事よ。


 体力と精神力がいるから、なるにはそうとう修練を積まなければならないわ。


 私も結構苦労した。


 なんど心が挫けそうになった事か。


 でも、一度なってしまえば慣れるのは早いわよ。


 仕事は単純だから、そういうのが気にならない人にとっては普通の仕事よりは、楽よね。






『人々』


 世界は、降り注ぐ虚無の雨に濡れている。


 それを放置していたら、いま生きられる世界までバラバラになってしまうだろう。


 だから、人々は毎日その雨を履き出さなければならない。


「今日も大変だね。排水溝にずっと水が流れてるから、詰まりにくいのは良い事だけど』

「ああ、道具が傷んでいる。店で買ってこないとな』






『開発者』


 虚無の雨を乾かすには、太陽の光が必要らしい。


 太陽。

 太陽か。


 この世界を照らす人工灯は、太陽なんかじゃないよな。


 太陽は、時に無慈悲に熱く、時に気まぐれに寒い熱だ。


 コントロールできないのが太陽って、不便だな。


 昔の人はよくそんなのと付き合ってられたな。




『開発者』


 疑似的な太陽を作り出すには、多くの綱渡り師の翼が必要らしい。


 虚無を飛んで、種火をもってこないと。

 でも、そうなると皆が不便になってしまう。


 いつもやっていた普通の仕事ができなくなるから。


 なんとか皆を説得しないと。





『人々』


 はじめは不満に思っていたさ。


 いつもと同じでいいんじゃないかって。


 このままでもいいんじゃないかって。


 でも、最終的には同意したんだよ。


 雨が上がった空ってもんを、一生に一度でいいから見て見たかったからね。





『開発者』


 やった!

 成功だ。

 材料はそろった。


 後は太陽を作り出すだけ。

 熱が強すぎるから、遠くに設置しないと。


 細心の注意を払わないとな。


 でもこれで、太陽ができるぞ!

 雨を乾かす事ができるんだ!


 終わるんだよ。


 この終わらない永遠の雨の時代が!






『子供』


 みんながずっと最近騒いでたから、不思議だった。


 何が起こるんだろうって。


 そしたら、雨がやんだの。


 ずっと降ってた雨が。


 空に見えたのは太陽。


 あたたかい。


 ずっとあたっていると、暑苦しくなりそう。


 これが太陽の光なんだ。


 雨が自動的にかわいていく。

 何だか、不思議。


 これで、きょむも少しづつへっていくんだって。


 よく知らないけど。


 世界はゆっくりと、元の形にもどっていくんだって。

 元の形なんて分からないけど。


 でも、みんな喜んでるから、きっと良い事だよね。



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