今日も今日とて副部長が面倒くさい(漫画同好会男女。付き合ってない)
『そういうとこだぞ』(https://ncode.syosetu.com/n2588gz/)、『ネタがない』(https://ncode.syosetu.com/n4984gz/)の二人。←を読んでなくてもこの作品単体でも読めます。
「大丈夫か」
「吐きそう」
「そうか」
誰も居ない部室。
もう、今日の部活動は終わった。
部員たちもみな、帰って行った。
俺たちだけが、幹部会に提出するプリントの為に居残っている。
……という体であり、実際それは既にほぼ完成していた。
あとは、目の前の副部長がサインをするだけだ。
では、何故俺たちが居残っているかというと。
「自信……あったのになぁ……」
「そうだな」
「はああぁぁああぁぁあぁ、吐きそう」
絵葉は、本気で吐きそうな顔で机に突っ伏している。
「若い才能に負けるのは、本当もう絶望しかない」
「いや、お前も世の中的には充分若いからな?」
「つまり、僕はもうこれから下る一方って? はああぁぁああぁぁあぁ、もう駄目だ、吐こう。吐く。吐き散らかす」
「マジでやめろ」
先ほどから『吐く』しか言っていない副部長・絵葉の精神を少しでも普通レベルに持って行くため、俺たちはまだここに残っていたのだった。
このままだと、道端にゲロを吐くか、正体をなくして線路に転げ落ちるか、とかく他人様に迷惑をかける事態にしかならなそうなので、ここで精神レベルを人並みに戻す必要がある。
まったく、面倒くさい奴だ。
ちなみに何でこうなったかというと、文化祭の人気投票の結果だ。
絵葉は、惜しくも二位だった。
一位は、高校一年生の男子。
先ほどの発表時はめちゃくちゃ笑顔で、盛り上がって彼を誉めた絵葉だが、みんながいなくなった瞬間、これである。
「でも確かにたっちょんのは面白いもんな……面白かったもんな……あんな萌えるBL初めて見たレベルやん……ギャグシーンのあのシュールさもやばやばのやばだったし……」
一応、あの褒め言葉も盛り上がりも本心であるからこそ、複雑なのだろう。
「でも悔しい!! やっぱり悔しい!! もっと面白いのを僕が描けばいいのはわかってるけど、わかってるけど」
ガンッ
机に頭を打ち付けて叫ぶ。
「ぐやじい゛い゛い゛い゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! 世のすべてがムカつくああああああああああ!!」
「本当にお前、そういうところ清々しいよな」
普通だったら、自分の心の中でもその言葉を吐き出せないし、認められないと思う。
「慰めてよぉぉぉぉぉぉぉ」
「面倒くせー」
「本音ぇぇぇぇ」
「ま、でも」
俺は、ため息を吐きつつ、絵葉の肩をぽん、と叩いた。
ぽんぽん、と優しく。
よくがんばったな、と言うように。
漫画もだけれど、今日の後輩たちを褒め称える姿は、素直に素晴らしいと思ったから。
「俺は、お前の描く女の子の方が可愛くて好きだぞ」
「お前は女の子だけが好きなんじゃんんんんんんんん」
参考にならねぇ、と言われ、本当にお前はそういうところだぞ、と頭をはたいた。
END.




