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モンゴリアンデスワームは意外と美味しい

「世界樹さん、昨日はやってくれましたね! あ、妖精さん、おはようございます」


「ハハハマリーは紅茶を飲むと眠くなるから痛い痛い! ちょっ! 蹴らんといて!」


「私は旅に出るって決めたんです、引き止めたって無駄です!」


「……そうか、本気で行くのか」


世界樹さんは少し寂しそうな目で私を見る。

うう、そんな目をされるとちょっとつらい。


「……ごめんなさい。世界樹さんには本当にお世話になりました。世界樹さんがくれた葉っぱで作るお茶、大好きでしたよ。草だんごも美味しかったです」


「それ一応伝説級アイテムだぞ。……よし分かった! ちょっと待ってろ!」


そう言うと世界樹さんは、大きな体をよじらせて、葉っぱで包まれた何かを私に手渡す。


「これ、何ですか?」


「アイテム『世界樹の葉っぱ』&『世界樹の果実』のセットだ。効果は回復。この世界のどんな回復アイテムよりも効果がある、激レアアイテムだ。マリーは回復魔法は使えないから、いざってときはこれを使えばいい」


「え!? でも、世界樹さん前に果実はダメだって……」


「特別だよ特別。ジャムのお返しだ」


「世界樹さん……」


照れくさそうに笑う世界樹さんに胸の奥がジーンと熱くなる。涙が出そうになるが、泣きながらお別れはしたくない。我慢する。


「あら、おはようマリー」


声が聞こえ、そっちの方を向くと、私のもう一人の親友が立っていた。


「妖精さん! おはようございます!」


妖精さん。すっごく美人のお姉さんで、歳は私よりも上らしい。いつも私を気にかけてくれた、優しい人。


「聞いたわよ。旅に出るんですってね」


「はい。ごめんなさい、急に決めちゃって」


「それは今に始まったことじゃないわよ。じゃあ、はい。これあげる」


妖精さんは袋を渡してくれた。


「これは?」


「妖精クッキー大盛りと、そのレシピ」


「ええっ!!」


あっけらかんと答える妖精さんに、私と世界樹さんは声を合わせて驚く。


「おい、いいのかよ!。これって」


「マリーは特別よ。長い間私の話し相手になってくれたお礼。寂しくなったらこれ食べて、元気出しなさい」


ポンポンと私の頭を叩く妖精さんに、思わず抱きつく。


「きゃっ! ちょっともう。仕方ないわねぇ」


「いつでも帰ってこいよ。俺たち寿命長いから、何千年でも待てるぜ」


この二人に会えてよかった。心からそう思った。

大丈夫、涙は引っ込んだ。最後は笑顔で出発するって決めたから。

私は顔を上げると、二人の目を見る。


「じゃあ、行ってきます! 寂しくなったら帰ってくるんで、その時は何も言わずにいいこいいこしてください!」


「締まらないわね。……マリー、旅の中で、一つだけ守ってほしい事を教えるわ」


いつになく真面目な表情の妖精さん。


「何ですか?」


「この世界には良い生き物も悪い生き物もいる。だから、何にでも優しくすることは、時には悪い結果を呼ぶこともあるわ。でもね、もしマリーが本気で力になりたいって思えるような存在に会えたら、その時は全力で力になってあげなさい。きっと良いことが起こるわ。分かった?」


「……はい!」


「よし! 行ってらっしゃい!」


「気をつけてな!」


「はい! 行ってきます!」


私は大好きな二人に背を向け、最初の一歩目を勢いよく踏み出した。



「うん、美味しい。やっぱり凄いなぁ、妖精さんは」


始まりました。私の大陸横断レース。

やっぱりちょっと寂しいですけど、自分で決めたことです。新しい出会いを求めて、頑張ります。

さっき大精霊の森を抜け、とりあえず今はブランカ砂漠を歩いて横断している所です。

ブランカ砂漠は、この世界で二番目に大きい砂漠です。

普通は歩いていくようなところじゃないけど、そこは脚に筋肉増強の魔法をかけています。やろうと思えば空を飛ぶこともできますが、私に言わせれば、ロマンに欠けます。

この脚のみで、大陸を横断してみせる。


それから歩くこと数時間、一日目が終了した。

今日は野宿。丁度いいオアシスを見つけることが出来たので、拠点はここにしよう。

初めての体験に、少しワクワクする。


「よし、ファイア!」


私が魔法を唱えると、砂漠の砂の上でも炎が燃え盛る。魔法って不思議。

と、その時。


「ゴアアアアアアアア!!」


耳をつんざくような鳴き声を上げながら、巨大なミミズのようなものが私を襲ってくる。

これは、モンゴリアンデスワームだ。前に読んだ本に書いていた気がする。

確か、砂漠に住んでいて、口から炎とか雷をはき出すっていう何属性か分からないモンスター、だったかな。

何にせよ、晩御飯はこいつで決まり。


「うわっ!」


体当たりを間一髪の所で回避する。いきなり襲ってくるとは、乱暴なモンスターだ。

次の攻撃。モンゴリアンデスワームは息を吸うような動きをすると、私に向かって炎を吐き出す。


「んん!」


私はそれを防御魔法で身を包んでガードする。

次はこっちの番!

疲れるから嫌だけど、晩ごはんの為、犠牲になれ! ミミズ!

私は手のひらをモンゴリアンデスワームに向けると、気合を入れて叫ぶ。


「おりゃあああ!」


上級魔法『ヘルファイア』発動!

私の手から放たれた爆炎は、モンゴリアンデスワームを丸焦げにした。


「ガアアア!」


聞くに堪えない断末魔を上げながら、モンゴリアンデスワームは倒れる。

……良かった、効かなかったらどうしようかと思った。というか炎吐くくせに炎効くんだ。

久しぶりにこんな魔法使って疲れたよ。はやくご飯食べよ。


今日の晩御飯のメニューは、モンゴリアンデスワームの姿焼きと、オアシスの湧き水。

うん、初日を華々しく飾るいいご飯になった!。


「いただきます」


まずは姿焼きから。うんうん。ちょっと焼きすぎちゃったけど、美味しい。妖精さんが見たら卒倒しそうだけど。何だか、今までに食べたこと無い食感。グニグニっていうか、ブニョブニョっていうか。

そして、オアシスの湧き水。うん、水だ。これは普通に水でした。



今日は初体験が沢山あって楽しい日でした。

明日も楽しいことがあると良いなぁ。

それじゃあ、おやすみなさい。


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