行ってきます
どうも、マリー・ビンビン・サイクロプスといいます。偽名です。魔女やってます。世界の端っこの方でひっそりと暮らさせてもらってます。
若い時に特にすることなくて、何となく楽しい事が起こればいいなって思って魔女になってみました。
お試し気分で魔女になりましたが、これなってから気づいたんですけど人間に戻れないんですね。おかげで今は大体4000歳です。とっくにババアです。ここまで来るともう歳なんてどうでも良くて、あんまり数えてません。もしかしたら4500歳とか5000歳かもしれないです。
一応見た目は若い頃のままなのでそれは良いんですが、ふとした時に、「ああ、もう私若くないんだな」って軽くショックを受けます。もうそんな次元じゃないですけど。
そんな私ですが、今は『大精霊の森』と呼ばれている大きな森の奥の奥に一軒家を建てて、そこに住んでます。ちなみに大精霊は私のことらしいです。
家からちょっと歩いたところに金リンゴと銀リンゴが沢山生っている所があって、それでジャムを作るとめっちゃ美味しいです。これまでも色々なジャムを食べてきましたが、これが一番美味しかったです。
大体の一日の流れは、朝適当に起きて、ジャムとパンで朝食を食べます。パンは魔法で焼きます。私はさっと焼く派です。焦げたパンは嫌いです。
あっ、魔法は1000歳くらいの時に暇つぶしに沢山覚えました。中には巨大な雷を落とす、とか爆炎を生み出す、なんてものもありますが、普通に生きててこんなモノ使う場面は無いです。それに、こういった上級魔法は凄く疲れます。一回使えば吐きそうになっちゃうので、嫌いです。
それで、本を読んだり、最近ちょっと太ってきたので運動をしたり、しなかったりで一日が終わります。……どっちかっていうとやらない日が多いかな。
たまには街に行ったりもします。最近の服はオシャレですね。お姉さんはついていけません。
暑い日には近くに川が流れているので、そこで水浴びしたりします。
この森は人が来ないので、全裸で浴びます。スッポンポンです。その方が開放感があって私は好きです。
森にはお友達もいます。妖精さんに、世界樹さんです。皆いい人たちなので、大好きです。
前に妖精さんに全裸で水浴びするのはやめろと本気で怒られました。
まあ、こんな生活がずっと続いてます。
飽きました。
なので、次の住処を求めて旅に出たいと思います。レッツゴーニューワールド。まだ見ぬ新しい出会いへ。
何も言わずに出ていくのもアレなので、最後に挨拶していきます。
まずはこの森のまとめ役、世界樹さんから。
世界樹さんはその名前の通り、この世界を根本から支えてくれてる大きい木です。
私がこの森で勝手に家を立てても、初対面でいきなり葉っぱもぎっても怒らなかった、器が大きい木です。
「という訳で、旅に出ることにしました。世界樹さん、今までお世話になりました」
「いや、いきなり過ぎない?」
「これ選別です。受け取ってください」
私は前から用意しておいた金銀リンゴジャムを手渡す。
「おお、ジャムじゃんありがと。これ美味いんだよね、俺好きなんだよ」
喜んでくれて良かったです。
「私もこれ好きです。パンと相性良いんですよね」
「あ、そうだ。昨日妖精クッキー貰ったのよ。食べる?」
「え! いいんですか!? 食べます食べます!」
妖精クッキーは妖精さん達だけが作り方を知っているクッキーで、私の大好物。前に一日中レシピを教えてってせがんだけど、結局教えてくれませんでした。あと本気で怒られました。
「マリーちゃんこれ好きだね。ちょい待って、紅茶も用意するから」
「あ、私前に街に行った時に、ちょっといいヤツ買ったんですよ。一緒にどうですか?」
「お、良いねぇ! おじさんそういうの好きよぉ!」
「また前みたいにいきなり踊ったりしないでくださいよ? 世界樹さん大きいんですから」
結局その日は世界樹さんとお茶会して、帰って寝ました。
妖精クッキー、美味しかったです。