23.フィナーレ
気まずそうに話し掛ける父。
ばつの悪そうに気を遣う母。
人見知りして近寄らない弟。
遠巻きに避ける騎士団の団員。
面倒臭そうな顔の魔法学の講師。
相手から滲みでる感情を、ウィリアムは正確に読みとっていた。
そのたびに生き残ったことは間違いで、だから自分が謝らないといけない気がしてつらかった。
けれど、落ち込むたびに小さな女の子の笑顔がチラつくのだ。
真っ赤な髪の可愛い女の子が、満面の笑みで自分に言うのだ。
――私が私の魔力で殿下を救ったことを、間違ってるなんて言わないでください
途端に体から力が抜ける。息を吐き出して魔法の暗唱を止めた。
目の前の赤色がロゼッタのドレスと髪の毛の色だと気付く。抱きしめられた胸の中でドクドクと心臓の音が聞こえてくる。縋るように背中に手を回して抱きしめた。
(うん、間違ってるなんて言わない。絶対に、言わない)
ウィリアムは頬に手を添えられて顔をあげた。目の前のロゼッタがおでこをくっつけて安心させてくれる。それは子供のころに熱のないこと確認するために、よくしてくれた仕草だった。
「もう、大丈夫ですよ」
「うん、いつもありがとう。ロージィ」
罪人を取り押さえるために呼ばれた警備兵の足音や、気がついた者たちの喧騒が遠くに聞こえた。
****
騒動から一ヶ月がたち、学園は日常を取り戻しつつあった。そして三年目のこの時期はすでに授業はなく自由登校となっている。
「部室の荷物も片付けましたし、寮も引き払いました。あとは来週の卒業式を待つだけですね」
「そうだね。いろいろあったけど、あっという間の三年間だったね」
ウィリアムとロゼッタはふたりで並びながらカフェテリアへと向かっていた。オスカーとクリスティアンと待ち合わせて、この後はささやかな打ち上げパーティーをするのだ。
「でも、クリスティアンが宮廷魔法師に就職が決まったから、来年も四人で顔を合わせると思うとなんだか卒業しても変わり映えしないね」
クラブ活動の功績と成績上位を維持したお陰でクリスティアンは見事に宮廷魔法師の採用枠を勝ち取った。そしてオスカーは引き続きウィリアムの従者を務め、ロゼッタは城へと戻るのだ。なんだか来年も賑やかな一年になりそうである。
「私は城でも魔法研究をしたいので、まずは立ち位置確保の計画をします。ウィルも協力してくださいね」
意欲的なロゼッタの発言に驚いて、思わず彼女の顔をみる。
「ロージィはどうしてそんなに凄いの? 元々の魔力の保有量もそうだけど、ちょっとなんでもできすぎじゃない?」
ウィリアムは不満だった。いつだって自分はロゼッタに守られて助けられてばかりだ。このままだと一生掛かっても貰ったものを返せない。いや、すでに間に合わない気さえしていた。
ウィリアムの言葉にロゼッタは少し悩んでいたが、なにかを思い出したように呟く。
「……チート」
「?」
「いえ。きっと、ウィルを助けるために神様が授けてくれたギフトです」
その言葉は妙にしっくりときた。
きっと死にかけの自分を可哀想に思った神様が天使を寄越してくれたのだ。そして全快してからも彼女は自分の元に留まりつづけて困り事は全て蹴散らしてくれた。
そう思えば今の自分は生きてることが正しいように思えた。
「そっか。でもロージィがいくら強くても女性なんだから、ちゃんと僕に守らせてね」
「はい。私、王子様に大切にされるの憧れでしたから」
「なら姫君、お手をどうぞ」
腕をだすと、苦笑したロゼッタがその手を取ってくれる。
「もぅ、学園内で腕を組むなんて。でもたまにはいいですよね!」
笑いながら腕を組んで歩きだす。このままふたりで手を取り合って人生を歩んでいくのだ。
いつまでも、ずっと。
~END~
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