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【電子書籍化】転生!乙女ゲームの悪役魔女は冤罪処刑を回避したい(改題)  作者: 咲倉 未来
本編(Web版)

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17.クラブ活動

 ウィリアムは、ロゼッタの魔法研究意欲を管理下に置くためにクラブ活動を行うことにした。


「これでロージィと放課後に学園生活を楽しむことができるしね」


「これで私は魔法の研究ができますね」

 ウィリアムの学生生活を謳歌(おうか)したい希望と、ロゼッタの魔法研究欲は見事に満たされた。


 新たに発足する同好会はウィリアムが部長、ロゼッタが副部長となり部室を確保し畑を確保し備品を揃えて、()()()()で毎日放課後はクラブ活動に勤しむ予定だった。


 しかし、である。主にランチタイムに同好会の設立計画を立てていたため、同席していたほかふたりから待ったがかかったのだ。


 それはロゼッタが取り組み内容の希望をだした日のことだった。


「殿下、聖域の森でしか育たない薬草を育てる実験をしてみたいので畑が欲しいです」


「え!せせせ聖域の森に行ったことがあるんですか?」

 ロゼッタが活動内容に薬草栽培を追加したところ、クリスティアンが食いついたのだ。


「ボクもアンデルセンさんと一緒に薬草を育ててみたいです。入部させてください!」


「ぜひ、一緒に育てましょう!」

 こうしてクリスティアンは同好会に入部した。


 また別の日、ウィリアムが申請書を作成して取り組み内容の見栄えを気にしたときのことだった。


「ロージィ、クラブ名にちなんだもので見栄えのする取り組み内容が欲しいな」

「うーん。なら魔剣を作って複数の属性魔法を仕込むのはどうでしょうか?適当に二、三本作りますよ」


「えっ、魔剣を作るんですか!」

 ロゼッタが魔剣を作ると言い出したところ、オスカーが食いついたのだ。


「わ、私の分も作ってください」


「嫌です。欲しいなら自分で作ってください」


「な、なら教えてください!欲しい魔剣があるんです」

 こうしてオスカーは同好会に入部した。


 かくして、四名の部員を確保し活動開始となったのだ。


 ****


 学園内にある手つかずの空き地を畑にすべく、ロゼッタは土と水を混ぜて簡易版のゴーレムを用意した。


「ロージィ、ゴーレムのコントロールは僕がやるよ。クリスティアンと一緒に座っていて」

「はーい」

 ロゼッタがクリスティアンの待つ少し離れたところに座ったのを見届けてから、目の前の空き地に向き直る。


 目の前で四体のゴーレムに手をかざし操作魔法を暗唱する。二体はその形を四本足の(けもの)に変え唐鋤(からすき)を装着させる。うしろから残り二体がつき従い空き地の土を耕しながらゆっくりと動きだす。安定して仕事をしはじめたのを見届けてウィリアムはロゼッタとクリスティアンの所へ戻っていった。


 一連の所作をみていたクリスティアンが、凄い、凄いと感嘆(かんたん)()らし、ロゼッタは薬草の種を仕分けしていた。


「うわぁ、なんですかこれ」

 ボロボロの使い古した剣を数本持ったオスカーが、目の前の光景に気をとられながら近づいてきた。


「ゴーレムに畑を耕して貰ってるんだ」


「殿下、いつの間にこんなことができるようになったんですか。講義でも習っていないですよね?」


「ロージィが昔僕の剣術稽古のために用意してくれて、ついでに教わったんだよ」


「剣術……。ああ! だから急に強くなったんですか! ズルイ! 卑怯だ!」


「はぁ?」


 急に怒りだしたオスカーから逃げるように走り出す。待ってくださいと叫びながら追いかけてくるオスカーをかわしながら、少しだけ昔を思い出した。


 ****


 ウィリアムは全快してから毎日稽古場に行って稽古をつけて貰っていた。はじめは素振りと体力作りの運動のみを指示されて従った。そのまま三ヶ月経っても四ヶ月経っても指示は変わらず実技は教えては貰えなかった。流石におかしいと思ったウィリアムは実技を教えて貰えるようにお願いしたが、なにかしら理由をつけられ断られてしまう。


 一度倒れたことのあるウィリアムに、実技を教えるのを誰もが嫌がったのだ。


 どうにかお願いしてオスカーに打ち合いの相手をしてもらっても、簡単に負かされて直ぐに終わりを告げられた。


(これじゃあ練習にならない……)

 頑張る気持ちだけでは、どうにもならなくて悔しかった。そして相談する相手のいないウィリアムは、ついロゼッタに不満を(こぼ)したのだ。


「なら、私のゴーレムをお貸ししましょうか?」

 ロゼッタはのっぺりとした顔の人型の土人形を連れてきた。


「剣を持たせるのははじめてですが、ある程度繊細に動くように細工をしてあります。誰かの剣術をコピーして憶えさせましょう。誰か先生を教えてください」


「ロージィは、こんなものなにに使ってるの?」


「私の魔法の実験相手をしてもらってます。みんな忙しいので手を煩わせられませんし、私の相手は嫌がる人も多いんです」


 稀代の大魔法師の相手など恐れ多くて誰もやりたがらないのだ。


 ロゼッタはウィリアムの希望で騎士団で随一の剣術と謳われる騎士団長の技術を複写しゴーレムに憶えさせた。そしてウィリアムの技量に合わせて自動調整する練習相手に仕立て上げてくれた。


 その日からウィリアムは稽古場でウォーミングアップをしたあと、魔法研究所の空き地に移動してゴーレムと実践をする日々を送って鍛錬を積んでいく。


(ロージィは凄いな。僕も誰かに相手にされないくらいで止まってないで、どんどん進んでいけるようにならなきゃ!)


 そしてウィリアムは魔法学で覚えた回復魔法を使うことを思いついた。疲れたら回復し練習時間をどんどん引き延ばしていったのだった。


 ****


(――で、三年くらい経って久々にオスカーと打ち合いしたら、あっさり勝てたんだよね)


 余裕な笑みを浮かべて挑んだオスカーは、秒で吹き飛ばされてショックでその場から動けなくなっていた。なにかの間違いだとほかの者も挑んできたが、あっさり吹き飛んでいったのにはウィリアム自身も驚いた。


 うしろから、狡い、狡いと恨み言を呟いてついてくる自分の従者に辟易(へきえき)しながら振り返る。


「じゃあ剣術練習用のゴーレムを作ってあげるよ。ここの空き地で練習するといい」


「やった! 殿下が使っていたものと同じものを用意してくださいよ。弱くしないでくださいね」


 その言葉に従ってウィリアムは手が四本生えたゴーレムをオスカーに差し向けた。勿論全ての手に剣を握らせて。


「え、ええ?! なんですかこれっ」


「どんどん強化していって、最後はコレと戦ってたんだ。かなり強いから気を付けてねー」


 遠くで手を振りながら激励(げきれい)し部室へと戻っていく。うしろから悲鳴が聞こえたが、殺傷防止機能(セーフティガード)は掛けてあるので心配はいらない。きっと。

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