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実践での性能確認は大事

 というわけで、やって来ましたランク4ダンジョン!

 迷宮都市の中にあるいくつかのランク4ダンジョンの一つ。渓流のような景色の広がるダンジョンである。

 背の高い木々の間を清らかな小川が流れている。


「良い景色ですわねー」

「これまでとかなり違いますね」

「ランク4からは環境型ダンジョンっていって、自然が多いダンジョンになってくるんだ。決まった道自体もあんまりない、少し狭い箱庭だな」


 と、言いつつも歩いているのは舗装された道である。やはり保護迷宮ともなると、何人もの先輩たちが歩んできたのもあって、進みやすくなっているようだ。

 さて、今回の目的の一つとして新しく召喚できたリサと装備の性能確認がある。浅い層はかなり人が多いこともあって、人目を避けて俺たちはもう20層まで降りてきていた。


「もうこれで最終階層かな」

「あれ、まだ20層ですよね? ランク4なら40層くらいじゃないんですか?」

「それは上限だな。別に減ったりもするらしい」


 適当な話をしながら川に沿って歩いていく。

 アリアの探査魔法に敵が引っかかるまではのんびりしていられるから、かなり心に余裕があるな。前のパーティでは終始警戒しっぱなしだったから、ダンジョンから出たあとは一日中寝る、なんてのもざらだった。


「あっ、見てくださいまし! お魚がいますわ!」

「川の中にも魔物がいるかもしれないですから、気をつけてくださいね」

「大丈夫ですわー!」


 スカートの裾を持ち上げて川の中にちゃぷちゃぷと入っていくリサ。大きな尻尾をぶんぶん振って、とても楽しそうである。

 さて、お気づきの方もいるかもしれないが、リサは昨日買ったワンピースを着ている。防具の類は一切身につけていない。一見すればダンジョンを舐めているのではないか、という愚行である。


「ひんやりして気持ちいいですの……」

「あっ、リサさん上流から魔物が来ますよ」

「ふぇっ!?……あっ、きゃん!」


 アリアからの注意の声に驚いて、川の流れに足を取られた結果、尻餅をついてしまうリサ。


「まずっ……」

「リサさん!」


 そこに魚の魔物が大口を開けて襲いかかる。

 鰐鮭。ワニのように牙がびっしり生えそろった口は、手足を簡単に持っていけるほどに大きい。


「あぁ……びしょびしょですの……」


 だが魔物の牙がリサに届くことはなかった。彼女の2m前の空中で、鰐鮭の体が壁にぶつかったように止まる。

 目をこらして見るとリサの体の周りを囲うように、透明な球体が存在していた。

 なんだあれ、バリアか!? かっけぇ!!


「大丈夫か、リサ!」

「問題ありませんわ! あれが魔物ですのね!」


 リサに襲いかかってきた鰐鮭はバリアで吹っ飛ばされて地面でビチビチ跳ねている。パッと見では子供でも勝てそうな状態だが、油断してはいけない。隙を見せたら口から水弾を放ってくるに違いない。


「お二人とも、ここはわたくしに任せてくださいまし!」


 剣を抜こうとするアリアとマニピュレート・モンスに手を添わせた俺に、リサが叫ぶ。……じゃあお手並み拝見といくか。

 彼女はSSRの籠手、フレズヴェルグ・アームの右手を鰐鮭に向けた。


「お魅せしますわ! わたくしの煌めきを!」


 その声を合図に手の甲に付けられたエメラルドが大きく輝いた。それと同時に風が吹き荒れ、リサの背後に集まっていく。

 人を余裕で一呑みにしてしまいそうな顎、一度羽ばたくだけで森をも平地に変えてしまいそうな翼。それは巨大な龍の幻影だった。


「食らいなさい! 【炎王龍の(フレズヴェルグ・)翠嵐(ブラスター)】!」


 龍が吠える、翼がはためく。それだけで第五階層に強風が吹き荒れた。そして気温が急激に上がる。


「やばっ、飛ぶ……」


 人間でさえ立っているのもやっとな環境。川の水さえも吹き飛ばされ、熱によって蒸気と化していく。

 サウナに入っているかのような環境が一帯に広がる。


「発射ぁ!!」


 龍の顎から巨大な、車すらも飲み込んでしまうほどの風弾が撃ち出された。……標的も決めずに。


「リサァ!?」


 すでに鰐鮭は先の熱風でどこかへと吹き飛んでしまっていた。目の前には、ただ森林が広がっているだけ。

 マズイぞ。射程がどれくらいかわからないし、下手すれば人がいるかもしれん!

 俺は翡翠の腕輪を着けた左手を振った。腕輪が輝く。すると虚空から巨大な腕が出現する。


「うぉぉぉおおおおおお!!」


 俺の動きに合わせて巨大な拳が風弾を打ち上げた。風弾が森の木々をかすめ、ダンジョンの空へと消える。

 はえー、あの空って天井に色付いてるんじゃなくて本当に空なんすね。異空間説ってあながちありえるかも。


「じゃねぇよ! なにやってんだリサァ!!」

「どうですの! わたくしの宝石魔法も中々のものでしたでしょう?」

「それは凄かったけど、そこじゃねぇんだよ! 人が近くにいたら死んでたぞ!?」

「途中で止めてたら暴発してましたの! わたくしでもあんなに大きくなるとは思いませんでしたわ!」

「じゃあ胸を張って言わないでくれますかね!?」


 なんでそんなに自信満々なんだよ。威力の予想が出来なかったことを恥じれよ。


「あんな風に龍が出てくるなんて、前の持ち主の影響が強く出てますのね。残滓だけでこの威力なんて、実際にはどれほどの強さだったのでしょう……」

「なんでもいいけど、もうそれ撃つのやめろよ。大惨事になるから」

「すいません、もうなってますよ」

「「えっ?」」


 アリアの声にリサと二人で振り返る。

 見ると、先ほど風弾が掠めた地点から炎が出て、少しずつ他の木へと燃え広がっていた。


「やばっ、山火事だ!」

「どうしたらいいんですの!?」

「リサさん、今こそ籠手の力を確かめるときですよ!」


 パニックになった俺たちに、アリアが解決法を授けてくれた。

 リサが着けているSSRの籠手は、上の階層で試したが炎を放つことができなかった。その後にアリアの火魔法を用いてわかっただが、この籠手はすでに発生した炎を操ることができるのである。


「わかりましたわ! えぇーい!」


 リサが腕を振るうと、遠くにある炎が俺たちの元に集まってくる。どういう原理なんだろう。

 かなりの範囲に広がっていたはずの炎がまとまり、小型の太陽のような球体と化し、彼女の手に入ってしまうほどに圧縮された。

 握りしめられたリサの手が解かれると、そこには煌々と輝く赤い結晶が。


「やっぱり綺麗だよな、それ」

「炎結晶とでも言えばいいんですかね? なんで石になってるんでしょう?」

「ですが宝石じゃないんですのよねー。装飾としては使えそうなので持って帰りますが」


 そう言ってリサはポケットに無造作に炎結晶を放り込んだ。

 ……しかしやばいよな、これ。俺は渓流だったものを見やる。そう、だったものだ。川は干上がり、石が散らばり、木々がいくつも倒れ伏している。


「誰もいないうちに逃げようか……」

「……そうですね。流石にこれはバレたら問題になる」

「では急いで退散ですの!」


 ここまでダンジョンの環境をめちゃくちゃにしたら絶対問題になるぞ。見つからない内に退却だ。

 3人でその場を急いで離れる。道中、落ちていた魔石やドロップアイテムを拾っていく。どんだけ広範囲に攻撃がいったんだろうな……。




 そんなこんなで誰かに会うことなくボス部屋にやってくることができた。

 こうして自然の中に巨大な扉があるのは違和感があるが、気にしないでいこう。


 扉の中に広がる小池。そして、その中にいくつもの人影が浮かんでいる。

 一見すれば人間のようだが、その手足には水かきがあり、背中には甲羅が、頭には白いお皿が乗っかっている。つまり河童と呼ばれる魔物だ。その大群がそこにいた。


「俺がやってみてもいいかな?」

「ええ、任せます」

「頑張ってくださいまし!」


 2人の声援を受けて前に出る。

 そしてマニピュレート・モンスを意識しつつ、足を振り下ろした。

 それに合わせて虚空から巨大な土で作られた足が現れる。ビルもかくやというほどの太さと長さ。その質量が勢いよく地面に叩き落とされる。


 ドォーンッッッ!! という轟音が響いた。まるで隕石が落ちたかのような土煙が巻き起こる。

 もはや水が衝撃で蒸気と化してしまうほどの破壊力。下にいた河童はもちろん絶命した。


「しかし大きすぎるよな……」


 巨人の足は、振り下ろしてなお、ふくらはぎの途中までしか見えない。それでも一番上が50m近くあるといえば、わかるだろうか?


「お疲れ様でした、やはり強力ですね」

「本当にな……なんか俺が強くなったって過信しちゃいそう」


 強いのはアイテムであって、俺じゃないのにな。


「いいと思いますわ。道具を手に入れるのも本人の力ですもの」

「もしも強くなりたいなら私が修行に付き合いますから、遠慮なく言ってくださいね!」


 どうしようかな。いつかはやらないといけないよな……。

 まあ、考えるのはあとにして、巨人の足を消してアイテムを回収する。甲羅と魔石が結構あるな、悪くないかな。


「それじゃあアリア、回収してくれ」

「了解しました。……でも、いいんですか?」


 アリアが聞いてくるのは、魔石を預けていることだろう。すでに30連分は回収しているが、まだガチャを引いていない。

 というのも、理由がある。


「富嶽さんはガチャを引くのが目的っていってましたよね。でも魔石を3人で分配するなんて……」

「いいんだよ。お金を稼ぐ必要があるし、あんまり魔石を納品しないのも怒られるからな」


 そう、俺たちは魔石を分かることにしたのだ。ここから10連分の魔石が俺の取り分になる。

 理由としては言った通りだ。あまり魔石をギルドに渡さないと文句を言われることがあるのだ。


 最後のボス部屋の出口に入ると、そこには宙に浮いた正八面体の結晶と石碑、そして券売機のような機械が置いてある。

 俺は機械に会員証を挿入する。すると、画面にデータが現れ、ランク4ダンジョンの攻略の項目に1の数字が追加される。これで攻略完了っと!

 俺がそんなことをしている間、アリアとリサは正八面体を眺めていた。


「これがダンジョンコアですか」

「不思議ですわね、水晶でもないですし、宝石でもない……」

「魔力を感じますね。リサさんのあの防御魔法に似てませんか?」

「うーん、あれは水晶を核にした宝石魔法ですが、こっちからは宝石の気配は感じませんの」


 うーん、と2人揃って首を傾げているな。ちなみにダンジョンコアについては俺もよくわかっていない。というか、世界中でわかっている人の方が少ないだろう。


「あんまり近くに寄り過ぎるなよ、そこの警備ゴーレムが襲いかかってくるから」


 まあ、2人なら問題ないだろうけどな。

 それにしても2回目のランク4ダンジョンだったが、前回より圧倒的に早かったな。具体的に言うと今回が8時間ほどだったのに対して前回は4日。やっぱりアリアとリサ、それにSSR武器が強いからだろうな。


 機械から会員証を回収する。それから2人に声を掛けて石碑に手を置き、俺たちはダンジョンを後にした。




 夕食を済ませて俺たちはホテルの部屋に戻ってきた。


「やって来ました、本日のガチャターイム!!」

「イェーイ! ですわ!」

「よっ、待ってました!」

「じゃあ行くぞ! 我が手には贄、我が剣は知恵。魔光の灯火よ、異界の御霊を導きたまえ!」


 魔法陣の色はーーー金! SSRだ!


 ーーーーー

 43 R.扇子


 46 R.ゲームソフト「ぼくと先生のラブラブ地獄巡り」


 SR.失せ物探しの玉

 失くした物の所在を探すことができる。


 R.脚甲


 N.パン止めるアレ


 SR.魔法の鍋

 一瞬で煮込みが完了する。


 N.エアコンの説明書(セルビア語)


 N.山田さんの通信簿


 SSR.空飛ぶベッド

 伝説の神鳥の抜け毛を集めて作ったベッド一式。持ち主の意思に従い、高速で空を舞う。

 夏は涼しく、冬は暖かい。快眠を約束してくれる忙しい人のお供。


 SR.猫の長靴

 猫に履かせると喋るようになる。

 ーーーーー


「SSR出た!」

「それ以外にもSRがいくつか出てますが……武器はないですか」

「宝石がありませんの……」


 その夜はSSRのベッドで寝ることにした。3人とも寝たいと言い出したのでじゃんけんで決めることになり、俺が勝った。

 ベッドに入ったらすぐ、眠気が体に襲いかかり心地よい眠りに誘われる。朝はスッキリ目が覚めた。さすがSSRのベッドだな。

 ただ勝手に宙に浮いてるのは勘弁してほしいな。

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